渋谷の街に関わり続けてきた40年—いま渋谷未来デザインが担うべき役割

事務局長対談

佐治康子(渋谷未来デザイン 事務局次長)
長田新子(渋谷未来デザイン 事務局長)

渋谷区役所で長くキャリアを重ね、渋谷未来デザインにも発足準備から携わってきた佐治が、今年度より事務局次長に就任しました。
あらためて長田事務局長から、これまでの歩みのなかで見えてきたことや、これからの渋谷未来デザインに対する思いについて、話を聞きました——

 

渋谷区役所〜渋谷未来デザイン、多様な仕事に従事してきた40年

 

長田 今日はあらためてよろしくお願いします。佐治さんは渋谷未来デザイン発足に至るまで渋谷区役所で長くキャリアを積んできたわけですけど、生まれも渋谷区なんですよね?

佐治 はい、生まれも育ちも恵比寿です。それから区役所に入ったのは…ちょっと不純な動機なんですよ(笑)。もともと広尾中学校のバスケットボール部で、卒業してからもOB会みたいなかたちでバスケをしていたときに、区役所の人たちも一緒に練習していて「渋谷区役所のバスケチームに入らない?」って言われて。それで試験を受けて渋谷区役所に入りました。公務員になりたいというより、そのときはバスケがしたかった(笑)。でもそれから定年退職まで勤め上げて、定年退職後も渋谷未来デザインにいます。ここまで現役で40年やってきましたね。

長田 区役所ではどんな仕事に従事してきましたか?

佐治 本当にいろいろです。当時の児童福祉センター、今のフレンズ本町での業務が最初で、それから教育委員会の社会教育課に移って、その後、保育、教育委員会指導室、防災、管財、と部署を移ったあと、最後は渋谷駅周辺整備課。そこで渋谷未来デザインの立ち上げ準備に携わって、そのまま今に至ります。

長田 佐治さんは今、渋谷未来デザインでも「みらいの図書室」プロジェクトで、最初の職場フレンズ本町にまた関わっていますけど、区役所でやってきたことが今も生かされてるっていうことってたくさんありそうですね。

佐治 そうですね。例えば、庁舎管理部門では、施設の管理もやっていたし、教育委員会では、学校のこともある程度わかってくる。……区役所は専門職の人もいますが、私のような一般事務職は部署異動で様々な職場に従事するんですよね。その先々で初めて知ることもありますが、そこで何年かすると専門的な知識や技術が身に付くこともあります。

 

区と企業をつなぎ、より良いアイデアを生んでいくために

 

長田 佐治さんから見て、渋谷未来デザインのこれまでの5年間ってどんなふうでしたか?

佐治 昨年度1年間は長田さんが事務局長で、次長もいなく、一人で大変でしたよね? スタッフみんなそうだと思いますけど、渋谷未来デザインって結構業務量が多く、大変じゃないですか。でもなぜか皆さん辞めたいと言わないですよね。自分から「もうやりたくないです」って辞めていった業務委託の人はいないんじゃないですか?

長田 確かに…。

佐治 渋谷未来デザインの仕事は、決まったことばかりじゃなく、いつも新しいことが起きて、「これ、どうしよう」って言いながら進んでいくこともいっぱいある。それがひとつひとつ成長につながっているんだと思うんですよね。だから、すごく大変だけど、区役所に戻ったら、きっと物足りなく感じるだろうなとも思っています。

長田 刺激的ですよね。でも、こういう組織だからこそ、みんな一緒に頑張ろう、っていう空気はあるし、ここでの仕事が社会にとってのプラスなのか、自分にとってのプラスなのか、もしくは両方なのか、必ずプラスになっていると思います。

佐治 だから、今、若くして入ってきた人は、ここが最後のキャリアじゃないので、ここでいろいろ学んだことがきっと次に生かせると思いますね。

長田 逆に、区役所にいたときと比べて、見えてきたことってありますか?

佐治 区役所の場合は、現場の職員が、現行制度と現実の乖離を実感し、こうあるべきと感じたとしても、現行制度上できないことがあります。渋谷未来デザインの仕事では、やりたいことのアイデアを出すことができます。まずはやれる方法を考えてみようという感じでしょうか。何もやらないうちに否定されるというようなことはないですよね。

長田 そうですよね。やりたいということがあれば、基本的には「じゃあ、どうぞ」みたいな感じ。やったらいいじゃん、って。

佐治 そういうことを区に代わってやるために私たちがいるのであるならば、区の皆さんももっとうまく私たちを使ってくれるといいですよね。そのためにもっと我々のことを知ってもらうことが必要ですね。

渋谷未来デザインの会員企業さんたちも、行政と共に有益な取り組みができることを求めていると思っています。我々がハブになって双方がうまく繋がり、より良いまちづくりができる。細かいお困り事でいいので区から渋谷未来デザインへ投げ掛けてもらえると、会員企業さんにとっても何かいいヒントになるかもしれないですよね。

長田 企業の力を使ったほうが解決することって、結構ありますからね。

佐治 予算が決まって、計画が決まって、それから相談するのではなくて、その前段階からコミュニケーションがとれているといいですよね。そういう動きって区役所だけではなかなかできないことだと思うんですけど、私たちが間に入って、会話ができていれば、様々な企業と意見交換ができますし、もっといいアイデアが生まれるのではないかと思っています。

長田 確かに。アイデアっていろんな視点があったほうがいいものが生まれますよね。

 

事務局次長としての抱負

 

長田 佐治さん、今年度からは事務局次長になったわけですが。

佐治 ついに、というか。今更、というか(笑)。

長田 どうですか?

佐治 私は事務局長が表の顔というか、事業推進をして、次長がもともと区の職員が得意としている部分を担っていくという役割分担にできたらいいなと以前から思っていました。だから、私は、発足から5年経ちましたがまだまだ組織基盤として足りていないところをきちんと整理していくのが自分の役目かなと思っています。
ルールを決めて縛るのではなく、みんながもっと合理的に仕事ができるように、組織の中を整えられたらいいなと思っています。

私がこうやって表に出るのはこれが最初で最後かな(笑)。私は裏方として、渋谷未来デザインのみんなや関わってくださる方々がスムーズに事業を進められるように注力していけたらと思います。

 

取材・文)天田 輔
写真)斎藤 優

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