福岡と渋谷、産官学民連携の地域性とは?《産官学民共創フォーラム レポート①》

レポート

去る8月29日、地方自治体、企業、教育機関等を対象にしたイベント「産官学民共創フォーラム」が、渋谷未来デザインとコミューン株式会社の主催により開催されました。

「産官学民共創フォーラム」は、地方自治体、企業、教育機関など様々な団体の方が一堂に会し、多様な視点から社会課題に取り組むためのアイディアや地域の可能性を話し合い、連携を強化しアクションにつなげるためにはどうすれば良いかを全員で考えるイベント。
ここでは、当日の模様をレポートします。

「産官学民共創フォーラム」
https://co-creationforum2408.studio.site/

Special Session1
産官学民連携の普遍性と地域性:福岡の実践を通じて渋谷で考える

<登壇>
石丸修平さん(福岡地域戦略推進協議会 事務局長)
後藤太一さん(リージョンワークス合同会社代表社員)

福岡地域の行政と企業など産学官民で構成され、国際競争力の強化を含むさまざまな地域戦略の策定から推進までを一貫して行う「福岡地域戦略推進協議会」(FDC)。石丸修平さんは、その日本のおける産学官民連携組織の先駆けともいわれるFDCの現・事務局長。後藤太一さんは、FDC設立時の事務局長であり、その後、渋谷区の政策推進のためのさまざまなプロジェクトを行う「渋谷未来デザイン」の立ち上げと運営にも関わりました。

本セッションは、後藤さんが、石丸に問いを投げかけるかたちで、FDCと渋谷未来デザインの事例、福岡と渋谷の地域性などを比較しながら、産官学民連携のあり方を探る場となりました。

FDCは、2011年に設立。福岡市を中心に17の市や町が、都市圏という単位で広域連携をし、まちづくりをやっていこう、また民間企業など行政だけではないさまざまな担い手と一緒になって、都市の課題の解決や成長を目指そうとして立ち上げられたのだといいます。「地域の中心は福岡市。都市圏の経済の7割ほどが福岡市が起点になっている。ただ、通勤・通学など人の流動性、産業のあり方を考えると、ひとつの市という自治体単位では解決できない課題がたくさんあります。そこで、周辺の都市圏の自治体と連携し、広域でやっていく必要性からもFDCが生まれました」と石丸さんは話します。

会員はスタートアップから大企業、経済団体や大学、域外の 自治体も名を連ねます。特に初期の段階では、MICE(ビジネスイベントの総称であるMeeting:ミーティング、Incentive Travel :インセンティブ旅行、Convention:コンベンション、Exhibition/Event:エキシビション/イベントの頭文字をとった言葉 )に選ばれる基盤づくり など、ビジネスが起こるきっかけづくりを積極的に行い、近年は、会員のネットワークを活かし、オープンイノベーションから海外企業の支援までを、さまざまな領域で展開していると言います。

そのうえで大事にしているのは「政策と連動した戦略政策を立て、しっかりと実行、実装していくこと」と石丸さんは強調します。

スタートアップも多い福岡地域。特に福岡市は、FDCと共同提案のもと「国家戦略特区」の選定を獲得。大胆な規制緩和を含め、スタートアップが新しい考え方や価値観を事業に落とし込めるような環境づくりを、FDCが政策と連動して行うこともあるそうです。

規制緩和の一例を挙げれば、オンライン診療。「コロナ禍以降、世の中で聞くようになりましたが、実は、福岡市では、FDCの提言で、オンラインでの服薬指導に関する規制緩和を提案し、コロナ前から できるようになっ ていました。その後、 3密やディスタンスが問題化されたときに、厚労省がこの 規制緩和 を 全国展開したという経緯があります」(石丸さん)

後藤さんから石丸さんへの問いは、「政策との連動は大事。渋谷だったらどうしたらいいか?」また、渋谷と福岡における環境や都市機能の集中度、人口規模、人の流動性を含めた、プロジェクトのやりやすさ、コミュニティの違いについて触れながら、「公共と民間では、意思決定のプロセスやそのスピード感、価値観も違う。どう同じ方向に向かわせるか?」「組織において、持続性と新陳代謝はどう成立する?」

なお、石丸さんも「自分も含めて新陳代謝は必要 」と言い、FDCが軌道に乗り、マクロな視点を持って「産官学」連携で様々な成果を出せるようになってきた 今、次に事務局長になるべきは( 自分のようなキャリアを持つ人材ではなく)残された「民」との連携、例えば市民コミュニティを醸成できる人だと提言します。

「市民コミュニティ」という言葉を受け、後藤さんも「産官学民で、実は民がなおざりにされがち。特に産官連携は相当程度、さまざまな都市で進んでいるようには見えるけれど、市民との関わりは、見えにくい」。その上で、「どう変わっていくべきか?」

石丸さんは「まちづく りのなかに市民の方々の思いや活動がもっと滲み出る環境をさらに作っていくべき。すでに、福岡市では市民の方々の声をたくさん集めて、声そのものを政策の場に届けるようなことも行われて いますが、より一層市民が参画できる 活動やスキームが必要だと思うのです」。そしてこう続けます。「公共は基本的に市民がベースにあるはず。官と民をあえて分けて、(産官学民)のうち民を四つ目のステークホルダーとして定義していることについても、改めて考え直すべきだとも思います」

アーカイブはこちらよりご覧いただけます。
https://commune.co.jp/seminar/20241007_6619/