“YOU MAKE SHIBUYA VIRTUAL MUSIC LIVE powered by au 5G”ライヴ・レポート

“YOU MAKE SHIBUYA VIRTUAL MUSIC LIVE powered by au 5G”
2021.3.31~5.23 @SHIBUYA UNDER SCRAMBLE(バーチャル会場)
Reported by 宮﨑大樹(Skream!

 

渋谷区公認の仮想現実プラットフォームとして生まれた、仮想現実上の渋谷の街“バーチャル渋谷”。この“もうひとつの渋谷”が誕生したことで、これまで日常的に渋谷へ行き来していた人はもちろん、世界中の人々が、自宅から、あるいは移動中にも、気軽に渋谷の街へ行き、そのカルチャーに触れ合えるようになった。

言うまでもなく、渋谷という街は、日本のカルチャーを発信する中心地的な存在。そして、これもご存じの通り、新型コロナウイルスの感染拡大により、日本のエンターテイメントの多くは窮地に追い込まれている。

そういう状況下においても、渋谷のカルチャーを絶やさず、拡大して発信し続けていけることが、バーチャル渋谷の意義のひとつだ。また、渋谷という一種のブランドを掲げて発信していくことで、それが日本を象徴するカルチャーのひとつとして届けられていくことも重要だろう。

そんなバーチャル渋谷の中にオープンしたライヴハウス“SHIBUYA UNDER SCRAMBLE powered by au 5G”で、総勢100組/約20日間に及ぶライヴ・イベントが行われた。このライヴハウスの設立と本イベントは、渋谷の文化を救う“YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング”の資金使途として、コロナ禍において活動が制限されているアーティストに表現と発信の場を提供した。

渋谷の各ライヴハウスがブッキングに携わったことにより、様々な音楽ジャンルのアーティストが“SHIBUYA UNDER SCRAMBLE powered by au 5G”のステージに立ったのだが、そうしているうちに、バーチャル渋谷の中で興味深い現象が起こった。いつの間にか、アバターたちがライヴハウスの案内係をやったり、案内図に扮したアバターになったりと、自主的に行動を起こしていったのだ。

バーチャル渋谷という生まれたばかりのまっさらな土地の上で、独自の文化が芽生える。何か新たな現象、シーンが発生する前触れにも感じさせた出来事が起きた。アーティストも観客も、まだまだ手探り状態ではあったはずだが、今後バーチャル・ライヴハウスならではの盛り上がり方やコミュニケーションが発生するのかもしれない。

また、20日間で延べ3万人の来場があったこのイベントでは、最終日の5月23日に、ライヴハウス内で花火を打ち上げるスペシャルな演出もあった(ライヴハウスで打ち上げ花火という、非現実的な演出も可能なあたりは実に面白い)。2020年に一気に普及したライヴ配信。その文化、演出が、これからどんなふうに発展を遂げていくのか楽しみだ。

今回バーチャル渋谷にライヴハウスが誕生したということ。これは、決して大袈裟ではなく、瀕死の状態にあるライヴハウスやアーティストに生活の糧と希望を与え、エンターテイメントの可能性、底力を提示したと言えるだろう。

なお、今回出演したアーティストたちの曲で構成されたプレイリストが、Spotifyで公開されている。イベントに参加した人も、そうでない人も、ぜひチェックしてほしい。