「ALOHA MEETUP 2025」は、2024年に姉妹協定を締結したハワイ州と渋谷区が、それぞれの地域に根付く文化や価値観を尊重し、ハワイに伝わる「食への思いやり(Food with Aloha) 」の精神に学びながら、日本における食の未来のサステナビリティについて対話することを目的として開催されました。
渋谷のあたらしいスポットでもあるハワイアンレストラン・Tiki’s Tokyoを舞台に、食とサステナビリティに関する多様な視点を共有するトークセッションを展開。また、ランチプレートを楽しみながら行われたQ&Aセッションでは、参加者と登壇者が直接意見を交わす貴重な機会となりました。参加企業同士の交流の場も設けられるなど、有意義な午前のひとときとなった当日の模様をレポートします。
ALOHA MEETUP 2025
2025年9月10日(水) @ Tiki’s Tokyo
共催:東急不動産ホールディングス株式会社 / 一般社団法人渋谷未来デザイン / 一般社団法人SWiTCH
連携:東京都産業局
スピーカー:
Michael Miller(Tiki’s Honolulu本店 パートナーシップ代表)
萩原 利貴(ホノルルコーヒージャパン 代表取締役社長 兼 CEO)
佐々木 貴央(ロイヤルコントラクトサービス 代表取締役社長)
佐座 槙苗(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
冒頭、本イベントファシリテーターの佐座から、東京都が脱炭素社会の実現に向けて推進している「HTT」アクションについて説明しました。
HTTとは「電力をへらす(H)・つくる(T)・ためる(T)」の略であり、省エネの徹底や再生可能エネルギーの導入を通じて、地球温暖化防止に取り組むものです。省エネや再生可能エネルギー、脱炭素と聞くと「専門的で難しい」 「自分には関係ない」と感じる方も多いかもしれません。しかし実際には、電気をこまめに消す、使わない機器のコンセントを抜く、太陽光パネルや蓄電池を活用するといった、日常の小さな行動の積み重ねが大きな効果につながります。東京都では、そうした企業の皆さまに「実は身近で、すぐに始められることが多い」と気づいていただけるよう、さまざまな支援や啓発活動を行っています。
気候変動と外食産業の密接な関係
まずは、本日のゲスト Tiki’s HonoluluのMichaelさんから、サステナビリティに関する同レストランの取り組みについて、ハワイから海を超えビデオメッセージでプレゼンテーションをしていただきました。
Tiki’s Honoluluは約150名の従業員を擁する大型レストラン。社内のサステナビリティ推進にあたり、関心のある人材を発掘し、社員が自主的に活動を企画できる仕組みを導入しています。さらに、鮮度とコストの両面から可能な限り地元食材を購入するとともに、グラスの再利用やテーブル・椅子の修繕など、資源の有効活用を実践しています。

そして、会場にて登壇のお二方からもそれぞれの取り組みについて紹介いただきました。
ホノルルコーヒージャパンは、原宿・銀座・麻布十番に3店舗を展開しています。ハワイ島に東京ドーム約8.5個分に相当する自社農園を保有し、コーヒー豆の生産を一貫して行っています。さらに、浜辺の清掃活動などの自然保護に加え、コーヒーかすを再利用した石鹸製造やエリンギの栽培・販売など、循環型のサステナブルな取り組みを推進しています。

ロイヤルコントラクトサービスは、今年設立75周年を迎え、空港事業や高速道路事業など、幅広い分野で飲食事業を展開しています。オーナーのご要望や施設特性を踏まえ、企画から運営までを一貫して担う総合的なサービスを提供している点が強みです。また、食品ロスや廃棄物削減の取り組みとして、食べきれなかった料理の持ち帰りを推進するなど、環境に配慮した活動も行っています。

続くトークセッションでは、いくつかのトピックについておふたりそれぞれの立場からの見解が示されました。
——『気候変動が外食産業に与える影響、食へのこだわり』
ホノルルコーヒージャパン 萩原社長
「飲食の業界において最も大切なことは、お客様に美味しいものを提供し、最後まで召し上がっていただくことです。そのためには、まず“味”の質を高めることが重要であり、食材の選定にも細心の注意を払う必要があります。さらに、お客様の嗜好を分析し、コストはかかりますが、店舗ごとにメニューを最適化していくことも、私たちに求められている取り組みだと考えています」
ロイヤルコントラクトサービス 佐々木社長
「私たちの掲げる3つの柱の1つに環境問題への意識があります。サステナビリティに関心を持つオーナーが増え、こうした取り組みは今や当たり前となりつつあります。サステナブルな活動は、それ自体が付加価値を生む時代になっていますが、“お客様に対してどのように付加価値を提供していくのか”が今後の重要なテーマだと考えています」
——『サステナビリティを普及させる人材育成』
ホノルルコーヒージャパン 萩原社長
「ハワイの外食産業は、日本に比べてサステナビリティの面で非常に先進的だと感じています。だからこそ、私たちはハワイの取り組みに学ぶことで、日本におけるサステナビリティの遅れを補うことができると考えています。先進的な知見を得るためには、実際にその場に赴き、体験することが何より重要です。そのため、社員をハワイに連れて行き、現地で見て、体験し、考える機会を設けています」
ロイヤルコントラクトサービス 佐々木社長
「サステナブルな取り組みは、1社だけで実現できるものではありません。関わってくださるすべての関係者の皆さまと協力しながら進めていくことが欠かせません。私たちは従業員教育にも力を入れており、実際に農作物の収穫の作業に参加してもらうことで、体験を通じて学ぶ機会を設けています。さらに、半年に一度『Rセッション』と呼ばれる従業員との対話の場を設け、先日は<サステナビリティ>をテーマに意見を交わしました」
ランチプレートを囲むQ&Aセッション・交流会
トークセッションの後には、会場から登壇者への質問や感想も寄せられ、活発なやり取りが行われました。参加者の皆さまには、Tiki’s Tokyo(ロイヤルコントラクトサービス)特製のランチプレートを楽しんでいただきながら、近くの席の方との交流も楽しんでいただきました。
参加者からの質問:1社でサステナビリティに取り組むことは難しいので行政が主導するべきだろうか?
萩原社長「コストもかかるので、法整備が必要になると思います」
自治体関係者「自治体としてできることは限られているため、財政的にも余裕のある都や国が主導していただきたいと思います」
参加者から質問:サステナビリティの取り組みを多方面でやってく上で優先順位は?
萩原社長「啓発活動に関する依頼は全て受けるようにしています」
佐々木社長「会社として取り組む姿勢があることを見せる努力をしています」
おいしいランチを楽しみながら、笑顔あふれる和やかな場となりました。
Q&Aセッションのあとは登壇者を交えて参加者の皆さんとの交流会となりました。
最後に、おふたりからメッセージをいただきました。
ホノルルコーヒージャパン 萩原社長
「脱炭素・カーボンニュートラルは、いまや企業にとって“日常的な取り組み”が必然の時代。今回の機会を通じて、皆さまと考えや想いを共有できることの大切さを改めて感じました。企業の個別の挑戦は進んでいる一方で、まだ“企業間の連携”には課題が残っています。だからこそ、一つの出会いや繋がりから新たな連携を生み、未来へ向けたムーブメントを起こしていきたいと思います」
ロイヤルコントラクトサービス 佐々木社長
「当社のサステナビリティへの取り組みは、まだ始まったばかりではありますが、日本においても企業経営において持続可能性は欠かせない要素であり、今後ますますその重要性が高まると確信しております。私たちが取り組むべき課題は、会社として明確な方向性を定め、共に働く仲間と理念を共有し、意識を高めながら課題解決に向けて努力することだと考えています。未来を担う子どもたちに、私たちの想いをしっかりと伝えられるよう、企業としての責任を果たし、今後も積極的に取り組んでまいります」
ハワイと渋谷という地域を繋ぎ、「食」を通じてサステナビリティを深く考える、実り多い対話の場。登壇者のみならず参加者の皆さまの知見や関心が交差するなか、持続可能な社会を築く上で企業間の連携が不可欠であることも感じられたのではないでしょうか。このひとときで育まれた「Food with Aloha」の精神が、これからの社会に新たな価値を生み出し、食と環境に配慮した豊かな未来を創造するための継続的な対話へと繋がっていくことを期待します。