ベイブレードはスポーツに進化。渋谷を拠点に生まれる「新しい楽しみ方」

篠永恭平さん(株式会社タカラトミー)

1999年の誕生から27年目を迎えた現代版ベーゴマ「ベイブレード」。第4世代「BEYBLADE X(ベイブレードエックス)」の立ち上げをけん引する篠永恭平さんは、プロダクトを単なるおもちゃではなく、競技性の高い「GEAR SPORTS(ギアスポーツ)」として社会に定着させる挑戦を続けています。一般社団法人渋谷未来デザインとの共創や代々木公園 BE STAGEでの「BEYBLADE GOOUT PROJECT」を通じて、世代や言語の壁を超えた新たなコミュニケーションの形を模索する篠永さんにお話を伺いました。

BEYBLADE X
https://www.takaratomy.co.jp/products/beyblade/

 

ベイブレードは、おもちゃを超えた「スポーツ」

 

 

──篠永さんは長年、ベイブレードに携わっていますが、現行シリーズの狙いを教えてください。

シリーズ最新作の「BEYBLADE X」は、立ち上げ当初からマーケティング全般を担当しています。ベイブレードは1999年の誕生から数えて4世代目となりますが、BEYBLADE X」ではおもちゃの枠を超えたスポーツとしてリブランディングして展開しています。

ベイブレードはシュートの角度や力、パーツの組み合わせといった技量や体力の要素やシュートの瞬間の心の強さなど、心技体が勝敗を左右します。つまり、本質的にはスポーツと言っても過言ではありません。この魅力を正しく伝えていき、子どもから大人までがカッコイイと思えるスタイリッシュなブランドとしての世界観を構築することが、現在のマーケティングの核となっています。

──そのために、クリエイティブ面でも大きな変更を加えたのでしょうか。

そうなんです。過去に展開していたカラフルなロゴではなくシンプルなロゴに変えたり、商品パッケージの情報も必要最低限の内容にまで研ぎ澄ますことにより、スポーツブランドのような洗練されたデザインへと刷新しました。企画開発チームとマーケティングチームが一体となり、製品仕様から各種プロモーションに至るまで、統一したコンセプトを徹底しています。

 

渋谷でイベントを開催。ストリートスポーツのファンも注目

 

──ベイブレードは、行政とも連携されているのでしょうか

タカラトミーの本社がある葛飾区と連携することがあります。具体的には、ベイブレードを題材に小学校での授業を行ったり、地域のイベントに参加したりなど、ベイブレードを中心に、様々な人と人との接点が生まれるような活動をしています。

また、渋谷区、特に渋谷未来デザインさんとの共創では、スポーツとしての親和性とカルチャー化に力を入れています。渋谷は多様な文化が交差する街です。「日本発のカルチャーを世界へ発信する」という我々の構想を体現するモデルケースとして最適だと考えました。

──その一環が、篠永さんのけん引する「BEYBLADE GOOUT PROJECT」なんですね。このプロジェクトについて、詳しく教えてください。

現在、全国400店舗以上の玩具売場の協力を得て、ベイブレード専用のスタジアム(対戦用の競技台)を設置しています。しかし、玩具売場がある地域は限られています。

そこで、このプロジェクトでは、公園や地域施設など、設置場所をより身近な場所へ広げることで、年齢を問わず誰もが気軽に集まれる環境の整備を進めました。取り組みの第一弾として、2025年11月に代々木公園BE STAGEで「GEAR SPORTS DAY 2025」を開催しました。

 

 

──「GEAR SPORTS DAY 2025」の手応えはいかがでしたか。

とても手応えを感じましたね。このイベントでは、道具やツールを使ったアクティビティ・スポーツを「GEAR SPORTS」として位置づけ、ベイブレードだけでなくスケートボードやダブルダッチなど様々な競技を楽しめる内容にしました。

その結果、競技の枠を超えた交流が生まれ、ベイブレードのファンがダブルダッチに挑戦したり、スケーターが初めてベイブレードに触れたりと、新たな広がりが多く見られました。スポーツの本質である「人との交流」が、異なる競技間で自然に生まれたと感じています。

── 運営における安全性への配慮については、どのように取り組んでいますか。

ベイブレードをカルチャーとして定着させるためには、安全性の確保が最優先です。高速に回転して衝突する遊びである以上、正しい使用方法の啓発や安全動線の設計を日ごろから、とても重視しております。誰もが安心して楽しめる環境づくりが、カルチャー化に向かうための前提条件だと考えています。

 

── イベントでは、ハンマー投げで世界を制した室伏広治さんにご登壇いただいた決勝ブロックも話題になりましたね。ベイブレードにおける“競技としての公平性”についてはどうお考えですか。

実は、室伏広治さんとの決勝ブロックは、ベイブレードの特性をアピールするとてもよい機会となりました。圧倒的な身体能力を持つ室伏さんに対し、子どもたちが対等に戦い、子どもたちが勝利する場面が多くあったのです。室伏さんはベイブレード初心者ながら、練習を重ね高い身体能力を生かしていましたが、結果は1勝にとどまりました。

子どもが大人に勝つという他のスポーツでは「ジャイアントキリング」ととらえられる現象が日常的に起きる点は、ベイブレードの面白さの一つです。室伏さんの試合を通じ、ベイブレードが筋力や体格の差があっても本気でぶつかり合える競技であることを多くの方に知ってもらえたと思います。

 

ベイブレードを渋谷の企業間連携の懸け橋に

 

── 篠永さんご自身、スポーツとしての認知向上について、実感する場面はありますか。

おもちゃ売り場に立ち寄ったとき、子どもが母親に向かって、ベイブレードを見ながら「これはスポーツだから遊びじゃないんだよ」と熱心に説明しているところに遭遇したことがあります。次世代のプレイヤーたちがブランドの意味づけを変え始めていることは、マーケティングの観点からもとても重要だと感じています。

──今後、渋谷未来デザインの会員企業と取り組んでいきたいことはありますか。

まずは代々木公園 BE STAGEでのイベントを定着させ、「ふらっと立ち寄って遊べる」公共空間のモデルを確立したいと考えています。その先に、例えば地域の高齢者と子どもたちのように、普段接点が多くない人たちが自然に交流する場を生み出し、こうしたコミュニケーションの形を全国に広げていくことが理想ですね。

また、企業との共創においては、あえて親和性の低い分野との接点も模索しています。例を挙げると、華道のような伝統文化など、一見するとベイブレードとは接点が無さそうな領域とも、ベイブレードを通してつながれるかもしれません。そうした意外性のある組み合わせから、新たなコミュニティの可能性を広げていきたいと考えています。

──篠永さんが考える、ベイブレードの未来を教えてください。

私たちはベイブレードを通じ、年齢や性別、言葉の壁を超えて人がつながるきっかけをつくりたいと考えています。デジタルが主流となった今だからこそ、リアルな場で人と向き合い、そこから会話が生まれる体験は重要だと思うからです。私自身、子どもの頃にベイブレードを通じて友人の輪を広げることができました。

例えば、ベイブレードで対戦したあとは「今のシュートは良かった」「そのカスタマイズは面白い」といったやり取りが自然に生まれます。こうした会話を通じて関係が深まっていくことが、ベイブレードの本質的な価値だと捉えています。

こうした体験の場を広げていくため、2026年度には、渋谷以外でも多くの場所でイベントを開催する予定です。ぜひ多くの方に集まっていただけると嬉しいです。詳しくはベイブレードの公式サイトからイベントスケジュールをご覧ください。

私たちの目標は公園や地域の中で、初対面の人同士でも当たり前のように対戦が始まり、そこから会話が生まれるような環境を広げていくこと。志を同じくする渋谷を拠点とする企業の皆さんにも、こうした場づくりにぜひ気軽にご参加いただければと思います。

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