「SHIBUYA Urban Farming Project」は、都市に住む私たちができることは何かを考え、渋谷界隈での農地の設営・運営支援や、地域団体との連携による食育活動、地域住民が参加できるイベントなどを行なっていくコンソーシアムです。
このプロジェクトでは、テーマ別に3つ分科会を組成し、各参画企業の特性を活かした活動をめざしています。今回行われたミートアップでは、分科会ごとに議論を深め、2025年度に具体的なアクションにつなげていくための話し合いの場が設けられました。
ここでは、各分科会の議論の様子を紹介します。
「SHIBUYA Urban Farming Project Meet Up」
<日時> 2025年2月10日(月)
<会場> キユーピー本社
グループ①「ファームと環境貢献可視化」分科会
<参加企業> ※順不同・敬称略
パルコデジタルマーケティング/東急不動産/PROTOLEAF/首都高速道路/大広/PLANTIO/キユーピー
<議論の概要>
目的は、アーバンファーミングを通じた環境貢献の可視化と、都市におけるウェルビーイング向上の仕組みづくり。各企業が持つデータを連携し、気候・生物多様性・人の幸福度などを測定・評価するフレームワークの構築を検討。渋谷区の特性を活かし、データの可視化を通じた環境貢献の新たなモデルを創出することが目標とされた。
<議論の主なポイント>
【1】環境貢献の可視化
アーバンファーミングの影響を数値化するために、各企業が持つデータを活用。
バイオーム社の生物多様性データ、DAIKIN社の空調・気温データ、渋谷区の人流データを組み合わせ、都市環境の変化を測定。
例えば、アーバンファーミングによって気温がどれくらい下がったか、生物の多様性がどのように変化したかを可視化する方法を検討した。
【2】ウェルビーイング指数の活用
都市農のアクション(野菜の栽培・食事・コンポストなど)を指標化し、ウェルビーイング指数を算出する。
参加者がアプリに食事の写真をアップロードし、それに対する「いいね」などの反応を活用することで、ウェルビーイング向上の効果を測る仕組みを提案。
環境貢献が可視化されることで、市民の参加意欲を高めることが期待される。
【3】ゲーミフィケーション※と自治体連携
「ハチポ」のようなポイント制度を活用し、参加者のモチベーションを向上。
企業間のデータ共有と連携を強化するだけでなく、自治体・省庁との協力体制の確立も課題として指摘された。
※ゲームの要素をゲーム以外の場面に活用することで、利用者のモチベーションやエンゲージメントを高める手法
<今後の展開>
まずはデータ連携の枠組みを明確化し、どの指標を活用するかを具体化する。
渋谷区や関連自治体と協力し、実証実験の場を確保する。
アーバンファーミングを通じた環境貢献の可視化が成功すれば、他地域へ展開可能なモデルケースとしての発信も視野に入れる。
<結論>
アーバンファーミングによる環境貢献を可視化し、そのデータをウェルビーイング向上に結びつけることが重要であることが確認された。まずはデータ連携の具体的な枠組みを整理し、自治体や市民の参加を促進する仕組みを整えることが今後の課題となる。
グループ②「食と健康」分科会
<参加企業> ※順不同・敬称略
キユーピー、スマドリ、ABCサステナテーブル、トリデンテ、アオハタ、パルコデジタルマーケティング
<議論の概要>
目的は、渋谷発のアーバンファーミングを通じた食と健康における取り組みを創出すること。若者(Z世代)を対象とし、彼らと一緒に新たな文化や価値感を生み出して行きたい。現時点では具体的なアクションプランは固まっていないが、まずは活動の目的とターゲットを明確にすることが最優先とされた。
<議論の主なポイント>
【1】ターゲットの明確化
若者(Z世代)を主な対象とする。
多様性があり、先進的で、発信力・影響力のある「渋谷発」に意味がある。
次の時代を作っていく若者の意見を広く取り入れ、若い世代に響く活動内容や伝え方にすることが重要。
【2】活動のアプローチ
リアル(対面イベントなど)とデジタル(オンライン施策)の両面からのアプローチを目指す。
最初は小人数でも意思を持っていて、サステナビリティへの意識の高い若者をアンバサダーとするコミュニティ(10~30人程度)をしっかり作っていくべき。意思のある若者の活動を企業や団体が支援するようなかかわり方は、斬新でめずらしい。若者から若者へ次第に活動が共感となり広がっていくのではないかとの見解が示された。
<今後の展開>
ここで出た多様なアイデアを肉付けし、具体的な活動計画へと昇華させる必要がある。
最終的には、若者が中心となったアーバンファーミングコミュニティでウェルビーイングの仕組みを構築することが目標。
<結論>
まずはターゲットや活動の基本的な枠組みを明確にし、若者を中心とした強固な小規模コミュニティの構築からスタートすることで、ウェルビーイングにつながる長期的な取り組みを目指すという方向性が確認された。
グループ③「コミュニティと学び」分科会
<参加企業> ※順不同・敬称略
ABCサステナテーブル/東急不動産/大広/PLANTIO/キユーピー
<議論の概要>
目的は、アーバンファーミングを活用した食農教育を通じて、地域コミュニティの活性化を図ること。
2025年度に渋谷区の探究学習(シブヤ未来科)と連携し、「渋谷はたけLABO」として都市ならではの食農体験学習プログラムを実施する。
小学校または中学校を対象に、4ヶ月間のカリキュラムを組み、教育委員会と協力しながら導入を進める。
<議論の主なポイント>
【1】探究学習へのアーバンファーミング導入
渋谷未来デザインを中心に、渋谷区教育委員会に対し草案を提示済み。参加校の決定を待ちながら、各企業との連携方法を検討。
体験を通じて食と環境に対する子どもたちの関心を高めることが狙い。
【2】具体的な活動内容案
ABCサステナテーブル
オリジナルレシピ企画:小学生が考えたレシピを具現化し、グループ対抗形式で競争意識を促進。
調理サポート:「サステナ to Go」として、家庭科室を活用したクッキング体験を提供。
フードロス・プラントベースの活用:レシピ開発の際に、食材の無駄を減らし、環境に配慮した視点を取り入れる。
東急不動産
イモ緑化プロジェクト:屋上緑化を活用した省エネ・食農教育の融合。
収穫体験(時期が合えば実施)。
渋谷区と連携し、既存の探究授業との融合を検討。
活動のPR:東急不動産の媒体を活用し、取り組みを発信。
PLANTIO
固定種・在来種を活用し、“地域の味”を作る。
地域の遺伝的資源を守るとともに、子どもたちが地域への愛着を持つきっかけを作る。
都市部の子どもたちに、地元ならではの食文化の体験を提供し、長期的な記憶に残る学習を目指す。
<今後の展開>
参加校の確定と、具体的なカリキュラムの調整を進める。
各企業の役割分担を明確化し、効果的な連携を図る。
探究学習としての導入に向け、教育委員会とのさらなる協議を実施。
<結論>
アーバンファーミングを活用した探究学習を通じ、子どもたちに食と環境のつながりを体験的に学ばせることが重要であると確認された。
今後は、教育委員会との調整を進め、具体的な実施計画を確立することが優先課題となる。
24年の夏に発足した「SHIBUYA Urban Farming Project」。今回は組成された3つの分科会それぞれが目指すべき場所をあらためて見定め、次の具体的なアクションを模索・検討する場となりました。25年度はテストフェーズとして、具体的な取り組みにつなげるための大切な年です。全国をみてもまだ似たような事例は少なく、渋谷というまちを舞台に先進的で魅力的な事例をつくり発信していくことが重要です。
産官学民で強固に連携しながら、都市農のあたらしい未来を目指して、「SHIBUYA Urban Farming Project」の活動は続きます。