渋谷未来デザイン(以下FDS)と一般社団法人SWiTCHが中心となり、脱炭素社会、生物多様性などサステナブルをテーマに産官学で議論をしてきた「Carbon Neutral Urban Design(CNUD)」。回を重ねるごとに渋谷に拠点を構える企業からの常連の皆さまも増え、より闊達な議論とネットワークの形成による共創も生まれつつあります。
今回は「コミュニティ造り」をテーマに、東急不動産ホールディングス株式会社共催の元、企業のサステナビリティ活動をステークホルダーにいかに認知・理解・共感してもらうか、最終的に生活者の方々に選んでもらえるブランドとなるにはどうしたらよいか、についてセッションしました。
<Speaker>
本所 優(カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株) 蔦屋書店事業本部 代官山T-SITE/代官山 蔦屋書店 館長)
大竹 綾乃(株式会社プチバトージャパンCommunications Manager)
野木村 美里(株式会社シロ リテール部門 リテール統括 グループマネジャー)
佐座 槙苗(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
冒頭の挨拶で、東急不動産ホールディングス株式会社の松本さんから、「企業がサステナブルな取り組みをすることは当たり前になった今、顧客やステークホルダーにどのように発信していくかを皆様と一緒に考えるきっかけにしたい」と今回のMEETUP開催の目的が伝えられました。また、今回の会場のTENOHA代官山について紹介し、施設の建築や生物多様性、食品ロスからの再生エネルギー活用等、TENOHA代官山がサステナビリティの発信拠点になることを紹介しました。
第1部は、代官山 蔦屋書店(以下、代官山 蔦屋書店)の本所さんと株式会社プチバトージャパン(以下、プチバトージャパン)の大竹さん、株式会社シロ(以下、シロ)野木村さんの3名が企業の取り組みの紹介をしました。
代官山蔦 屋書店は、ライフスタイル提案型の書店として2011年に開業。7つの専門ジャンルを持つ空間やコンシェルジュの提案力を活かし、単なる書店にとどまらない価値を提供していることを紹介しました。近年は、地域や企業と協力したイベント企画を強化し、人がつながる場づくりを通じて、顧客体験の向上とコミュニティ形成を促進。その取り組みが、収益拡大にもつながっていることを事例とともに共有しました。
プチバトージャパンは、「自由・平等・持続可能」を理念に掲げ、フランス本国と連携しながらサステナブルなものづくりを推進していることを紹介。1893年の創業以来、品質・倫理的生産・長く使えるデザインを大切にし、日本市場でも環境配慮型製品を展開。消費者とともに、持続可能なライフスタイルを育むコミュニティの形成に力を入れていることを、具体的な事例を交えて話しました。
シロは、自然由来のスキンケア・フレグランスブランドとして、環境負荷の低減に取り組んでいることを共有。原材料の調達から生産・販売まで持続可能性を重視し、地域素材や職人との連携を深めることで、環境と文化を守るコミュニティの創出に貢献。ブランドを通じて、心地よい暮らしの提案を続けていることが語られました。
第2部のトークセッションでは、コミュニティ造りの「実践と成果」、「消費者の意識・行動変容を促す施策」についてお話頂きました。
「実践と成果」のパートでは、代官山 蔦屋書店が、専門スタッフがアーティストや作家と協力し、質の高いコンテンツを企画することで、来場者の体験価値を高めながら集客を図っていることを共有しました。成果の指標としては、来場者数や協賛の獲得を挙げ、収益性とのバランスを考えながら運営していると説明。コロナ禍を経て、事業の継続性をより意識し、長期的な視点でコミュニティの価値を高める運営へとシフトしていることを紹介しました。
プチバトージャパンは、全国の店舗で顧客とのコミュニケーションを大切にしており、特にセカンドハンド商品の回収を通じたエンゲージメント施策について語りました。回収時に、持ち主の思い出や次のオーナーへのメッセージを書いてもらうことで、単なるリユースにとどまらず、顧客同士のつながりを生み出す仕組みを構築。イベントの効果測定には、来場者数やLINE登録者数を活用しながら、ブランドと顧客の関係性を深める取り組みを進めています。
シロは、ブランド全体でコミュニティづくりに注力しており、特にスタッフの声を重要視していることを共有しました。ワークショップを通じて地域住民との対話を深めたり、子どもたちにキャリアモデルを提供するためのファッションショーを開催したりするなど、地域と共創する取り組みを展開。地域のリソースを活かしながら、対話と実行力を軸に、持続的なコミュニティの活性化に取り組んでいることを話しました。
「消費者の意識・行動変容を促す施策」のパートでは、代官山 蔦屋書店は、環境への取り組みについて「まだ十分ではない」としつつも、社内での議論や報告を通じて、現場の裁量を重視した施策をスピーディーに進めていると説明。大手企業でありながら、各店舗が自主的にイベントを企画・運営する体制が整っており、店舗スタッフの判断が重要な役割を果たしていることを強調しました。
プチバトージャパンは、子ども向けワークショップを通じた環境意識向上の事例を紹介。例えば、2023年に実施したビーチクリーンでは、砂浜の砂に含まれるマイクロプラスチックを発見し、参加者に大きな気づきを与えたと報告。また、アースデイや世界海洋デーに関連したイベントを社内でも実施し、社員の意識向上にも取り組んでいることを話しました。
シロは、顧客との対話を重視し、環境に配慮した取り組みに対するフィードバックを積極的に受け入れていることを共有しました。環境施策が評価される一方で、業務の中で矛盾を感じることがある場合は、その意図や背景をしっかり伝え、どのように改善していくかを顧客と共有することが重要と説明。持続可能なブランドづくりにおいては、顧客との信頼関係を深めることが不可欠だと語りました。
第3部は、対話形式の質疑応答を行い、会場に参加している方々の悩みを共有したり、登壇者から参加者に質問を投げかけました。
今回紹介された、三社三様の取り組み。業態や業種が異なる企業にとっても、これからのアクションや意識変革へのヒントを見い出すことができたのではないでしょうか。
CNUDではこれからも、同じ想いを持つ企業、団体、個人の輪を広げていきます。