
渋谷未来デザインと一般社団法人SWiTCHが中心となり、脱炭素社会、生物多様性などサステナブルをテーマに産官学で議論をしてきた「Carbon Neutral Urban Design(CNUD)」。CNUDが定期的に開催している「サステナビリティ共創MEETUP」は、環境に関する先進的な取り組みやアイデアが詰まった現場をガイドする交流セッションです。地域の未来を支えるために、行政と企業がどのように手を取り合い持続可能なまちづくりを実現することができるのかを、登壇者と参加者の皆さんで考えていきます。
第6回は「サステナブルビジネスを加速するスタートアップとの共創と成果」をテーマに、大手企業とスタートアップの連携事例や、その推進における課題とヒントが共有されました。クローズドな場ならではの率直な対話が交わされ、参加者からは活発な質疑応答が繰り広げられました。
<開催概要>
開催日時:2026年3月18日(水)17:00〜19:00
会場:TENOHA 代官山(東京都渋谷区代官山20-12)
共催:東急不動産ホールディングス株式会社、一般社団法人SWITCH(協力:Carbon Neutral Urban Design)
登壇:
鈴木与一さん(NTTドコモビジネス株式会社 ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室 担当部長)
槌尾健さん(株式会社竹中工務店 技術本部 技術プロデュース部 GRITグループ 主任)
井上莉沙さん(Plug and Play Japan株式会社 エネルギー部 シニアマネージャー)
ファシリテーター|佐座槙苗(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
はじめに|CNUDの趣旨と、TENOHA代官山という場
開会にあたり佐座から、CNUDが「渋谷からサステナブルな価値観を発信したい」という思いのもと、サステナビリティに関わるさまざまな分野の人たちと対話を重ねてきたことが紹介されました。また、本イベントが体験型交流セッションとして、環境課題に本気で取り組む企業・行政の担当者が立場を超えて語り合い、連携を生むきっかけ作りや共感を広げる場であることを改めて共有しました。
東急不動産ホールディングスの松本さんからは、TENOHA代官山が多様な人々が集い、サステナブルな活動を広める場として機能していることが述べられました。

第1部|3名のゲストが語る、それぞれの取り組み
第1部では、サステナブルビジネスにおけるスタートアップ連携の最前線で活躍する3名のゲストが、それぞれの立場から具体的な取り組みを紹介しました。

NTTドコモビジネス 鈴木さんは、2025年7月にNTTコミュニケーションズから社名変更したNTTドコモビジネスが、ドコモグループの中で法人や自治体向けに事業を展開していることを説明しました。同社では、カーボンニュートラル(CN)、サーキュラーエコノミー(CE)、ネイチャーポジティブ(NP)の実現に向けた取り組みを推進しながら、新たなビジネス、企業価値の創出を目指しており、最近ではこれらの取り組みに必要なデータを持つスタートアップと連携し、新しい取り組みを始めていると紹介しました。

竹中工務店 槌尾さんは、建築を主軸とする総合建設会社である同社が「環境戦略2050」を掲げ、「脱炭素」「資源循環」「自然共生」という3つの柱のもと、環境に配慮した取り組みを進めていることを紹介。また、スタートアップや外部パートナーと連携しながら新たな価値創出を目指すプラットフォーム「GRIT」という取り組みを行っており、実際にChop Value社との協働により、廃棄される割り箸を新たな製品に生まれ変わらせるビジネスを展開していると述べ、参加者の手元にあるコースターもその一つであると紹介しました。

Plug and Play Japan株式会社 井上さんは、世界最大級のイノベーションプラットフォームであり、大手企業とスタートアップをつなぐコミュニティを形成している同社の取り組みを紹介しました。世界に60以上の拠点を持ち、2017年に日本で事業を開始して以来、現在では1,200社以上のスタートアップの支援を行っていることを説明。業界ごとに分かれたプログラムを通じて、スタートアップの発掘や、大手企業のオープンイノベーション支援を行っていることに加え、スタートアップと大手企業をつなぐだけでなく、スタートアップの成長を促進するための投資活動にも取り組んでおり、昨年には日本でファンドを立ち上げ、資金提供の拡大を進めていると語りました。
第2部|トークセッション:スタートアップ連携の「価値」と「推進の鍵」
このセッションでは、大手企業とスタートアップの連携がいかに企業価値向上や新規事業創出に繋がるのか、またその連携を成功させるための課題と具体的なヒントが議論されました。ファシリテーターの問いかけに対し、登壇者それぞれの経験に基づく実践的な知見が共有されました。
スタートアップとの連携を通じて生まれる価値について、Plug and Play Japanの井上さんは、大手企業が新規事業に取り組む際に、スタートアップの持つ能力、実行力、そして「興味を持ったらやってみる」というマインドが期待されると述べました。大手企業が持つ慎重さを補完し、新しい挑戦を体験する機会にもなるといいます。
竹中工務店の槌尾さんは、ゼネコンとして多様な関係者と協働してきた背景から「社内に新しいことに挑戦する精神が根付いている」と語りました。同社では、多くの場を活用してスタートアップの技術を試すことができ、顧客ニーズに直結する設計や技術は事業に繋がりやすいため、本業との連携を意識しながら社内理解を得て取り組んでいると紹介しました。
NTTドコモビジネスの鈴木さんは、事業開発の現場として中長期的な投資ではなく「直近で一緒にできること」を重視していると説明。大企業とスタートアップという立場の違いはあれど、対等なパートナーシップを意識し、大企業の強みとスタートアップの技術・スピードを最大限に活かす連携が重要であると語りました。

次に、スタートアップとの協働を社内に浸透させ、継続的な取り組みとするための工夫が議論されました。
NTTドコモビジネスの鈴木さんは、まずはスタートアップに「会ってみる」、イベントに「行ってみる」といった行動の障壁を取り払うことが重要だと述べました。「現場に足を運ぶことで必ず何かしらの変化が生まれ、新しい気づきにつながる」のだと言います。また、社内の関心が一部の層に偏る傾向があるため、「社内セミナーなどを通じて、より広範囲に啓蒙活動を行っている」と語りました。
株式会社竹中工務店の槌尾さんは「社内のスピード感向上、GRITのような専門チームの立ち上げ、技術開発への予算確保といった社内調整が必要だと感じている」とコメント。予算や時間の制約の中でも、円滑に連携が進むよう支援し、スタートアップと協働しやすい環境づくりに取り組む姿勢を示しました。
Plug and Play Japanの井上さんは、スタートアップと大企業の連携には出会いの場や具体的な議論の場の創出など多くのハードルが存在すると指摘。「それらのハードルを下げていくことが自身の役割だとし、失敗を過度に恐れず、やり抜く意志を持つことが連携を前に進める上で不可欠です」と話しました。
その後登壇者間で、スタートアップ連携における苦労や、意外だった点についても率直な意見交換が行われました。
まずNTTドコモビジネスの鈴木さんから、スタートアップ連携で大変だったことについて質問が投げかけられ、対して竹中工務店の槌尾さんは「当初は社内協力を得るのが難しく、連携が形にならないこともあった」と振り返りました。しかし、視点を変え、消費者や社内上層部からの共感を得ることを意識。試行錯誤を重ね、粘り強く取り組んできたことが現在の成果につながっていることを語りました。
また、Plug and Play Japanの井上さんが「意外と大変ではなかったことは?」と問いかけると、槌尾さんは「自分たちの利益を優先するよりも、スタートアップが成長した先に何か得られればよい、というマインドに変わってから、連携が進めやすくなりました」と、マインドセットの変化が連携成功の鍵であることを伝えました。

第3部|参加者との対話セッション
ここでは来場した参加者からの活発な質疑応答を通じて、より実践的な課題解決のヒントが共有されました。その一部を抜粋して紹介します。
<問> 数値指標として重視されているものはありますか?
槌尾さん「数値や成果も重要ですが、当社は共同研究など上流工程に関わることが多いため、闇雲にスタートアップを探しているわけではありません。成果につながることを前提に探索を行い、特に技術探索を主軸としているため、技術レベルを重視しています」
鈴木さん「新規事業においては、売上がすぐに伸びないケースもあるため、接触回数やユースケースの創出といった指標を重視しています」
<問> 大企業がスタートアップとの連携に関心を持っていることを、スタートアップ側に認知してもらうための取り組みはされていますか?
井上さん「業種を問わず、スタートアップと企業が集まりピッチを行うイベントを定期的に実施しています。これはスタートアップ側だけでなく、大企業側の取り組みを知る機会にもなっています。また、ニュースレターなどを活用した情報発信も有効だと考えています」
鈴木さん「新規事業は自社だけで完結するものではないため、イベントなどを通じて外部との接点を積極的に作っています。ドコモベンチャーズを通じた支援やマッチングのほか、新規事業の取り組みをホームページで発信するなど、認知拡大にも取り組んでいます」
東急不動産 松本さん「まさにこのような場を作りたいという思いのもと、TENOHA代官山を造っています。様々な人のつながりを通して活動を広めていくことのできる場を作っていけたらと思っています」

また、第3部のまとめとして、登壇者から次のようなメッセージが送られました。
NTTドコモビジネス 鈴木さん
「大企業が様々なことにチャレンジしていること、皆様にとって遠い存在ではないことを感じてほしい」
竹中工務店 槌尾さん
「イベントから始まったことはたくさんありましたし、本日のこのような機会は貴重です。ぜひこれからも一緒にやっていけたら」
Plug and Play Japan 井上さん
「スタートアップと大企業を繋げる役割として様々なイベントを開催しているので、ぜひ周りの方を巻き込んで参加していただきたい。事業のジャンルを問わず、ぜひ今後も連携を皆様と実施できれば」

今回のMEETUPでは、大手企業がスタートアップとの連携を通じて、いかにして企業価値を高め、新しいサステナブルビジネスを創出していくかについて、多角的な視点から議論が交わされました。大手企業が持つリソースや信用力と、スタートアップの持つスピード感や革新的な技術・マインドが融合することで、これまでの課題を乗り越え、より大きな成果を生み出す可能性が示されました。
トークセッション終了後には、登壇者も交えた交流会が催され、参加者たちは立場や業種を超えた活発な情報交換を行いました。この交流が、新たな連携やサステナブルな未来に向けた次の一歩につながることを期待させます。


