渋谷の課題解決に貢献する“あたらしいおみやげ”を、まちの人たちと共につくり育てる

YOU MAKE SHIBUYA
田頭桃香(FDS/大日本印刷)

渋谷のおみやげ、と聞いて何を思い浮かべますか? そういえば渋谷のおみやげといってもあまりピンとこない、という方もいるかもしれません。
渋谷未来デザイン(以下、FDS)では、渋谷の地域課題の解決にも貢献できる“あたらしいおみやげのかたち”から模索していくプロジェクトを進めています。

「このプロジェクトの目的は大きくふたつ。ひとつは、購入することが地域貢献につながるおみやげをつくり、ソーシャルアクションを気軽に体験してもらうこと。もうひとつは、その収益を渋谷のまちに還元することです」
本事業を共同で立ち上げた大日本印刷からの出向者としてFDSでこの『スーベニア事業』を担当する田頭に、あらためて事業について話を訊いてみます。

 

渋谷のまちに根付かせたい“地域貢献できるおみやげ”

— 渋谷といえばこれ!というようなおみやげが思い当たらない人は、たしかに多いかもしれませんね。

そうですね、もちろん渋谷にはおみやげがいろいろあるんですけど、代表的なおみやげがなかなかないというのがまちの課題と捉えています。

渋谷でくらし・はたらく障がいのある人の描いた文字や数字をフォントとしてデザインした「シブヤフォント」と若手クリエイターとのコラボによるトートバッグ『SHIBUKURO』

 

— そんななかあらたに作り出していっているのは、“地域貢献できるおみやげ”。

この活動に賛同してくださる企業や団体とのコラボレーションというかたちでおみやげをつくり、その売り上げが渋谷のまちの課題解決に役立てられるという仕組みです。
たとえば社会貢献に取り組みたいと考えている企業が、自分たちで1からやらなくても、我々のスーベニア事業の座組みに乗っかっていただいて、簡単に地域貢献ができるようなかたちになっています。
また、まちの人にとっても社会貢献のハードルはまだまだ高いと思いますので、おみやげというものを通じて、まずは地域の課題について知ってもらったり、気軽に手にとっていただいて、簡単にソーシャルアクションの第一歩が踏み出せる状況をつくりたいと思っています。
社会貢献というものとのそんな距離感が、“渋谷らしさ”として伝わったらいいなと思います。

2022年3月の国際女性デー月間にあわせてWomen’s Wellness Action from Shibuya実行委員会とのコラボで制作されたトートバッグ『SHIBUKURO』

 

— 具体的にはどんなかたちで地域への還元が行われていますか?

たとえば渋谷の地域課題のひとつとして落書きの問題があって、「落書き消しイベント」への支援として、プロジェクトの収益から物品を寄付させていただいたりしています。

こうした還元先の選定としては、渋谷区基本構想の7分野(①子育て・教育・生涯学習/②福祉/③健康・スポーツ/④防災・安全・環境・エネルギー/⑤空間とコミュニティのデザイン/⑥文化・エンタテイメント/⑦産業振興)の全てに対して我々の収益を活用していくことを目指しています。

 

地域還元の具体施策を地域のみなさんと共に決めていく

たとえば最近取り組みを始めたプロジェクトでは「文化・エンタテイメント」の分野を対象に支援をする内容なのですが、この分野の選定はまちの皆さんに委ねるという試みを行いました。
2022年11月に開催された『SOCIAL INNOVATION WEEK』の会場に、渋谷区基本構想の分野名が書かれた複数のゴミ箱を設置し、空になったペットボトルを捨てる際、みなさん自身が特に課題意識を感じている分野のゴミ箱に捨ててもらうことで投票になる、という仕組みをつくりました。その結果、今回は「文化・エンターテイメント」の分野の投票数が多かったので、その分野でまずはまちの課題を集め、支援していくことになりました。

ゴミ箱には還元先候補の分野名が書いてあり、ペットボトルを捨てることが投票になっている

そこから「文化・エンターテイメント」の分野に絞って、具体的にまちのみなさんがどんなことに困っているか、どんな支援が必要か、ということを現在、公募のかたちで募っています。


<応募期間>
2022年1月31日(月)〜3月31日(木)
<公募概要>
「文化・エンタテイメント」分野において、渋谷を盛り上げる活動を募集し、審査で採択された取り組みには、1つの活動につき最大20万円相当を支援

<詳細>
渋谷未来デザイン
https://fds.or.jp/pressrelease/347/

— 公募には誰でも応募できるんですね?

はい。企業や団体、あるいは個人の方でも、どなたでもご応募いただけます。

地域貢献できるおみやげが、まちの人たちの共感を得ていくために

— では視点を変えて、実際に消費者向けに販売されているおみやげにはどんなアイテムがありますか?

主なアイテムに『SHIBUKURO』があります。
プロジェクトが始まった当初はちょうどレジ袋有料化という社会の流れもあって、まずはバッグに特化してスタートしました。
協働する企業や団体とともに、様々なクリエーターとコラボしながらバッグをつくっていきますが、バッグのかたちやデザインには特に制約を設けていません。唯一のルールはSHIBUKUROの象徴でもあるカラフルなタグがついていること。このタグがSHIBUKUROの目印であり、地域還元に貢献しているしるしでもあります。

SHIBUKUROについているカラフルなタグが、地域貢献参加のしるし

SHIBUKUROはスタートから丸3年が経って、社会の風潮的にも企業さんの意識が変わってきたことを肌で感じています。始まったころは、協業する企業さんとお話するにも「企業が地域貢献をするメリット」からお話を始める必要があることも多々ありましたが、今は逆に企業さん側から、CSRやSDGsといった文脈で「貢献活動がしたい」というご相談をいただくことが増えました。
こうして企業さん側の姿勢やマインドがかなり変わってきている一方、まちの人にはまだまだ我々の取り組みがじゅうぶんに届けられていないという課題もあります。そのためにも、FDSが企業や団体とまちの人たちをつなぐハブになりながら、これまで以上に多様なコラボレーションを重ねて魅力的な商品をつくってまちの人たちにしっかり届けていきたいです。

同時に、やっぱりみなさんが共感できる取り組みでありたいと思っていて。たとえば公募の話にしても、我々だけで収益の還元先を決めるのではなく地域の方から意見を募集して、みなさんと一緒に還元していくというような姿勢を大事にしていきたいです。

渋谷のまちなかをよく見て歩いていると、SHIBUKUROを持ってくださってる方が時々いるんです。そうやってもっとたくさんの方が、地域貢献参加のしるしでもあるカラフルなタグをひらひらさせて歩いてくれたら嬉しいです。
「あ、あの人も『SHIBUKURO』持ってるんだ」とか、「地域に貢献しているんだ」ということがみんなにわかるように、渋谷の誰もが知っているプロジェクトにできたらいいなと思っています。ちょっと大きい夢ですが。

 

<関連サイト>
SHIBUKURO|https://shibukuro.jp
SHIBUKURO オンラインストア|https://shibukuro.stores.jp/

<INFO>

渋谷未来デザインと渋谷区観光協会で運営する、渋谷のおみやげ紹介サイト「SHIBUYA SOUVENIR」がオープン。
SHIBUYA SOUVENIR|https://shibuya-souvenir.com

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