道路はだれのもの?
ケンケンパ、ゴムとび、メンコ、ビー玉。
かつて、「みち」や「空き地」では、子供たちが遊び、それを見守る大人の眼と共に、人間を主役とした「まちの日常」の景色がありました。しかし、経済発展とモータリゼーションが進み、車両のための道路ネットワーク整備優先の施策が長く続きました。
渋谷区では
他方、末端の自治体では、歩車共存を目指し、車の速度を抑制するコミュニティ道路の手法が試みられ、渋谷区でもいくつかの散策路ルートが整備されました。その後、公園通り、井の頭通り、原宿駅前通り、桜坂で、車線数を減らし、車道を狭めることで歩道を拡幅するとともに、交通需要マネジメントを踏まえた荷捌き車両の路上停車枠整備や駐車場地域ルールにより、歩行環境を改善し、人間中心の面的なまちづくりが進められています。
これからの道路、公共空間は
近年、環境や経済、健康、人の繋がり、地域文化創造などをキーワードに、車に占領された道路空間を人間に取り戻す取り組みが世界の先進都市で進められています。ニューヨークのタイムズスクエアを歩行者空間に取り戻したことでも話題になった、ジャネット・サディク=カーンの著書「ストリートファイト」はようやく昨年日本語版がでたところ。来日の際は、長谷部区長とのまち歩き、意見交換がおこなわれ、渋谷未来デザイン(以下FDS)も同行しました。
コロナ禍で問われるニューノーマル
現下のコロナ禍においては、ソーシャルディスタンス、安全を求め、道路、公園などオープンスペースの重要性が再注目されることになりました。日本においてもコロナ対策として期間限定の飲食店テラスの道路利用が認められ、その後、道路を交通機能だけでなく滞留、交流機能を加味した「ほこみち」制度への本格移行を国交省が促しています。
また、国交省では、官民一体となって交流・滞在空間の形成を促し、イノベーションやサードプレイスの創出が期待される「まちなかウォーカブル」を推進しています。そして渋谷区も「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりを目指し、ウォーカブル推進都市に名乗りを挙げています。
今後、都市再生特別措置法に基づく都市再生整備計画に「まちなかウォーカブル区域」を位置付けた場合、歩行者滞在空間の整備が交付金で支援されるとともに、民間事業者による民地部分のオープンスペース化や建物低層部のガラス張りなどが、補助金や固定資産税・都市計画税の軽減措置で支援されることが可能となります。
FDSの取り組み
こうした背景も踏まえ、FDSは研究事業として、公共空間の利活用にローカルビジネスやストリートカルチャー等が関わる仕組みをつくり、地域の皆さんや企業のビジネスチャンスを拡大することも目指しています。これまで、明治大学建築・アーバンデザイン(佐々木宏幸)研究室 との共同研究により、道路を大中小のスケールごとに研究、主に次の4点を進めてきました。
・渋谷駅周辺公共空間ビジョンver.1.0(中間とりまとめ)発表
・コロナ特例道路占用について宮益坂でボラサイト実装、調査実施
・SIWトークセッションでは、行政、地元商店街、大学、専門家と今後の公共空間の在り方の意見交換
・宮益坂の将来のストリートスケープ「シブヤ・ゲートウェイテラス」の提案
現在は、主として渋谷区による再整備が検討されている宮益坂に対象を絞って人中心のストリートへの再編と利活用のあり方を検討しています。
誤解を恐れず今後の意気込みを書けば、時代のニーズに合った可変的な公共空間の利活用には、それぞれの場所性を大切にしながら、道路と沿道施設の連携強化によるアクティビティを拡大し、道路上でも金を生み出し、道路整備、維持や地域価値向上に還元するモデル開拓が必要と考え模索しています。道路の空間構成は、その空間で誰が何をするのかとセットでデザインしていくべきものです。まちの将来像や取り組みの方向性を地域と関係者が共有し、やりたいことを確実に進めていくため多様なプレイヤーの参画と試行が必要です。このため、法制度が完全整備される前であっても、道路利活用の新しい取り組みを実験としてスタートしていくべきと考えています。
渋谷を世界最前線の実験都市として企業、地域の皆様と共に、多様なアプローチで可能性を開拓していきたいので、公共空間利活用研究へのご参画をお待ちしております。
※参考
渋谷駅周辺公共空間ビジョンver.1.0(中間とりまとめ)
渋谷駅周辺公共空間ビジョン Ver.1.0|中間とりまとめ – 一般社団法人渋谷未来デザイン (fds.or.jp)
ストリートデザインガイドライン 国土交通省HP
街路・連立・新交通:ストリートデザインガイドライン – 国土交通省 (mlit.go.jp)