渋谷から始まる“母の健康”の新しい文化──「母のウェルネスの日」記念日制定式レポート

レポート

2025年5月、渋谷未来デザイン主催による「母のウェルネスの日」記念日制定式およびトークショーが開催されました。
この取り組みは、母の日を“お母さんの健康を考える日”として社会に根付かせようとする新たなムーブメントです。多忙を極めるお母さんたちの健康を、家族で見つめ直すきっかけをつくることを目的に、11の団体・企業とともにスタートしました。

 

“母の◯◯の日”記念日制定式
母の日に“ウェルネス”という贈り物を

式の冒頭、渋谷未来デザイン 金山が「母の日を、健康について語るきっかけにしたい」と語るとおり、このプロジェクトの背景には、育児・家事・仕事の狭間で、自分の健康に目を向ける機会を持ちづらい女性たちの現状があります。とりわけ30代女性の健康診断受診率の低さや、正規雇用外の立場にある母親たちの“見えない健康リスク”が、渋谷区の調査で明らかになっています。

金山は「母のウェルネスの日」を「パートナーや子どもたちも一緒に、お母さんの健康を考える契機にしたい」とし、今後、渋谷から全国へ“母の健康を社会全体で支える文化”を広げていく意志を語りました。

今年は初年度の取り組みとして、賛同する企業・団体と連携した5つの「母の○○の日」が制定されました。いずれも母の日と同じく、5月第2日曜日が記念日とされています。

 

今回制定された『母の○○の日』(カッコ内はパートナー企業・団体)

・母のウェルネスの日 (一般社団法人渋谷未来デザイン)

・母の血流の日 (株式会社花王 めぐりズム)

・母の歯の日 (株式会社花王 ピュオーラ)

・母の肌の日 (株式会社 ファンケル)

・母の自分らしさの日 (わたしたちのウェルネスアクション)

 

定期的な健康診断の受診などはもちろんですが、大切なのは日々の暮らしの中で、”自分のからだやこころに目を向けること”です。
このプロジェクトでは、日頃は意識が向きづらいお母さんたちの「からだやこころの健康」に、ご自身はもちろん家族や周囲の方々が意識を向けるきっかけになることを目指しています。

 

渋谷区副区長・松澤香さん
「私自身も母であり、また母の健康を案じる娘でもあります。もともと弁護士という職業柄、業務委託契約なので健康診断を受ける機会が少なく、30歳のときに自費で人間ドックを受けた経験があります。結果的に病気を早期に発見でき、出産にもつながりました。健康を“贈る”という文化が、この取り組みから育まれていくことを願っています」

 

渋谷区教育長・伊藤林太郎さん
「子どもたちが自分や家族の健康を見直す機会は意外と少ないものです。だからこそ、母の日に“お母さんの健康”に目を向ける習慣ができれば、家庭内のコミュニケーションも変わるのではないでしょうか。遅く帰ってくるお母さんを心配している子どももいると思います。このプロジェクトが、優しい言葉をかけるきっかけになると嬉しいです」

 

渋谷女子インターナショナルスクール 校長・赤荻瞳さん
「私は学校で母親のような存在として生徒と接しています。今回のように“母の健康”に光を当てるプロジェクトに参加できてとても嬉しいです。SNSや教育活動を通じて、渋谷から温かな連鎖が広がっていくよう努めていきたいです」

 

 

制定式に続いて行われたトークセッションでは、「血流」「歯」「肌」「自分らしさ」という4つの視点から、各企業と行政・教育関係者が“母のウェルネス”について語り合いました。

 

血の巡りを整えることは、生きるリズムを整えること
──「母の血流の日」

花王の「めぐりズム」は、血流と自律神経のリズムを整えることをコンセプトにしたブランドです。花王 パーソナルヘルス事業部の畑雄貴さんは、「温かさを届けることで、お母さんたちがリラックスできる瞬間を持てたら」と話しました。

松澤副区長は、「この年になると“血の巡り”の話ばかりしています(笑)。ヨガやストレッチなどで血行を整えることが、今、私の周囲でもブームになっています」と自身の実感を交えてコメントしました。

 

歯磨きは、頑張らなくていい
──「母の歯の日」

ピュオーラを担当する花王の鈴木博之さんは、「忙しいお母さんたちは、“ながら磨き”をしている方が多い。そうした生活習慣に寄り添う商品開発をしています」と語りました。

伊藤教育長は、「子どもたちの虫歯はこの20年で激減しました。親が子どもの歯を気にかける流れが、今度は子どもが母の歯を気にかける循環になってほしい」と期待を込めました。

 

肌は、心とつながっている
──「母の肌の日」

ファンケルの清水仁美さんは、「肌、体、心はつながっています。忙しくて自分をケアしづらい30代~40代の女性に向け、無添加スキンケアや鉄分サプリなど“内外ケア”を提案しています」と紹介しました。

赤荻校長は、「授業で生徒たちが学んだスキンケアの知識をお母さんに伝えたり、親子でスキンケアをする時間を持つのも素敵です。私も毎年母に美容グッズを贈っています」と話しました。

 

自分らしさを、思い出す日
──「母の自分らしさの日」

渋谷未来デザインの長田は、「母親は、周囲のために自分のことを後回しにしがちです。そんな日常のなかで、年に一度“自分”に立ち返る日があることは、心の健康にもつながります」と話しました。

松澤副区長も、「“自分らしく”という言葉が自然にあふれる社会にしていくことが、行政の使命でもあります」と応じ、プロジェクトと渋谷区のビジョンとの重なりについて語りました。

 

 

また、渋谷を舞台にまちづくりやカルチャー醸成に尽力する立場から協力パートナーとして当プロジェクトに賛同した企業・団体からもコメントが寄せられました。

三井不動産株式会社 商業施設本部・星野瞳さん
「母の日をきっかけに“お母さん元気かな?”“健康診断受けてるかな?”と思う機会を、MIYASHITA PARKの来館者へも届けたい。若年層の来館が多い場所での展示やSNSを通じて発信していきたい」

 

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 渋谷事業本部・花野修平さん
「自分自身5歳と3歳の子育て中。共働き世帯の立場としてもこの活動に強く共感しています。渋谷から、代々木公園の隣接施設などを活用して今後もウェルネスイベントなどを展開していきたい」

 

株式会社B-connectLIFE TUNING DAYS 主宰・髙橋荘吉さん
「母の日を通して、自分自身にも目を向けるきっかけを持ってほしい。ヨガイベントのチケットをお母さんにプレゼントするきっかけをつくるなど、心と体の再調整を支援したい」

 

そして、若者世代を代表して渋谷女子インターナショナルスクールの在学生も登壇。

生徒代表 増田美海さん・春乃千歩さん

増田さん「私は、元気そうに見える母が難病を患ってしまったという経験をしました。みなさんのお母さんも元気に見せていてこっそり体の不調を抱えているかもしれない。このプロジェクトが、そうしたことについて話しやすくしたり、周囲が気づいて支えるきっかけになってほしい」

春乃さん「私は春から上京しました。実家のお母さんが元気にしているかな?と気になるけれど、急に元気?と聞くと逆に心配されそうで言いづらい。でも母の日のようなきっかけがあることで、自然に声をかけやすくなるのはうれしいです」

 

また、小学生の視点からのお母さんへの感謝の気持ちを、小学生雑誌メディア『Natuul』の専属モデル4名がビデオメッセージで届けてくれました。

『Natuul』専属モデル るみなさん・ラリッサさん・なゆさん・かんなさん

 

 

母の日という誰もが知る習慣にウェルネスという視点を加えることで、家庭内でも社会全体でも、自然と母の体調や心に意識を向ける空気が生まれます。それは、ありがとうの言葉やカーネーションの贈り物といった母の日の定番に、「気づき」や「気づかい」といった新たな文化を添えることでもあります。企業や地域が横断的に手を取り合い、“母の日=母の健康を想う日”という文化を育てていく。それを渋谷から全国へと波及させていく。そのための第一歩として、今後の展開にも注目が集まります。