去る8月29日、地方自治体、企業、教育機関等を対象にしたイベント「産官学民共創フォーラム」が、渋谷未来デザインとコミューン株式会社の主催により開催されました。
「産官学民共創フォーラム」は、地方自治体、企業、教育機関など様々な団体の方が一堂に会し、多様な視点から社会課題に取り組むためのアイディアや地域の可能性を話し合い、連携を強化しアクションにつなげるためにはどうすれば良いかを全員で考えるイベント。
ここでは、当日の模様をレポートします。
「産官学民共創フォーラム」
https://co-creationforum2408.studio.site/
Special Session2
産官学民共創でつなぐ未来:渋谷スマートドリンキングプロジェクトの挑戦と展望
元田済さん(スマドリ株式会社 取締役 CMO)
長田新子さん(一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長)
2022年1月、アサヒビールで社内起業し、スマドリ株式会社を立ち上げた元田済さん。この会社の第一のミッションは、「スマートドリンキング」の考え方を普及させることだと言います。
スマートドリンキングは、「飲める人と飲めない人、または飲まない人もともに楽しい時間・空間を過ごせる社会を作っていくための活動」のこと。アサヒビールが、日本全国の20歳から70歳まで約9000万人を対象に、飲酒についての調査を実施したところ、“お酒を頻繁に飲む”と答えた方は2000万人ほど。また、“お酒をそこまでお酒は飲まない”といういわゆるライトユーザーも2000万人ほど。「“お酒を飲まない”、あるいは、“体質的に飲めない”と答えた方が約5000万人。実は、お酒を飲めない方というのは、決してマイノリティではないことが、この数字から見えてきまして、我々も驚きました」と元田さん。
また、飲酒の場でも今までは、お酒を飲みたい人が主体で、飲めない人は、“すいません、私、飲めないんです”となってしまう状況があったと元田さん。「飲める人も常に飲みたいわけではないでしょう。飲む人、飲まない人がリスペクトしあい、飲んでも飲まなくても同じ空間を楽しめることが、スマートドリンク活動の理想」。
元田さんは、このスマートドリンキングは、世界的な流れにあるとも付け加えます。「飲酒については、2010年に世界保健機関(WHO)が、アルコールの有害な使用を低減していきましょうという世界戦略を示しました。また国連が進めるSDGsの3つ目の目標に“すべての人に健康と福祉を”とありますが、そのターゲットには、アルコールの有害な摂取の防止が含まれています。それを推進していこうという流れが、今世界的に起きています。レスポンシブルドリンキング(責任ある飲酒)という概念、お酒を飲めるんだけど、あえて飲まない選択をする、ソバーキュリアスというライフスタイルのあり方も、最近は耳にするようになってきています」
そうした背景から、お酒を飲めない人・飲まない人にフォーカスして、スマートドリンキングカルチャーの価値と理解浸透を推進する会社として、スマドリ社を創設したと元田さんは説明。続けて、これまでスマドリ社の具体的な活動を紹介しました。例えば、マーケティング調査のほか、アルコール体質を測定するパッチテストを含めたセミナーやワークショップの実施など。大学あるいは企業と連携して行うものも多く、例えば、東急不動産株式会社とは、「お酒の成人式」と題し、啓蒙セミナーを新入社員研修のひとつとして行なっていると言います。
また、渋谷センター街には、安心して飲めるノンアル・ローアルのバー「スマドリバー渋谷」もオープン。その立ち上げにあたっては、渋谷未来デザインと協業し、「スマートドリンキング」の推進から、(不適切な飲酒やハロウィンの路上飲酒問題など)渋谷区の社会課題解決に貢献し、飲み方の多様性を尊重し合える社会の実現を目指す「渋谷スマートドリンクプロジェクト」が始動されました。
こうした取り組みは、企業の課題、社会の課題の両方に目を向け、かつ、社会的価値と経済的価値の両立を目指すCSV(Creating Shared Value)経営のひとつのモデルになっているかもしれないと、元田さん。
「関わっている大学の先生も、こうしたCSVのあり方に関心を持っている方も多くいらっしゃいます。そういう方と情報交換し、ディスカションしながら、その良いCSVのかたちをスマドリの活動で作りたいと思います」
渋谷スマートドリンキングプロジェクト https://shibuya-smartdrinking.jp/