アーバンファーミング=都市農を渋谷で実現!新プロジェクト「SHIBUYA Urban Farming Project」開始

レポート

「SHIBUYA Urban Farming Project」(以下SUFP)は、都市の緑地化・農地化を通して新たな食文化の実現を目指し渋谷らしいコミュニティを形成していくコンソーシアム。都市に住む私たちができることは何かを考え、渋谷区内での農地の設営・運営支援や、地域団体との連携による食育活動、地域住民が参加できるイベントなどを行なっていきます。

そしてこの度、同コンソーシアムのキックオフミーティングが開催されました。コンソーシアム誕生の背景や“アーバンファーミング(都市型農業)”の基礎知識と、それが社会にもたらすインパクトなどについてプレゼンテーションやクロストークが展開されました。

 

「SHIBUYA Urban Farming Project キックオフミーティング」
2024年8月21日 @GAKU

<スピーカー>
浜北剛(キユーピー株式会社 経営推進本部 サステナビリティ推進部)
加藤豊美(キユーピー株式会社 サステナビリティ推進部 環境チーム)
田中友規(東京大学 大学院工学系研究科 特任助教)
長田新子(渋谷未来デザイン理事・事務局長)

<トークセッション>
芹澤孝悦(プランティオ株式会社 代表取締役社長)
續木智志(キユーピー株式会社 サステナビリティ推進部 環境チーム)
田中友規(東京大学 大学院工学系研究科 特任助教)
長田新子(渋谷未来デザイン理事・事務局長)

 

“アーバンファーミング”とは、都市で野菜を育て、収穫し、食べるという、世界的に注目されている潮流で、地球が抱える温暖化問題、食品ロスや食料自給率の問題の解決、また、生物多様性やウェルビーイング、そして地域コミュニティの活性化などにも良い影響があると言われています。

「SUFP」の主催は、FDSと渋谷に本社に構えるキユーピー株式会社。渋谷だからこそ可能なアーバンファーミングの共創を目指し、二社で半年以上に渡り協議を進め、今回のキックオフに至りました。その思いを、FDSの長田とキユーピーの加藤さんはこのように語りました。


「今回のキックオフをきっかけに、今年度はその活動基盤をつくっていきたい。食を中心としたコミュニティについて、さまざまな企業のアセットとリソースを掛け合わせて考えていきます。ファームの推進、食育、勉強会の実施、イベントを4つの基本アクションとして、活動の拡大と定着をさせていきたい」(長田)


「我が社はこれまでもサステナブルな取り組みとして生物多様性保全の取り組みをしてきました(キユーピー株式会社「サステナビリティ」)。キユーピーは2019年に100周年を迎え、次の100年に向けて、より事業に密接に関わる生物多様性の活動をしていきたいと思っています」(加藤さん)

そして、渋谷でのアーバンファーミングの意義について東京大学の田中特任助教授が健康増進の視点から説明します。老年医学、健康マネジメントの専門家である田中さんは、“けんこう”を「健康」ではなく「健幸」と表現し、どうすれば健康に長寿に迎えられるのかを長年に渡り研究してきました。


「“健幸”は高齢者になってから意識するものではなく、幼少時から栄養、身体活動、社会参加の3本を一生かけてやっていかなければいけません。肉や魚でタンパク質を摂りながら、野菜も積極的に摂って、ジムでトレーニングをするのも良いですが、意識的に階段を使うとかこのセミナーでも座って聴くのではなく立って聴くとかですね(笑)、そういった積み重ねが重要になります」(田中さん)

人生100年時代において、アーバンファーミングとヘルシーエイジングはどのような関係にあるのか。続けて田中さんは、社会参加に焦点を当ててこのように説明しました。

「長年研究をつづけるなかで、どういう人から衰えていくのかについても少しずつわかってきました。もっとも重要な因子となるのが社会性の低下なんです。たとえば、転倒して動けなくなって社会参加ができなくなったり、1日誰とも喋らなかったりという状況に原因がある場合が多く、人・社会・地域とのつながりは非常に重要です。都市型のコミュニティ形成という観点からも、アーバンファーミングは非常に注目すべき活動だと考えています」(田中さん)

人口減少と少子高齢化が避けられない日本では、同時に都市における地域コミュニティの希薄化も起きています。都市部に住む高齢者が地域コミュニティから孤立することで、健康で楽しいライフスタイルを実現できない、そのような悪循環が生まれてしまうことも少なくないのが現状と言えるでしょう。

さらに田中さんは、100を超える自治体のデータの調査から、たとえば日頃から里山保全活動に取り組んでいる高齢者は、生きがいもコミュニティもあり、足腰もしっかりしている、という調査結果を示し、アーバンファーミングは温暖化、食、生物多様性の課題解決のほか、ウェルビーイングにもつながる活動になることをあらためて示唆しました。

 

 

キックオフイベントの後半では、プランティオ株式会社の芹澤さんをファシリテーターに、キユーピーの續木さんが加わり、東京大学田中さん、FDS長田とトークセッションを行ないました。

冒頭に芹澤さんはアーバンファーミングには「地域活性化」「食の教育」「生物多様性」「ウェルビーイング」「食料自給率」の5つの価値があると紹介し、世界の流れとして「Farm to Table」という考え方を紹介します。

「Farm to Table」は読んで字の如く「農場から食卓へ」という意味であり、地産地消を実現するために生産者から消費者に直接食材を届けるという考え方のことで、サステナブルやエシカルの文脈でいま世界中に広まっています。渋谷でとれた野菜を渋谷の飲食店で食べられる、それが当たり前の社会が、近い将来現実になるかもしれません。

 

續木さんも、過去にキユーピーが行なった「#シブサラ」の活動、そして、現在も行っている食育活動の発展にアーバンファーミングが必要不可欠であると発言。長田はこれまで説明されてきたようにアーバンファーミングはさまざまな社会課題に資する活動であるため、なんでもありのごちゃ混ぜ感が大事になりそう、と今後の展望を語ります。

 

質疑応答パートでは、多くの参加者が共感や今後の期待を述べ、「SUFP」の理念がしっかりと未来の共創の仲間に届いたことがわかるキックオフミーティングらしい象徴的なシーンとなりました。

 

都市型農業は近年増加しており、それは緑化計画や脱炭素とともに語られることが多かったものの、実は、生物多様性、食育、地域コミュニティ、ゴミ問題、ウェルビーイングといったさまざまな社会課題解決の糸口になり得るということ——そんな未来への可能性が多くの人の心にあらためて残った今回のキックオフイベント。「SUFP」の今後の活動にぜひご注目ください。

 

SHIBUYA Urban Farming Project
https://fds.or.jp/shibuya-urban-farming-project/