渋谷未来デザイン、最初の3年に込めた想い

渋谷未来デザイン
長田新子(FDS 理事 兼 事務局次長)
長田新子(FDS 理事 兼 事務局次長)

FDS立ち上げに参加した理由

2018年4月に渋谷未来デザイン(FDS)が設立されて4年目に突入し、現在100社を超えるパートナーがこの組織と共に活動を進めている。

私は2017年に前職を退職すると決めてから、組織の立ち上げをボランティアでお手伝いをする形でスタートし、その後性格的にどっぷり計画策定に入ってしまい、現在のポジションで正式に参加することになった。渋谷区中心で行われていたこの組織に、この新参者の存在はどんな風に映っていたのだろうか。

渋谷区の会社で働き、渋谷区民であったことも組織への参加のきっかけではあるが、それ以上に“街づくり”というものがどういう仕組みで動いていて、何を目指して進んでいくのかということを生で経験してみたいと思ったからかもしれない。行政、一市民、そして企業の視点からも、一体どんな形で連携し新しい価値が生み出せるのか、全く新しい組織だからこそ柔軟に提案できる可能性も魅力的であった。

私は長年外資系企業で働いてきたということで、日本のしきたりなどはあまり経験せずに過ごしてきてしまった。行政が関係している団体で大丈夫なのかという不安があったのは事実だが、周りから見れば「この人何をしていくのだろうか」という疑問だけだったとも思える。

ちなみに行政や自治体と何もやっていなかったわけでなく、前職では各地の自治体と連携して、日本、地域の価値をイベントやコンテンツ、アスリート、アーティストなどを通じて世界中に広める活動をやってきた。そういう点では多少なりとも貢献できる要素はあったからこそ、今なお自分はここにいるわけである。

地道ながらも“熱い想い”を巻き込んできた3年間

2018年にFDSは渋谷区を含めた参画パートナー15社の基金によって設立され、まずは一緒にいくつかのプロジェクトを進めることから始まった。渋谷区がバックアップについているが、組織としてはまさにスタートアップである。当初、5年間の事業計画を作ったが、始まってみると日々迷走があり、この組織が自立自走で進むためにはもっと多くのパートナーを巻き込む必要があると思い始めた。

ダイナミックでクイックな動きとイノベーションを起こすための仲間集めを始めたのは2018年の立ち上がりから少し経ってから。最初はそんな動きはいらないのではといった意見もありながら、まずはトライしてみようということで始め、今となっては多くの意見や仲間を集約できるプラットフォームになっていること自体がこの組織の特徴であると思っている。

それは全て渋谷区という強いアイコニックな存在によるところがあるのは確かだが、同時に巻き込む側と巻き込まれる側の熱い想いやぶつかり合いも一つの大事な要素である。よく「渋谷だからできるんですよね」と言われることも多いが、そんな簡単なことでもない。そして、このような組織は、他の地域でも確固たる想いとリードする人材、そしてやり方を考えたら機能すると感じている。

ちなみにありがたいことに前職関係からの繋がりで入ってきた会社も多く、互いを知っているだけに裏表なくきちんとメリットを享受して進めていくことができている。この3年間でとにかく共に新しいことにチャレンジするという気持ちを持った仲間たちにどれだけ助けられたか計り知れない。だからこそ、本来の役割とは少し異なるマーケティング関係のアドバイスなども個人的にさせて頂いたりして、実際これってすごくお得な連携ではないかと思ったりもしているわけだが(笑)。

 

さて、渋谷区関係者ではなんとなく知られている組織でも、少なくとも当初私の周りでは誰も知らない組織であったFDS。名刺を交換すると、“デザイン会社”だといまだに思われることもあるが、とにかく立ち上がり前に広報計画を作成した本人としてはまず組織を知ってもらうことを自らやっていくことをミッションにしていた。

前職では会社のルールもあり自らがメディアに出ることはしてこなかったが、FDSの存在を伝えるために、積極的に取材、登壇、そしてセミナーへの参加など地道なブランディング活動をしてきたおかげで、最近だと渋谷で何かやるときにはお声がけ頂くことがとても多くなった。「あ、渋谷未来デザイン?」と言ってくださる方も増えた。時間はかかっているが、アクションし続けた効果がじわじわと浸透していってくれることは嬉しい限りである。

能動的に、大胆に。日々進化する組織を目指して

一方で、4年目に突入しこれだけ多くのパートナーが興味を持って参加してくれていることを、きちんと受け止めないといけない。これはFDSに属する全員がそういう気持ちで行動することが大事だと思っており、自分のプロジェクト以外のことももっと興味を持って考え行動すべきである。

渋谷から都市の可能性をデザインするといった大層なテーマを掲げているわけで、組織のメンバーとパートナー両者がさらに能動的に参加できる仕組みをどんどん生み出すことがまさに求められている。もっと街の声を聞き、社会トレンドを把握し、クイックにアクションできる存在が世の中に必要になっているし、このチームこそ日々進化しなくてはならない。

昨年からのコロナ禍で多くのことがフリーズした時に、「何もできない」ではなく「できることは何か」を考え、小・中学生向けのオンラインスタディ 、エンタメ支援のクラウドファンディング、バーチャル渋谷、Social Innovation Week(SIW)、Next Generations Dance@Homeなど、時間と戦いながら攻めることをやめなかったことの大切さと、その時に役割を超えて参加してくれたメンバー達、まさに真のチーム(内部外部問わず)の力を感じた。

 

前職で常にモットーとしていた、“謙虚”ながら“大胆に行動”する、そんな存在を目指して4年目も邁進中である。そしてFDSに参加して頂いているパートナーの皆さんへの感謝を忘れずに、もっと様々な議論を重ねながら、社会にとって意義あるプロジェクトを進めたいと心から思っている。

本稿は初回ということで、自分自身の想いが中心になっているが、次回からはプロジェクトについて具体的に触れていこうと思う。

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