ポジティブに挑戦を続ける組織であるために
関係各所との豊かなつながりづくりを

松本賢司(渋谷未来デザイン 参事・業務執行理事)

2024年7月より、これまで長きに渡り渋谷区職員として行政に携わってきた松本賢司さんを渋谷未来デザインの参事・業務執行理事として迎え、新体制がスタートしています。
ここでは松本さんのこれまでの活動を振り返りながら、これからの渋谷未来デザインのあり方についてなど、語ってもらいました。

取材・文:天田 輔(渋谷未来デザイン)

 

—まずは、松本さんのこれまでの経歴についてあらためてお聞きしたいです。

私はこれまで渋谷区役所職員として、昭和62年に入区以来37年間、区行政に携わってきました。19年間様々な部署で職員としての経験を積んだのち管理職に昇任し、以後18年間、様々なポストで区民福祉、区民サービス向上のために努力を傾注してまいりました。

37年間の役所生活は常に忙しかった印象で、あっという間でしたが、いつも大切にしていたことは、区民の皆様から厳しいお叱りを受けながらも常に真摯に区民の声を聴く傾聴の姿勢を貫くことでした。また、公務員のあるべき姿として「人の世話をしろ、人の世話になるな、対価を求めるな」という、入区当時の天野区長の訓示をモットーとしてやってきました。

渋谷未来デザイン(以下、FDS)と大きく関わりがあったのは、2020〜21年、渋谷区の経営企画部長として、FDSに対しては渋谷区側の事務所管という立場だった頃。まさにコロナ禍で、街に全く人がいなくなった渋谷のまちの活力を取り戻すために全国の渋谷ファンの皆さんに支援を呼びかけた「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」では、私もたくさんの企業を訪問して支援のお願いをさせていただきました。公務員として、企業にお金を捻出していただく難しさを初めて肌で実感したのを覚えています。

 

 

—長い間渋谷に関わられてきましたが、そんな松本さんからは、渋谷のまちの魅力や可能性についてはどんな風に見えていますか?

渋谷駅を中心とする市街地では、エンタメ、芸術、ファッション、飲食、スポーツ、そして伝統文化などあらゆるカルチャーが混在していて、渋谷に来れば何か新しいことが起きるんじゃないか、起こせるんじゃないか、という可能性が感じられる、インキュベーションあふれるまち、という印象があります。

一方で区の外周部に目を向けると、中野や杉並、新宿区等と区境を接する区域では古くから町会や自治会などの自治活動も活発で、多くの人情商店街が広がり、お祭りや盆踊りなどの伝統文化・庶民文化が脈脈と受け継がれています。

そのように渋谷は、最新の流行と伝統文化がうまく混在してできていて、多様な価値観を認め合える、まさに「ちがいを力に変えるまち」であり、成熟した国際文化都市であると思います。

 

—これまでのFDSの活動をふまえて、松本さんとしてはFDSのどんなところに魅力を感じていますか?

今年7 期目を迎えているFDSですが、これまで、まちづくり、環境、防災、スポーツ、教育など幅広い領域の課題解決を目指して産官学民共創プロジェクトが多数生まれ、サービスとして実装されているものもたくさんあります。行政のみではカバーしきれないような領域でプロジェクトを創生し事業化してきていることは、行政の側として敬意を表すべきことだと、元より感じていました。
他自治体をはじめ、市区町村議会議員、公共・公益団体、企業などから、FDSを視察したいという依頼も多く、これはFDSのこれまでの活動実績の影響が区外にも拡散し波及していることの証だと思います。

また感心するのは、FDS で働く人や関わってくださる人たちが、みなさん大変ポジティプで、トライ&エラーの精神で日々新しいことに挑戦していること。予算をどう有効に使っていくかを重視する役所の発想とは違い、まず解決したい課題があってそのために何ができるのか、どう予算を確保するか、と考えていく思考と行動は私にとってとても新鮮に感じられますし、大きな魅力のひとつだと感じています。

 

 

—今後FDSがどんな組織になっていくべきか、お考えを聞かせてください。

FDSの設立から6年が経ち、一般社団法人として、財務の面でも自立自走していくことが求められるフェーズに入っているなか、直近3年連続で単年度収支が黒字決算となっているのはまさにみなさんの努力の賜物だと思っています。

一方で、現状FDSが取り組むプロジェクトの多くは共創型である特性上、都度プロジェクトごとに財源を確保していくかたちになる場合が多く、それはある意味では不安定な面でもあると思います。これまで通りのプロジェクトも推進しながら、且つ、安定した財源となり得る形態の業務も今後受託していけるよう、さらに業務遂行力と信頼性を上げていく必要があると考えています。

そうしたなか、区や議会との連携強化も注力事項のひとつです。FDSが取り組むことに対して、区役所をはじめ各所からの理解と協力を得ていくこと、そのための架け橋となってつながりを豊かにしていくことは、私の役割のひとつだとも感じています。

 

 

—では最後にあらためて意気込みをお聞かせください

これからも、役所だけでは解決できないような領域の課題に対して、FDSと広く企業等の皆様のアイデアやノウハウを活用して、トライ&エラーを繰り返しながら解決を目指していくために尽力したいですし、その活動をもっと区民の皆様にも知ってもらって、より確かな信頼関係をつくっていきたいですね。

これまで37年間公務員をやってきたので、民間への転職も初めてですし、新たな挑戦になりますが、せっかく機会をいただきましたので第二の人生、楽しんで取り組んでいきたいと思っています。
今後とも渋谷未来デザインの発展のためにしっかり貢献していく所存でございますのでよろしくお願い申し上げます。

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