長年販売営業で扱ってきた空調機器で
「社会をどう変えられる?」という発想に

松本賢治さん(ダイキンHVACソリューション東京 販売推進部長)
松澤理紗子さん(ダイキンHVACソリューション東京)

渋谷未来デザインのイベントなどでいつも見かける、あのアロハシャツの人。といって「ダイキンの松本さんね」とわかる人も多いはず。ユーモアに溢れるキャラクターで親しまれるダイキンHVACソリューション東京株式会社の松本賢治さん。
長年に渡り営業職でキャリアを重ねてきた松本さんは、近年の渋谷未来デザインとの取り組みのなかで新しい価値観を得ることができたといいます。松本さん直属の部下でもある同社の松澤さんにも同席いただき、お話をうかがいました——

 

渋谷で受けた刺激、営業業務にも表れた変化

 

——まずは松本さんのこれまでの経歴を簡単に振り返ると…?

松本:入社して三十数年、ダイキン一筋でやってきました。基本的には空調機の販売の前線部隊で営業をさせてもらっています。渋谷未来デザイン(FDS)に集まってくる企業の方たちのなかには、前線の営業マンの方ってなかなかいらっしゃらなくて、僕はちょっと異質な存在だと思ってます。

——今日もバッチリ着てらっしゃる素敵なアロハシャツは、FDSのイベントなどでもおなじみで、異質というよりは“名物キャラ”という印象を受けていますが(笑)、部下の松澤さんから見ると松本さんはどんな存在ですか。

松澤:こういうキャラなので、上司としてはすごくフレンドリーでやりやすいですね。部長らしくないというか。いい意味で。

——いい意味で

松澤:会社から決められたことを淡々とやるのを良しとしないというか、もっと楽しいことしようよっていうスタンスを感じています。

——松本さんがFDSと関わってくださるようになったのはどういう経緯だったんですか?

松本:アーバンスポーツの国際大会「FISE」で長田さん(FDS理事・事務局長)とお会いして。折しもオリンピックを控えた2019年で、会場には錚々たる関係者の方たちがいらっしゃったんですけど、長田さんの振る舞いや他の方との関係性が特徴的に見えたので、営業魂で“突撃”してみたという感じで(笑)。
インバウンドも視野に入れながらオリンピックを機にブランド価値を上げていくというミッションが当時我々にはあって、長田さんにいろいろと相談をさせていただいたんです。

FDSもSOCIAL INNOVATION WEEK(SIW)も、社会課題解決のような側面が強くてあまり我々には関係ないかな、とも思っていたんです。SIWの会場などで広告のような展開ができればいいかな、というくらいに思っていたんですが、FDSやSIWでの取り組みは、普段の営業をやっているだけでは経験できないようなことばかりで、自分自身もとても勉強になりますし、逆に社内に帰ると現場ではそういった社会課題に関する会話がほとんどないな、ということに気付いていくんですね。
それで私や松澤だけじゃなくて社内の人、特に若手のみんなにもそうしたことに触れてもらって、より良い方向へ成長してもらえたらいいなとすごく思ってるんですよね。

——松本さんご自身の変化というと、どんなところがありますか?

松本:FDSやSIWで出会うような方々とは、「自分が何をしたいのか」ということをしっかり持っておかないと渡り合えないなということを痛感しました。それで自分も少しずつ勉強して、いろんな方々とできるだけお話をしてみて、それをまた自分のなかで消化していく…というようなところは、自分でも変わったと思います。普段の営業の仕事では経験できない、“人生道場”みたいな場所ですよ(笑)。

松本:たとえば、私がプレゼンで使うパワポの資料をみても、3年前のものと今のものでは全く違うんですよね。昔は、自分たちが扱っている商品の説明しかしてないんです。「こんなに効率的なクーラーなので、買ってください」みたいな。でも今はそうじゃなくて、「それを使って社会をどうしたいのか」「それによってみんなはどう幸せになるのか」みたいなことを踏まえて話すようになったのは、成長と言えば成長なんでしょうし、やっぱりその方が皆さんに興味を持ってもらえますね。

——素晴らしいことだと思います。

松本:今までもSIWは観覧、拝聴していて、長田さんに「どうだった?」と聞かれて「刺激を受けました」と毎年言っていて、一昨年に感想を聞かれたときも「刺激を受けましたね」って答えたんですよ。そしたら長田さんに「またぁ?」って言われたのをよく覚えてます(笑)。たぶん行間にあるのは「いつまでおっさん刺激だけ受けとんねん」っていう(笑)。

——たぶん喜んでいるんだと思いますよ?(笑)

松本:刺激だけ受けて定年迎えるみたいな(笑)。

松澤:何も生み出さずに(笑)。

——でも、それが2年前のことですよね?

松本:それまではSIWを聞いてるだけの傍観者で、ただ商品をPRしたい「ダメ賢治」でした。
でも去年のSIWでの登壇でZ世代の方々と話す機会を貰い、「ダメ賢治」は頑張って一生懸命考えて、環境について行政への提言のようなことを、ちょっと偉い人ぶって話してみました。そうしたらZ世代の方々は直球で「心の底から世の中を良くしたい」ってぶつけてきます。「こんな人たちがホンマにいるんだ!」って思いながら、賢治君も知りえる事を伝え、やれることやろうと走りまわっていたら、やがて渋谷区さんがその提言を受け入れてくれたんですね。「自分も『社会課題解決』とか『行動変容を起こす』ということがちょっとできてるんちゃうん!」と思って喜んでしまいました。

賢治君は、「人は、“必死のパッチ(※)”になってる人を見ると応援したくなる」をモットーに、自分も“必死のパッチ”に行動する「アロハ賢治!」に変わったのです!

※松本註:“必死のパッチ”とは関西弁で、なりふり構わず一生懸命な姿を指します

——アロハシャツは変化のあかしだったんですね!

松本:でも、こういう経験を積ませていただいているのはとてもありがたいですし、そのなかでさまざまなマッチングといいますか、多様な方々と出会わせていただけることはとても嬉しく思っています。

 

 

SIWを起点に広がる新しい価値観と共創の輪

 

——今年のSIWでは、御社としてどんなことを予定していますか?

松本:今、このダイキンという会社もいろんな環境問題に関する取り組みをしていて、その紹介といいますか、それを渋谷にぶつけてみたいという気持ちがすごくあって。

ダイキンの産学連携の取り組みで大阪大学さんとの連携協定があるなかで、彼らにプレゼンをさせていただいたんです。FDSとの取り組みや、そのなかでも渋谷区のスマートシティ推進機構の話などをして、「一緒に空調企業としてのまちづくりに参画しませんか」という提案をしたら、なんと大阪大学の教授の方たちから拍手までいただいて!

松澤:人生のピーク、って言ってましたね。

松本:もう55歳にもなって。そこから、教授の皆さんに渋谷にも来てもらって、今の課題感だったり、ダイキンがやりたいこと、それに対して実際なにができるのか、という話を詰めていって。一生懸命準備しています。

——今回は、大阪大学の栄藤稔教授、サステナブルな社会構築に取り組む団体・SWiTCHの佐座マナさんを迎えて、ダイキンさんからは空調営業本部 松田副本部長が登壇されるトークセッションを実施するんですよね

SIW2023|11月9日(木)13:00 – 13:40
Conference『2050年シブヤの空気をどう冷やす?シブヤの夏をどう暮らす?』
https://social-innovation-week-shibuya.jp/timetable/event/cf30/

 

松本:いろんな取り組みをしているなかでも、今年は、”空気を見える化”することでさまざまなソリューションを生み出していくプロジェクトを取り上げてみたいと思っています。大阪大学の皆さんと連携して、AI技術などの最新テクノロジーを通して「空気」を見てもらおう、という面白い取り組みになってきています。

また、環境問題についてダイキンは、世界規模で問題を捉え取り組みを進めています。今回のSIWを起点にして、同じくグローバル視点で環境に関する取り組みをされているSWiTCHの佐座さんと、我々の環境ソリューションを、それこそ“マッチング”させていく役割を、今度は私自身が担っていけたらと考えています。

——空調関連機器の販売だけでなく、本当にいろんな事業に取り組まれているダイキンさんですが、なにかひとつ、こんなこともやってますよ? というのを紹介していただけますか。

松本:そうですね。たとえば先ほどお話ししたオリンピックやスポーツの文脈でいうと、家や小規模オフィスなど閉ざされた空間の空気を扱うだけでなく、スポーツの大会会場のような大きな空間の空気にソリューションを起こそうという視点があります。
また、医療機器の分野で濃縮酸素機器というのを扱っている部署があるんですが、酸素を濃縮する技術を逆サイクルにすると、低酸素の空間をつくることができるんですね。そうすると今度はスポーツやトレーニングの分野で、低酸素フィットネスに活用できたり。

空気はどんな場所にもあるものなので、街というレベルでみてもほんとうにいろんな面で関わっていくことができるのが面白みだと思っています。

——そういった多面性や、面の広さみたいなところを、FDSやSIWの場でぜひアピールいただいて、いろんな企業や団体さんとの共創がより多く生まれていくといいですよね。

松本:そうなんですよ。

松澤:いろんなマッチングによって、さまざまな企業さんと一緒に、皆さんを「ハッピーにしたいんだ」といつも言ってますよね。

松本:共創によってハッピーに、というのはひとつのキーワードですね。
この数年で弊社も、カーボンニュートラルに取り組んでいくのが重要な社内施策になってきましたし、そういったソリューションを企業や学校、団体などとの共創のかたちで起こしていこうという機運は社内でもとても高まっています。
最近オフィスが八重洲に移ったタイミングで、先進的な企業やスタートアップとの共創を生み出すコミュニケーションスペースが設けられていたりと、会社を挙げて取り組んでいるところですので、これからスピード感を持ってそういった価値観が社内でも広がっていくでしょうし、それを渋谷の力をうまく活用して後押ししていきたいという気持ちがすごくあるんですよ。

だからSIWのことも、社内でいろんな人に声掛けてるんですよ。例えばサービス部門(空調機の修理、データー収集、分析をする部門 ※)だったり、いろんな部署から面白がって集まってきてくれるんですよね。今度「COP28」にダイキンも出展予定ですけど、その担当の人もアドバイスをくれたり。そうやっていろんな人が興味を持って寄ってきてくれる感じが、いますごく面白いんですよね。

——松本さん、エアコン売ってる場合じゃないですね(笑)。

松本:この前、東急不動産の小澤部長にも言われました。「松本さん、そんなことばっかりして空調機売ってないんじゃないですか」って(笑)。

——わかる気がします。

松本:でも面白くてしかたないですけどね。あっ新しいアロハ作らないと…。

 

■ INFO ■
SIWでは松澤さんの登壇セッションも

SIW2023|11月10日(金)15:20 – 15:40
Idea Session『空気で学びをアップデート!? ダイキンと考える「未来の学校」』
https://social-innovation-week-shibuya.jp/timetable/event/is35/

 

※松本註2:「サービス部門」= ダイキンのサービスシステムAirNETは、今年30周年を迎えるアニバーサリーイヤーです。

 

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