街づくり/コミュニティづくりの視点にたったスタジアム構想を
2018年9月13日(木) 、ソーシャルイノベーションウィーク渋谷2018のMEET UPプログラムとしてイベント「都市とスポーツとエンタテインメントの未来」を実施しました。
登壇者・第一部
- 一般社団法人 日本トップリーグ連携機構 代表理事 会長 川淵 三郎
- 株式会社ディスクガレージホールディングス グループ代表 / 一般社団法人コンサートプロモーターズ協会 会長 中西 健夫
- 坪田塾塾長 坪田 信貴
- 株式会社ロフトワーク 代表取締役 / 一般社団法人渋谷未来デザイン フューチャーデザイナー 林 千晶
- サッカー元日本代表 福西 崇史
登壇者・第二部
- 追手門学院大学社会学部准教授 / 株式会社スポーツファシリティ研究所代表 上林 功
ファシリテーター
- 渋谷区観光協会 代表理事 / 一般社団法人渋谷未来デザイン プロジェクトデザイナー 金山 淳吾
会場には多くの取材陣も集まる中、ファシリテーターの金山氏が登壇。スポーツとエンターテイメントの拠点でもあり、地域コミュニティの拠点、また防災拠点をも兼ねるスタジアムを代々木公園内に建設する構想「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA」が発表され、同構想をベースに各パネリストが意見を交わす場としてセッションは進行しました。
川淵氏は冒頭のスピーチにおいて「サッカーをやるだけでなく、そこに常に人が集える場所を目指すことが素晴らしい。なにより民間からスタジアム構想が持ち上がることがとても嬉しい」と熱い想いを語り、中西氏も「スタジアムを作るのではなく街を作るという考え方が重要」と同調、またエンターテインメントの見地から、コンサート会場が不足している東京の現状を挙げ、スポーツとエンタメの産業発展の為にこのスタジアムは理想形、官的な発想ではなく使い手に立った発想が必要」と話しました。
また福西氏は「選手が力を発揮するのに一番必要なのはサポーターとの一体感」として、地域コミュニティとの密接な関係の必要性を主張し、対して坪田氏は「“今のこどもたちは夢がない”と言われるが、それは大人がいきいきと働きこどもたちに“憧れ”を抱かせることが出来ていないから」と指摘、このスタジアムを拠点に街が活性化することで「憧れが生まれる街」になってほしい、と熱弁をふるいました。
そうした地域コミュニティにおけるスタジアムのあり方の議論のなかで林氏は「“機能”ごとに場を区切って考えるのは前世紀的。空間を区切らずにそこに集う様々な人々が関係し合うことで、皆が場に関わり、“当事者”になる。すると市民は誇りを持って自分たちでその場をより良く作り上げようとする」と、市民に開かれた場づくりの重要性を説きました。
また中西氏はドイツ・ドルトムントのスタジアム周辺を例に挙げ、サッカーの試合後に人々がレストランに集い、そこにはこどもも混ざり、いつまでも議論をする、そんな場にこそ“文化”が生まれるのだと述べ、やはり試合や興業のみに終始しない、街づくり/コミュニティづくりの視点、ひいてはライフスタイルの提案にまで至る視点が必要との見解を示しました。
そうした議論を経て川淵氏は最後に「“常識的な判断”をしようとするから世の中うまくいかない。“市民の為に”という考えを最低条件としながら、これまでにないような活動で今後も賛同を集めてほしい」とエールを送り、それを受けた金山が「これからも議論を繰り返し、実現したい」とあらためて奮起する姿が印象的でした。
その後第二部では、上林氏による、世界のボールパークの実例を紹介するプレゼンテーションが行なわれ、聴衆は、渋谷に生まれるかもしれない新たなボールパークを思い思いに想像しながら聞き入っているようでした。スタジアム構想を起点に、渋谷という街の全体的な未来像に思いを馳せる、希望と期待に満ちたイベントとなりました。