
最新の都市データの事例共有と一般社団法人渋谷未来デザインの会員間の連携を図るオープンな勉強会を開催しました。
「都市データ勉強会」は、一般社団法人渋谷未来デザインが主催でオンライン、オフラインのハイブリッドで年3回実施を予定しています。今回の「都市データ勉強会」では、都市が直面する環境課題を多角的に捉え、データを基盤とした課題解決の可能性について活発なワークショップが行われました。
開催概要
「都市の暑さにデータで挑む!」
2026年7月15日(水)@渋谷区立商工会館
開会挨拶
開会にあたり、2024年に始動した「SHIBUYA GREEN SHIFT PROJECT」を例に挙げ、データを利活用した暑熱対策の重要性を改めて強調しました。
以前は都市空間における「暑熱リスク」への意識がまだ高くはなかったものの、継続的なデータの蓄積と可視化が、都市政策に大きな示唆を与えつつあると語り、「今後も都市データの収集と活用を加速させたい」と意気込みを示しました。
基調講演
芝浦工業大学建築学部建築学科 准教授の本多先生に「都市環境とアカデミア視点」をテーマに講演いただきました。
人が集まる「点(クールスポット)」を、単に涼しくするだけでなく、その場所自体のイメージ・価値を引き上げる拠点(プレイスブランディング)とし、拠点同士が人の行動でつながり「線」となり、やがてエリア全体の「面(体験)」になっていく。これを繰り返すことで人がその街を「また来たい」「好き」と感じるようになることを目指すことが理想という暑熱対策とまちづくりの複合的な視点での助言をいただきました。
とある地域での実証実験を例に挙げながら、ベンチ×屋外ミスト×送風設備を用いた効果検証や、それに基づく先進的な空間デザインについてもご紹介いただきました。

企業からの取り組み共有
一般財団法人日本気象協会からは、現在の熱中症を取り巻く状況や、東京都との連携事業が共有されました。熱中症による救急搬送者数や死者数が年々増加している中で、2025年6月には、職場での熱中症対策を事業者に義務付ける法改正が施行されたという、対策の緊急性を示されました。また、2024年からは東京都と協定を締結し、「熱中症ゼロへ」アクション事業を推進。積極的な啓発活動や、「東京都 暑さマップ」という都内全域のWBGT(暑さ指数)を1kmメッシュで可視化したサービスの紹介をいただきました。サービスの中では、1時間ごとの変化に加え、最大1週間先までの予測を表示でき、マップ上にはクールスポット/クーリングシェルターの位置情報も表示され、現在地から近い施設を確認できるということで、参加者からの多くの関心を集めました。
また株式会社ウェザーニューズからは、自社の天気予報アプリや気象ビッグデータ・クラウドソーシング気象情報についてご紹介いただきました。アプリユーザーが「今暑い」「今雨が降ってきた」等をリアルタイムに投稿する「観測網」の仕組み(1日あたり約20万件の投稿)があり、これを予報の補正に活用し、従来は目視・人手で対応していた投稿の解析を、直近1年ほどでAI活用に大きくシフトしているとのこと。また、SHIBUYA GREEN SHIFT PROJECTにて開発した「熱中症ハザードマップ」とも、データを掛け合わせることで、「静的なハザードマップ」を動的なマップに進化させ、当日・現在地ベースで「今どのエリアが危険か」を可視化できるのではという提案もいただけた。さらには、気温34℃を超えると「アイス」より「かき氷」への需要シフトが見られるといったようなデータや、アプリユーザー(数千人規模が常時アクティブ)間の平時・災害時でのコミュニティ的なやり取りも発生しているとのことで、暑熱対策を想定していたものが販売戦略や防災、コミュニティ形成にも寄与することができるといった興味深い成果も語られました。

最後にダイキン工業株式会社からは、SHIBUYA GREEN SHIFT PROJECTの最新状況が共有されました。直近の主な取り組み・成果としては、一般社団法人渋谷国際都市共創機構の支援事業のもと、株式会社日建設計総合研究所と共同で、空調機データを都市データとして活用した「熱中症ハザードマップ」を開発したことで、今後は渋谷区や他都市のシティダッシュボードへの実装を目指しながら、クールスポットの最適配置への応用も行っていく都市計画への活用も提案されました。最近は横浜市などの他自治体からの、取り組みに関する問い合わせも増加してきており、今後は自治体・企業間連携や、データを重ねることで生まれる価値のマネタイズ/事業化について、参加者とのディスカッションを深めたいとして締めくくりました。

ワークショップ
後半は参加者がテーブルごとにグループディスカッションを行い、最後に各グループが簡易プレゼンテーションを実施しました。
発表では、パーソナライズ・レコメンドとデータの届け方、子ども・ペット向け「安全ルート」ソリューション、都市計画とデータ活用(移動・避難)、多様なデータソースと行動変容の設計、ゲリラ豪雨予測サービスなどに関する議論があがりました。中でも、暑熱対策とまちのインフラ活用の話題があがったグループでは、まちなかの道路灯・公園灯・電柱の設備にセンサーを組み合わせることで、気温・湿度・地表温度等のデータを面的に取得できる可能性を示唆し、公園での紫外線量の高さが、熱中症の既往がない人にも症状を引き起こすケースや、高齢者の外出時の熱中症リスクなどを踏まえ、街灯・電柱などの既存インフラ(台風情報の掲示等と同様の仕組み)を使って「この時間帯・この場所は涼しい」といった情報を通知するという発案をされました。
さらには、日除けソリューションの事例として、センサー付きの人工パラソルに加え、幾何学的な構造により木漏れ日のような効果を自然に作り出しつつ、通常の日除けより使用資材を削減できる手法を紹介いただき、日射角度の数学的分析を街路樹の配置等に応用することで、日陰の分散配置が可能になる可能性にも言及し、人通りのピーク時間帯と暑さのピーク時間帯が重なるタイミング・場所を特定し、そこに重点的に対策を投下することで、より効率的な日除けソリューションの整備が可能になるという提案で締めくくられました。


まとめ
本勉強会は、参加者一人ひとりが「都市の環境問題を未来に与する自分事として捉え、それらに少しでも寄与できるように共に行動する、データやサービスを活用して事業を共創する」きっかけとなる貴重な機会となりました。
データ、テクノロジー、そして人の知恵とつながりが、持続可能な都市づくりを支える原動力になることを、参加者全員が再確認する場となりました。

