2024年7月より、西武信用金庫常務理事・川津美加子さんが渋谷未来デザインの理事に就任されました。ここでは、川津さんのこれまでの活動を振り返りながら、これからの渋谷未来デザインに寄せる期待などについて伺います。
取材・文:天田 輔(渋谷未来デザイン)
—川津さんはこれまで、西武信用金庫ひとすじ、でいらっしゃいますね。
はい、1985年入庫で今年金庫生活40年目になりました。営業店で窓口応対や内勤の役席などをしていたのは10年くらい、それ以外はずっと本部勤務が長く、人事研修や採用、事務指導部署などの内部管理の業務に就いてきました。2022年に役員に就任し、その10月に地域協創部という街づくり支援の新部署ができてからは、またお客様と直接関わる機会が多くなりました。
この街づくり支援の特徴的な商品に「地域みらい定期預金」というものがあります。これは寄付型の定期預金で、その満期利息の一部と当金庫からの拠出金を原資として、子育てや福祉、環境といった、地域に資する活動を行うNPO団体や事業者さまへ助成するというものです。
これを通じて、社会課題に取り組んでいるお客様とお会いする機会が近年非常に多くなり、やりがいも感じますし、皆様の熱量に刺激も受けていますね。
—川津さんがお仕事をされる上でこだわっていることはどんなことですか?
研修担当をしていた当時の理事長訓の一つに「自己のポジションでベストを尽くす」という言葉があって、それを長い間、仕事をする上での大切なこととして意識してきました。私が新人研修で新入職員に教えていたことですが、まずは自分自身がそうでなくてはと仕事をするうえでのモットーとなっていました。
—川津さんから見て、渋谷はどんな街ですか?
私は秋田の出身で、上京するまではやはり憧れの街でしたし、ファッションもグルメもエンタメも最先端で、訪れるたびに楽しい気持ちになる街でしたね。
社会人になって仕事をする上では、渋谷のお客様ともお話をする機会が多くあり、また、当金庫の融資商品に社会課題や地域課題などを解決するための事業者さま向けの融資があります。この商品の利用者の3分の1が、実は渋谷エリアの方たちだったんです。様々な社会課題を解決するための事業を起こす方たちがたくさんいらっしゃいます。行政だけではなかなか手が届かないような社会課題に気づき、事業化して、お客様に届け続けている方たち——たとえば、障害者の方と地域をつなげていくために自ら地域活動を積極的に企画開催し、今の就労移行支援事業ができる以前から就労支援に独自に取り組んでいた団体や、海外の資源を活かしたエシカルファッションの企画製造販売を行い、国内で販売して海外に製造するための雇用を創り出している企業など渋谷にはそういったパワフルな方たちがたくさん集まっている街という印象もありますね。
—そんななかで、渋谷未来デザインのプロジェクトで川津さんの印象に残っているものはありますか?
「みらいの図書室」はとても素晴らしいプロジェクトだと思っています。
※ 子ども第三の居場所「みらいの図書室」
https://mirainotoshositsu.jp/
学校でも家でもない、子どもたちが安心して過ごせる居場所を提供するプロジェクト。
様々な環境の子どもたちが集まり、賛同企業・団体が提供する体験学習プログラムなどを通して、生き抜く力を高めていくことを目的とした地域支援事業。
昨年は我々も体験プログラムを提供させていただきました。「My絆BOX」といって、災害が起きたとき避難時に持って出るボックスに何を入れたらいいか、自分で考えるという啓発プログラムを行なっている事業者さんをお招きして、実際にお子さんたちに体験し学んでもらいました。
自分にとって大事なものは何かを考えるきっかけにもなりますし、作ったボックスを家に持ち帰って、親御さんとも話をする。そういったことまで含めて大きな意味での学びの体験になっていたらいいなと思います。
—渋谷未来デザインのいいところはどんなところだと思いますか?
私の立場からすると、一般社団法人で黒字化できているという点は素晴らしいことだと感じます。私どものお客様でも一般社団法人の方々は多いですが、資金面ではみなさま苦労されている印象があります。そんななかで渋谷未来デザインには、応援してくださる会員企業の方々の熱意や期待がたくさん集まっているのだと捉えています。それは渋谷未来デザインとして、とても大きな強みだと思います。
また、スタッフのみなさんのエネルギーもいつもとても強く感じますし、これからも多様な方々の課題解決のために、多様な企業・団体が連携するハブになっていける組織だと思っています。
—最後に、理事就任にあたっての意気込みを聞かせてください。
西武信用金庫は渋谷エリアに6店舗あり、地域に根差しながらお客様に寄り添ってきました。このエリアには古くから、渋谷の街を元気にしようという思いの強いお客様がたくさんいらっしゃいます。たとえば、戦後直ぐに建てられた非常に贅沢なつくりの木造建築の料亭を壊さないという決断をしてご商売を継続し、文化的なイベントも定期的に発信されている経営者さまだったり、古くからご商売をされている経営者の方が、新しく渋谷エリアに入ってきた若い方を応援し一緒になってこの街の活性化に取り組んでいらっしゃる方々が大勢いらっしゃるんですね。
そうした私どものお客様のなかでも、まだ渋谷未来デザインが取り組んでいる事業についてご存知でないお客様、あるいは一緒になにかやりたいなと思っているお客様に、この輪を広げていきたいと思っています。
また、その先進的な取り組みを西武信用金庫の取り組みと掛け合わせることで、渋谷エリアだけでなく他のより広い領域に伝播していくことができるのではないかと考えています。