お酒を飲む人も飲まない人も隔たりなく楽しめるあたらしいドリンクカルチャーを、渋谷から、皆で考え、つくり、発信していく「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」。渋谷未来デザイン(以下、FDS)と共に主催するスマドリ株式会社の元田さんにプロジェクトの歩みを振り返っていただきながら、今年5月に受賞した日本マーケティング大賞グランプリのこと、そしてFDSの魅力についてなど、FDSで当プロジェクトの担当を務める山羽が、お話をうかがいました——
小さな成功を重ねる最初の一歩
山羽 渋谷スマートドリンキングプロジェクトが発足して約1年が経ちましたね。これまでの活動を振り返ってみると、いかがですか?
元田 この1年一生懸命やってきたことのひとつは、学生連携でしたね。まずは大学生のみなさんに「スマドリセミナー」というコンテンツを提供したり、ここ「スマドリバー渋谷」で働いている大学生のアンバサダーの方々との活動も始まって。そういった適正飲酒の啓発活動に関して、渋谷区からの後援もいただいて積極的に取り組んでこれたかなと思っています。
山羽 賛同してくださる企業もだんだんと増えてきましたね。
元田 そうですね。「スマドリセミナー」は賛同いただいた企業に対しても提供させていただいていて、たとえば東急さんの新入社員の研修のなかで新社会人の皆さんに酒席でのマナーも含めて学んでもらうようなコンテンツを実施させてもらったり。そういう連携もだんだんとできてきました。
山羽 一方で我々FDSとの連携という面では、どんなところに魅力を感じてくださっていますか?
元田 ほかの地域では、社会課題の解決に向けて行政と企業が、あるいは企業同士がつながるのって、なかなか難しいんですよね。でも渋谷の場合、FDSのプラットフォームがあることで、手を挙げると仲間が集まってきてくれますよね。ネットワーキングのときに声を掛けていただいたり、最初は「何か一緒にできませんか?」という程度の話でも、いろいろとやってるうちに「これができますね」「あれができますね」と成就していくんですね。
我々もいまそういう小さいお話をいろんな方としながら、成果に向けて動き出しているものはいくつもあって。来年になったら具体的な成果として表れてくるんだろうなと思っています。
そういう最初の一歩を、スピード感をもって進められるというのはFDSと連携することのとても大きな魅力だと思っています。
山羽 ありがとうございます。振り返れば、渋谷スマートドリンキングプロジェクトの立ち上げも、あっという間でしたね…笑。
元田 たぶん準備期間は1カ月半くらいで立ち上げてますよね。
山羽 立ち上げの翌月には大学との連携も始まって、すぐにセミナーもスタートしていました。
元田 そういうスピード感で小さな成功体験をどんどん積み重ねていけるのがFDSのすごいところですし、そうやって生み出されていくものが増えていくと、どんどん仲間も集まってくるんですよね。その好循環が生まれると、どんどん渋谷から新しいものが生まれて…。我々もいろんな企業さんと、それぞれの役割をもって関わり合いながら、一緒に課題を解決していくような“コレクティブインパクト”をもっと起こしていけるといいなと思っています。
「渋谷スマドリバー」日本マーケティング大賞受賞
山羽 今年5月にはなんと、「スマドリバー渋谷」として日本マーケティング大賞グランプリを受賞されましたね。
元田 はい。SOCIAL INNOVATION WEEKのアイデアセッションで挙がったアイデアがきっかけになって生まれたこの「スマドリバー渋谷」ですけど、飲める人も飲まない人も共に楽しい時間や空間を過ごせるというダイバーシティの面と、そういうことに多様な立場の方々と共に向き合っているという“コレクティブインパクト”の面、この2つが評価されての受賞でした。
山羽 率直なお気持ちとしてはどうですか。
元田 この賞は第1回でユニクロの「ヒートテック」が受賞していたり、他にも花王の「アタックNeo」だったり、トヨタの「トヨタイムズ」だったり、誰もが知る商品やサービスが受賞してるんですよね。でも我々は言ってみれば1年ちょっとしか経っていないジョイントベンチャーで、そんな会社が渋谷でやっている1飲食店が受賞したわけですから、最初に連絡をもらったときは本当にびっくりしました。
でも今年の他の受賞者さんを見ても、社会的価値と経済的価値を両立しようとするプロジェクトが多かったんですよね。それはモノが売れればいいという時代から、転換してきているということの表れだと思いますし、そのひとつの象徴的な存在として我々を認めていただけたのかなと思っています。
山羽 今後の意気込みなんかも変わりましたか。
元田 意気込みは変わりましたね。注目される存在になってしまったので、実際に来てみてガッカリされることのないようにますます頑張らなきゃいけないなというのがまずありますし。また、こういった賞をいただけたということは、自分たちがやってることは間違ってなかったんだな、方向性はこっちでいいんだな、と背中を押してもらえたようで、安心したという気持ちもあります。
山羽 私もお酒が飲めないので、やっと時代が追い付いてくれたと思ってうれしいですし、改めて一緒にお仕事ができて良かったなとも思っています。
元田 最初は「時間がない」とか言いながらプロジェクトを立ち上げたところから、ここまできましたね(笑)。本当にいつもありがとうございます。
山羽 こちらこそありがとうございます。では最後に、今後取り組んでいきたいことやFDSに期待していることなどはありますか?
元田 渋谷から不適切な路上飲酒をなくせたら…それもできれば、条例などで強制的にじゃなくて、何かみんなの知恵でそれをなくせたらいいな、ということを思っています。
期待という意味では、FDSに参画しているメンバーがどんどん成果を出していけるといいですよね。成果がどんどん出ていくと、注目が集まるじゃないですか。注目が集まると成果が広がっていってまた仲間が集まって…。そうやって今度はFDSと似たような組織が全国の都市にもいっぱいできて、渋谷でやれたことや、どこかの地域でうまくいったことを全国にすぐ連携して広げられるようになると面白いなと思っています。
そうやってFDSと起こした小さな一歩のひとつひとつが、だんだんと大きく好循環になっていくことを期待していますね。
山羽 ありがとうございます。