Z世代と企業が共に「サステナブル都市」へのアクションを起こすためには? 第1回渋谷COPアカデミー【レポート】

レポート

地球の気候変動や温暖化対策を話し合う国際会議「COP(Conference of the parties=気候変動枠組条約締結国会議)」。現在、我々が日々耳にする脱炭素、カーボンニュートラル、温室効果ガス、地球温暖化などのキーワードはこの「COP」で決められた方針がほとんどで、地球の未来を決める重要な役割を果たしています。
このような問題に対して、Z世代と企業、双方が共に当事者意識を持ち、アクションを起こしていくための勉強会がスタートしました。それが2022年12月15日に初開催となった「渋谷COPアカデミー」です。

2~30年後の地球の未来を動かしていくのはZ世代を含む若者世代です。地球の環境・気候変動の問題に対して、世界中の若者たちがアクションを起こしていますが、日本ではどうでしょうか?
渋谷未来デザイン(以下FDS)と、サステナブルな社会を構築するためのプラットフォーム 一般社団法人SWiTCHの連携により運営される「渋谷COPアカデミー」には、学生、企業、行政の垣根を越えた参加者が集まりました。
ファシリテーターを務めるFDSの松嶋は、渋谷で環境問題を議論する意義についてこう語ります。

「日本の二酸化炭素の排出量の割合は、産業が34.7%、運輸が18.6%、業務その他が17.4%となっています。一方、渋谷区では、業務その他が55%と半分以上を占めています。つまり渋谷の外から働きに来ている方々が二酸化炭素を排出している割合が多い。環境問題というと自治体や住民が中心となって取り組まれることが多いですが、渋谷区は来街者も巻き込み、産官学民で連携して取り組んでいかなくていけません」

SWiTCHの代表理事 佐座槙苗さんは、「渋谷COPアカデミー」のゴールを「『Z世代』と『企業』が国際的なサステナ都市『渋谷』をつくる」ことだと語り、自身が運営メンバーとなり世界140カ国300人以上の若者と開催した「Mock COP26」(Mockとは疑似、模擬の意)の経験やこれまでの活動などを通じて、日本は国際社会から大きく遅れていることを痛感したと振り返ります。

「2022年に25か国を対象に実施された調査で「環境問題について国民の意識や行動が進んでいると思う国は?」という質問に対し、1位に選ばれたのは日本でした。インドネシア、エジプト、中国など開発途上国の方は日本を1位に選ぶ傾向があり、日本を選んだ理由として、「先進的な技術を持っている」「クリーンな国である」などの回答が多く寄せられました。しかし実際は、気候変動に関しての個人への影響を心配する人の割合は先進国のなかで最下位、メディアから得られる情報も非常に少ないのが現状です。本日は渋谷の現状、世界の潮流を知ることから始めたいと思います」

その後、佐座さんは日本と世界の現状の比較をわかりやすく解説していきます。たとえば、「世界の80億人が日本人と同じ暮らしをしたら、地球は何個必要?」(答えは3個)、「温暖化により、2085年にまだ夏季オリンピックが開催可能といわれる都市はアジアで何都市?」(答えは2都市。現在は約300都市)など、身近に感じられるクイズを交えながら、地球の資源は無限ではなく温暖化により様々なリスクが発生していると説明します。そして、『Future Earth』(持続可能な社会への転換をめざす、国際的研究プラットフォーム)が毎年発表する環境への提言『10 New Insights』から今後の活動の指針となりうる3つをピックアップしました。

「今後の気候変動への対応として主に『緩和』『適応』『損失と存在』が挙げられます。『損失と損害』はすでに気候変動による損害を被っている地域への対策で、『適応』は、気候変動による被害をできるだけ減らす対策となります。大事なのは気候変動の原因を減らしていく『緩和』です。すでに『適応』では耐えられないリスクが顕著になってきており、受け身ではなくポジティブに気候変動に対応していかなくてはいけません」

たとえば、世界全体のGDPの50%以上にあたる44兆ドルが自然に依存しており、気候変動のインパクトを大きく受けるとされ、経済にも多大なリスクがあると佐座さんは説明します。また気候変動によって亡くなった人のうち、40%が温暖化が原因で、人が住んでいるすべての大陸で温暖化による死亡率が上昇しており、決して気候危機は他人事ではないと強調します。

そして、2022年11月にエジプトで開催された「COP27」では、「脱炭素ウォッシュ=見せかけの脱炭素」はやめて、より具体的な目標とアクションを起こすことが合意されたと述べ、「2050年にあなたは何歳ですか?」と問いかけながら、これまで説明してきた被害をもっとも深刻に受けるのは、未来世代の若者であり、この世代のアクションや意識の醸成が重要になると「渋谷COPアカデミー」の意義を重ねて伝えました。

つづいて、FDSの松嶋から渋谷区の取り組みが、Earth hacksの関根さんからは「デカボスコア」「デカボチョイス」「デカボチャレンジ」など生活者視点での取り組みが紹介され、参加者からも積極的に質問が寄せられました。

特に「デカボスコア」に関しては、企業サイドからの関心が高く「ぜひ今度お会いしましょう」というコミュニケーションが生まれました。さっそく共創が生まれたことが、参加者の熱量を示しています。

最後はClimate Clock Japanの石田さんが登壇。「Climate Clock」とは、1.5度の気温上昇を抑えるために残されたCO2が排出され切るまでの残り時間を示す時計です。ニューヨーク、グラスゴー、ソウル、東京に設置されており、Climate Clock Japanは多様な若者世代が集まる渋谷に100個のClimate Clockを設置することを目標に活動しています。

残された時間は、2022年12月11日時点で「6年223日」。気候危機を他人事として捉えるのではなく、いま目の前で直面する課題として当事者意識を持つための仕掛けと言え、Climate Clockを見た方々が、佐座さんも強調していた「適応ではなく緩和」へと移行してくれるかが今後のテーマとなりそうです。

 

2023年1月下旬に2回目、2月中旬に3回目の開催を予定している「渋谷COPアカデミー」。2回目以降からの参加ももちろん可能ですので、ご興味のある方はお問い合わせください

また1回目で気候変動について多くの知識を得た参加者の皆さんが、2回目以降にどのようなアクションプランを立てていくのか、渋谷がサステナブルな都市としてどのように変わっていくのか、ぜひ一緒に注目し、活動に移していきましょう。