2024年9月21・22日、渋谷区立宮下公園 芝生ひろばにて『SHIBUYA MIYASHITA PARK BON DANCE(以下、BON DANCE)』が開催されました。伝統的な盆踊りとダンスミュージックをミックスするというユニークなコンセプトで大盛況となった「BON DANCE」を中心とする、このあたらしい夏祭りの開催に至った背景や込められた想いについてお話をうかがいました。
取材・文:天田 輔(渋谷未来デザイン)
お祭りがつなぐ、都市に生きる人と人
——「BON DANCE」は昨年2023年に初開催されましたが、“宮下公園の盆踊り”というものはそれ以前からあったんでしょうか?
八子「旧宮下公園の頃、商店会主催で何かイベントができないかということで、『みやしたこうえん夏祭り』として盆踊りが催されたのが2015年でした。渋谷に拠点を置く企業さんの支援をいただきながら開催されていましたが、その後、公園の再開発に伴って休止状態になっていたんです」
永山「また盆踊りをやりたいっていう思いはずっとあったんですよ。でもコロナで人が集まれない状況にもなってしまって」
百瀬「コロナが落ち着いてきた頃には、宮下公園は新しい施設として竣工していましたので、また以前のようにここでしようと思っても、これまで通りにはいかず困っていたんですね。そこで出会ったのが三井不動産の関原さんで」
関原「新しく生まれ変わったMIYASHITA PARKで、コロナが明けてこれからいろんなイベントできるという時、地域の皆さまとのつながりの場を増やしたいと感じていたんですね。地域にひらかれた宮下公園なのに、地域の皆様が主体となってやっていただくイベントがまだ少ない。そういう時に百瀬さんと永山さんから『BON DANCE』のご相談をいただいて、また、そこにかけるとても強い思いも受け取りました」
永山「商店会としては、いま何かやらなきゃダメなんじゃないかっていう気持ちで。しばらくは費用面で商店会の持ち出しになってもいいから、また次の年につなげていくためになんとかやりましょうよっていう思いでした」
—— そうして周囲のご協力がありながら初開催されたのが昨年。2回目の開催となった今年の手応えはいかがでしたか?
百瀬「初年度は、トライアル的な意味もあって“第0回”。今年から本格的にスタートという感覚がありますが、昨年は1日限りだったのを今年は2日間で開催し、1万4000人もの方々にお越しいただきました」
百瀬「このBON DANCEで多くの来場者の皆様に商店会のことも知っていただき、まちの活性化に貢献することができました。また私たち日本人のアイデンティティを感じていただける場にもなったと実感しています」
永山「しっかり準備してきてくれた方々も多かったですが、知らないでたまたま宮下公園にきて、流れにまかせて盆踊りに参加している大勢の人たちを見ていて、面白いなあと思いましたね」
—— お祭りや盆踊りには、人を巻き込むちからがありますね。
関原「年齢層も幅広かったですよね。こども連れのご家族もいるし、海外からの観光客の方もいるし。また時間帯によってはDJイベントもあったりして、1日を通して本当にいろんな方たちがいて、そこは渋谷らしいところでもありました」
百瀬「海外からの人たちもすごく楽しそうで。みんなでお酒を飲みながら、やぐらを囲んでその場で一緒に練習してみんなで踊った、その達成感を持って帰ってもらえたのは嬉しかったですね」
関原「商業施設でのイベントという意味では、そこに入っているいろんなテナントさんと一緒になって一体感を感じられるイベントというのは、実はなかなかありません。でも、まちの皆さんが主催してくださる盆踊りは参加しやすいのだと思います。BON DANCEではMIYASHITA PARK全体で多くのテナントさんがそれぞれのかたちで関わってくださいました」
百瀬「お祭りがハブになって、いろんなものがつながっていくという経験をまちの皆さんでできたことは、大きな価値だったと思いますね」
参加者が主体的に一体感をつくる
八子「敷居が下がるという点でいうと、盆踊りの曲もポップになっていたり、『EZ DO DANCE』で踊ったりとかも」
百瀬「あれがいちばん盛り上がるから(笑)」
八子「そういう盛り上がってる様子を撮影してる人たちもすごく増えましたよね」
関原「多様な人たちがいっせいにSNSやYouTubeに上げてくれて、これもお祭りならではの盛り上がりだったと思います」
—— お祭りに来る人たちは、コンテンツを受け取りに来るんじゃなくて、自分たちから主体的に楽しもうとするスタンスがあリますね。
百瀬「それはお祭りの良さですよね。テーマパークみたいに出来上がったものを与えるようなかたちではなくて、BON DANCE側は、皆さんが楽しめるチャンスをつくっているだけで。皆さんが自分たちで楽しみをつくりに来ているという感じがすごくしました」
—— 具体的にグッときたのはどんなところでしたか?
百瀬「おばあちゃんたちが盛り上がりまくっていたカラオケコーナーとか(笑)。みんなすごくいいテンションで」
八子「あんな場所ではなかなか歌えないから。気持ちよくなっちゃいますよね」
—— みんなで盛り上げようという、主体性も感じられますね。
百瀬「とにかくみんな楽しそうでしたね。お酒が出るイベントですけど、大きなトラブルや苦情などもなく、幸せな空間だったと思います。みんながその場を大切にしようとしているという実感がありました。
私も途中でやぐらに登って、踊っている方々にむかって『皆さん飲んでますかー!?』って聞いたら、みんな踊りながら『いえーい!』って(笑)。それが本当に嬉しかったですね」
渋谷民にひらかれた“自分たちのお祭り”に
——「BON DANCE」はまた来年も開催されると期待して良いでしょうか?
百瀬「もちろんです。ぜひ皆さんで協力してやっていきたいと思います。
今後は小さなお子さんにも楽しんでもらえるコンテンツをもっと増やしていくなど、より幅広い方々に来ていただけるようにしたいですし、また来場者数も多くなっていますので、安全面での配慮や警備、案内の強化などにも努めていきたいと思っています」
八子「渋谷の夏の風物詩になるといいですよね」
関原「そうですね。そしてこの動きが渋谷のほかのエリアにも波及していくといいですね。今はMIYASHITA PARKの上だけですけど、いつかBON DANCEは渋谷の夏の象徴のような存在になっていくんじゃないかと、それくらいの可能性と魅力が詰まっていると思います」
永山「お祭りはなによりもまず参加してくれる人ありき。やっぱり賑やかでないとね。BON DANCEを毎年楽しみにしてくれて、BON DANCEを目的に集まってくれる人たちを増やしていきたいですね」
百瀬「これを楽しみにしてるんだよって言ってもらえるようなお祭りでありたいですね。渋谷の皆さんが誇りに思ってくださるような、“自分たちのお祭り”にしていただけたら嬉しいです」