
渋谷未来デザインと一般社団法人SWiTCHが中心となり、脱炭素社会、生物多様性などサステナブルをテーマに産官学で議論をしてきた「Carbon Neutral Urban Design(CNUD)」。CNUDが定期的に開催している「サステナビリティ共創MEETUP」は、環境に関する先進的な取り組みやアイデアが詰まった現場をガイドする交流セッションです。地域の未来を支えるために、行政と企業がどのように手を取り合い持続可能なまちづくりを実現することができるのかを、登壇者と参加者の皆さんで考えていきます。
第4回目の「サステナビリティ共創MEETUP」は、“官民連携編”として官民連携から生まれる新たな価値創造についてお話して頂くために、東急不動産株式会社のインフラ・インダストリー事業本部の熊澤様と、共創統括本部の沼滝様、札幌市のまちづくり政策局政策企画部の渡邊様にご登壇頂きました。
サステナビリティ共創MEETUP Vol.4 〜官民連携編〜
2025年11月5日(水) @ TENOHA 代官山
<登壇>
熊澤 圭悟(東急不動産㈱ インフラ・インダストリー事業本部環境エネルギー事業第一部戦略企画グループ)
沼滝 ゆりか(東急不動産㈱ 共創統括本部プロジェクト共創部官民連携・企画推進グループ)
渡邊 祐介(札幌市 まちづくり政策局政策企画部民・広域連携推進室推進課推進係長)
佐座 槙苗(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
冒頭の挨拶としてSWiTCH佐座さんから、「企業がサステナブルな取り組みをすることは当たり前になった今、顧客やステークホルダーにどのように発信していくかを皆様と一緒に考えるきっかけにしたい」と今回のMEETUP開催の目的が伝えられました。また、今回の会場のTENOHA代官山について、東急不動産ホールディングス株式会社の松本さんが紹介し、施設の建築や生物多様性、食品ロスからの再生エネルギー活用等、TENOHA代官山がサステナビリティの発信拠点になることを共有しました。

第1部は、札幌市 渡邊さんと東急不動産 沼滝さん、同じく東急不動産の熊澤さんの3名が、それぞれの取り組みの紹介をしました。

札幌市ではまちづくりの方向性として地域特性を活かした戦略である「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」を策定しています。持続可能なまちづくりを行うためには企業との共創が必要不可欠であることから、官民連携を推進するための「SAPPORO CO-CREATION GATE」というハブの役割を行うワンストップ窓口を開設しました。今後は周辺自治体等も巻き込んだ官民連携にも取り組んでいきたいと考えています。

沼滝さんは、官民連携にあたっての東急不動産社内の組織体制について説明。沼滝さんの所属する「官民連携・企画推進グループ」は、社内の全リソースに対応する「ワンストップ窓口」としての役割を担っています。不動産事業以外にも再生エネルギー・脱炭素の取り組みや高齢者の健康寿命延長の取り組み等を幅広く行なっています。また現在までの取り組み事例として、さまざまな自治体との連携を紹介。今後は環境を起点とした事業機会の拡大を行なっていきたいと熱を込めました。

一方、同社内でも熊澤さんが取り組みを進める環境エネルギー事業本部では、地域や行政などの様々な分野での再エネに関する取り組みを行なっています。自治体との連携や協力を行い、脱炭素化並びに農業課題の解決を目指す地域に向けて「営農型太陽光発電事業」の導入を検討してもらう取り組みを推進しています。
第2部のトークセッションでは、今回のテーマ「官民連携」についてさらに意見が交わされました。
『地方自治体と企業が“本音で語る”連携のリアル』のパートでは、佐座さんから「官民連携が形式的な協定にとどまらず、実践的な協働として価値を生むために必要なことは?」という問いが投げかけられ、ゲストの3名はこう答えます。
札幌市 渡邊さん「民間事業者と行政は根本にある論理や性質が異なる。その中でいかに相互理解を生むことができるかが重要であり、どのようにして相互間のパートナーシップを構築していくかということが今後の課題だと考えています」
東急不動産 沼滝さん「民間企業同士で事業を行う際は、収益を最大化するという共通目的の下でプロジェクトを進行しますが、行政には収益化という点以上に大切にするべき、民間とは異なる視点があります。そのため事業の連携を行うことが難しいことがままあります。この異なる価値観をどう調和させ、相互にメリットのある”ストーリー”をつくっていくかが今後の課題だと思います」
東急不動産 熊澤さん「脱炭素分野は自治体によって導入意向や戦略、方針が異なるからこその課題がある。私たち企業側と同じ方向性をもった自治体と活動していくことが、自治体と企業双方にとってベストな方針だと感じています」

続いて『共創が生み出す社会的インパクト』のパートでは、佐座さんから「環境への貢献にとどまらず、暮らしや経済にまで共創の効果が広がっていくためには?」と問題提起。
熊澤さんは、「これまで進められてきた『脱炭素先行地域』やこれから経済産業省と内閣府が進める『GX戦略地域』といった指標や支援事業があると、それに向けて官民が同じベクトルを向いて共同しやすい」と語りました。
渡邊さんは、札幌市が締結したスポーツウェアブランドとの包括連携協定を挙げ、「この協定を活かすための一環として、山岳救助隊のウェアにおいてのコラボレーションを実施しました。このような事例を積み重ねていくことにより官民連携についての理解を深めていきたいです」と今後のビジョンを示しました。
また、「行政と企業が連携することでどのような社会的価値や変化が生まれるのか?」という佐座さんの問いに、沼滝さんは、「“環境系といえば東急不動産”という認識のもと相談いただく機会が増えた。行政との打合せなどで環境にまつわるリリースをこまめに共有することで、当社の事業内容を認識していただくよう心がけてきた。最近はその成果が出てきたと実感しています」と、すでに変化が生まれ始めているという手応えを語りました。

第3部は、登壇者から参加者の皆さんへ質問を投げかけ、皆さんの考えを共有する、対話形式のセッション。ここではその一例を紹介します。
<問>札幌市として脱炭素に関する具体的な行動事例があれば教えてほしい
渡邊さん「SWiTCHと行った『サステナキッズアワード』が一つの事例です。環境問題について子どもたちの視点を用いて実際に行動する大人に提案するということを行いました。これをきっかけに具体的な事業の展開ができればと思っています」
佐座さん「札幌市が10年以上取り組んでいるエコライフレポート(夏休み・冬休みに子供が家庭内で実施する環境行動のチェックリスト)は大人目線で作成されたものでしたが、今回のサステナキッズアワードでは子ども視点のアイデアを募集し、エコライフレポートへの掲載にまでこぎつけることができました。このように実際的なレベルに落とし込めているものもあることを知っていただければうれしいです」
<問> ベンチャー企業としてゴミの資源化に取り組んでいるが、自治体の窓口担当者以外とも協働したいがなかなか繋がれない。包括連携協定を結べば事情は改善するのでしょうか?
渡邊さん「包括連携協定はあくまで行政と企業のパートナーシップの基盤であるため、協定を結べば即可能になる、というわけではありません。例えば、ゴミの問題は環境部門の担当課が窓口ですが、広く見れば公共施設関連など複数の部署が関わる問題であり、縦割りの壁を超えて取り組むべきものであるという所の理解を深めていくことが大事だと感じています。まずは行政側のあり方を変えていき、そのうえで企業との連携に必要なビジョンを養っていくことが重要だと考えています」
その後、参加者同士の交流会を経て、今回のミートアップは終了。
お集まりいただいたさまざまな業種の皆さんにとっても、サステナビリティ文脈において官民連携が大きな可能性を持っていることが感じられたのではないでしょうか。
CNUDではこれからも、同じ想いを持つ企業、団体、個人の輪を広げていきます。


