地域住民が主体となり、産官学民連携でより豊かなまちをつくる「ササハタハツまちラボ」

奥野和宏さん(ササハタハツまちラボ 共同代表)
柴田みえ子さん(ササハタハツまちラボ 事務局スタッフ)
手塚颯一朗(渋谷未来デザイン インターン)

渋谷未来デザインにインターンとして参加している学生のみなさんが、興味を持ったプロジェクトに関してインタビュー取材を行なうシリーズ。今回は、笹塚〜幡ヶ谷〜初台エリアを魅力的なまちにしていくために産官学民で連携し活動する「ササハタハツまちラボ」の取り組みについて、共同代表を務める奥野さん(渋谷区まちづくり推進部長)と、事務局スタッフの柴田さん(渋谷区まちづくり推進部まちづくり第一課)にお話をうかがいました—

 

※以降本文の記事制作はインターン学生本人が行ないました

 

手塚 まず、ササハタハツまちラボというのはどういった取り組みなのか、改めて教えていただきたいです。

奥野 ササハタハツまちラボは、産官学民連携でまちづくりを進めていく組織として設立されました。ササハタハツエリアが主に住宅エリアになるので、このまちでの生活の豊かさをつくっていくことを目的としています。

奥野 設立の経緯をお話しすると、ササハタハツのまちづくりそのものは平成29年からで、当時「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション」というものを始めました。平成31年までの企画でしたが、我々が思っていた以上に地域の方たちが参加してくれたことから、その3年間で終わらずにその後も地域の方たちが主体となる活動が継続されるように、市民共創まちづくりのプラットフォームをつくろうということで、まちラボが生まれました。
ササハタハツのまちづくりの特徴はデベロッパーが主体ではなく、地域の方たちが主体となって進めているというところです。

手塚 「ササハタハツまちラボ」のゴールというものはありますか?それともずっと続けていくものなのでしょうか。

奥野 そもそもまちづくりというものは終わりがあるものではないので、ゴールがどこかと明言するのは難しいです。ただ、ササハタハツエリアの理想的な状態として、地域住民の方々が自らやりたいことをまちで実践できて、それがまちにとってもいいことになっていくということです。行政からつくられたものではなく、地域の方たちが自発的に取り組みを行い、それがまちの力になっていくといいなと考えています。

まちづくりは人づくり、とも言われますが、このササハタハツのまちづくりで言うと、今地域が盛り上がってきている中で、我々のほうでゴールを決めるのも違うのかなという気がします。地域の方々の主体的な創発で生まれてきているプロジェクトもたくさんあり、ものによっては場所や仲間が必要な場合も出てきます。そのような要望があれば、そこに我々まちラボが入って場所を提供したりお手伝いをしたりと、サポートを重視していきたいという思いがあります。そこから考えると、このササハタハツのまちづくりが直接まちラボの手を借りなくても進んでいけるような形になれば、それがひとつのゴールだとも言えるのかもしれません。

手塚 参加してくれる住民の方々が高齢化したり、あるいは引っ越してしまったり、子育てで忙しくなったり、いろんな事情もあるかと思います。そうなると、なかなか継続が難しい場合もあるのかなと感じるのですが。

奥野 継続していくには色々な人に関わってもらう必要がありますし、手塚さんがおっしゃったように、まちづくりを続けていけば当然、10年経てば皆10年歳を取るわけです。でもその10年の間に、新しい人が入ってきてくれれば、それはその組織としては活性化している状態と言えると思います。
色々な人に関わってもらうことで組織自体が活性化していき、組織として常に若い人も高齢者も、老若男女がそろっている状態になるのが理想的だと思っています。

手塚 近年は、若い人があまり地域のつながりを持ちたがらない、町内会に参加するのも面倒くさい、という人が全国的に多いイメージがあるのですが、こういった地域の活動に若い人は参加してくれるものなのでしょうか。そこに何か解決策や工夫はありますか?

奥野 現状でいうと、20代の方も参加してくれていますが、30~40代が多いですね。
ササハタハツエリアの地域柄として、住民の方のなかにはお店を自分でやられている方も多いです。人口構成でいうと、渋谷の人口の約4割がこのササハタハツエリアに住んでいます。
そうすると、お店をやっている若い人が場所を持って何かやりたい、という話があったときに、お試しできるような場所を提供できるといいなと思っています。

柴田 まちラボの事業のひとつで、「388 FARM β(ササハタハツファームベータ)」というイベントを年に2回、実証実験として開催しています。玉川上水旧水路緑道が将来的に再整備されるのですが、その再整備コンセプトを体現する実験イベントとして、ファームやマルシェ、ワークショップなどを行なったりしていますが、そこに大学生の方々がお手伝いで来てくださって、地域の方と一緒に活動する機会もあります。

手塚 実際に産官学民を実現できているのですね。色々な世代の方が活動されるとなると、世代間のトラブルもありそうだなと思いますが、そのあたりはいかがですか?

柴田 各プロジェクトはそれぞれの目的を持って構成されていることもあって、トラブルは起きにくいです。色々な年代の方々で構成されていたとしても、それぞれの特性や得意分野があるので、そこを強みにうまく担当を分けて少人数で効率的に活動しています。
またまちラボメンバーとして行政職員もプロジェクトのサポートに入っているので、そのようなトラブル等が起きそうなときには、我々が皆さんの話を聞いたり丁寧に説明をしたりということもしています。

手塚 最後に、今後の展望をお聞かせください。

奥野 ここまで多くの方々が関わってくれているので、さらに参加者を増やしていきたいですし、これをきっかけにまちづくりに興味を持ってもらえると、私たちとしても嬉しいです。いまササハタハツの取り組みはあらゆるところから注目されています。地元の方々がたくさん関わって地元発のプロジェクトが動いて、それが継続できているというところが特に魅力的のようです。そこで、こういったまちづくりのトップランナーとして、ササハタハツの取り組みがほかの自治体にも広がっていくといいなと思っています。

手塚 ありがとうございます。地域の方々が主体のまちづくり、とても勉強になりました。

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