
渋谷未来デザインと一般社団法人SWiTCHが中心となり、脱炭素社会、生物多様性などサステナブルをテーマに産官学で議論をしてきた「Carbon Neutral Urban Design(CNUD)」。CNUDが定期的に開催している「サステナビリティ共創MEETUP」は、環境に関する先進的な取り組みやアイデアが詰まった現場をガイドする交流セッションです。地域の未来を支えるために、行政と企業がどのように手を取り合い持続可能なまちづくりを実現することができるのかを、登壇者と参加者の皆さんで考えていきます。
第5回目の「サステナビリティ共創MEETUP」は、“脱炭素に向けた取り組み”をテーマに、(公財)自然エネルギー財団の高瀬様、(株)マルイファシリティーズの井波様、(株)コニカミノルタの岡本様にご登壇頂き、RE100等の脱炭素の国際イニシアチブの最新情報や脱炭素の経営戦略などについてお話しいただきました。
サステナビリティ共創MEETUP Vol.5 〜脱炭素社会編〜
2026年1月28日(水) @ TENOHA 代官山
<登壇>
高瀬 香絵((公財)自然エネルギー財団 シニアマネージャー(環境学博士))
井波 秀之((株)マルイファシリティーズ 企画本部 脱炭素推進部 部長)
岡本 照美((株)コニカミノルタ 機能材料事業部事業統括部調達部戦略調達グループ シニアアソシエイト)
佐座 槙苗(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
本セミナー開会にあたり、SWITCHの佐座よりCNUDの取り組みが紹介されました。CNUD(Carbon Neutral Urban Design)は、渋谷からサステナブルな価値観を発信するため、サステナビリティに関わる多様な分野の人々と対話を重ねる活動です。続いて東急不動産ホールディングスの松本様がTENOHA代官山を説明。同社は「WE ARE GREEN」を掲げ、全国6拠点のTENOHAを社会課題解決の場として活用。代官山ではイベント開催や屋上菜園、収穫物をカフェで使うなどの取り組みを行っています。

第1部では、今回のゲストスピーカー3名にご登壇いただき、各企業・団体が推進している取り組みについてお話しいただきました。

自然エネルギー財団は、独立したシンクタンクであり、すべて寄付金によって活動しています。一か所の資金源に依存しないことで、財団として主体的に取り組みたい活動を行うことができる構造を維持しています。高瀬さんは、気候変動を食い止めたいという思いから、 まずはエネルギーに着目して研究を続けています。自然エネルギーがもっと活用されるよう、具体的な目標を持って取り組むことを大切にしています。

丸井グループは小売りとフィンテックの二事業を展開し、「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブな社会を共に創る」ことを使命に掲げています。その実現には、インパクトと利益の二項対立を超え、両立させることが重要だと考えています。両者の両立により事業の継続性を確保しつつ、サステナビリティの実現につなげる方針です。さらに消費者への働きかけ方を検討しながら、多様な取り組みを進めています。

コニカミノルタは情報機器、ヘルスケア、産業用材料など幅広い分野で事業を展開するなか、エネルギー調達の立場から、電力・ガス由来のCO2排出量削減に取り組んでいます。2050年までに製品ライフサイクル全体でCO2排出量ゼロを目標に掲げています。RE100にも加盟し、2050年までに使用電力を100%再生可能エネルギー由来の電力へ転換することを目指しており、2024年時点で20.7%が達成されています。
第2部のトークセッションでは、国際的な環境イニシアチブの最新動向から、企業における脱炭素の実践、そして登壇者同士の質疑まで、多角的に議論が交わされました。
『国際イニシアチブの最新情報』のパートでは、佐座さんから「国際情勢の変化の中で、世界ではどんな動きがありますか?」という問いが投げかけられました。
これに対し高瀬さんは、「他国では再生可能エネルギーを増やす動きが見られる」としたうえで、CDPにおいても“実際にアクションが進むための改訂”が行われていると説明。制度や評価の枠組みそのものが、より実効性を重視する方向へと変化している現状を共有しました。

続いて、佐座さんから「丸井グループとして重視する点は?」と問われた井波さんは、「お客様・社員・将来世代にとって、RE100が良いものになるように取り組んでいる」とコメント。イベントなどの体験を通じて、環境への取り組みを“実感”してもらうコミュニケーションを重視している点を紹介しました。
また、「コニカミノルタさんとしては?」という問いに対して岡本さんは、同社の『エコビジョン2025』を「達成すべき目標」と位置づけながらも、顧客ニーズがまだ十分に顕在化していない中で、コストとCO2削減の両立に課題があると説明。そのうえで、現時点で着実に進められる取り組みとして、再生可能エネルギーに関する活動に力を入れていると語りました。

続く『脱炭素の経営戦略』のパートでは、各社がどのように社内外へ働きかけながら取り組みを進めているのかがテーマとなりました。
井波さんは、「失敗を恐れず、まずはやってみる」という姿勢を根底に置きながら、日々の行動がサステナビリティにつながっていることを社内外に伝えていると説明。あわせて、SNSも活用しながら認知の拡大を図っていると話しました。
岡本さんは、コニカミノルタが創業以来続けてきた環境経営を軸に、約80社との横断的な対話を通じて知見を共有していると紹介。スコープ1削減を中心に据えながら、課題解決と企業価値向上の両立を進めていると述べました。
さらに、佐座さんから「GHGプロトコルをはじめ国際的なルールが常に更新されるなか、どんな変化を感じますか?」という問いが投げかけられると、高瀬さんは、これまでの評価軸が<CO2削減>中心だったものから、<インパクト>重視へと転換しつつあると指摘。単にCO2を減らすだけでなく、その施策が生態系を含む環境全体にどのような影響をもたらすかが、今後より重要になっていくとの見解を示しました。

後半の『登壇者同士の質疑』では、各社が抱える実務的な課題について、より踏み込んだ意見交換が行われました。
井波さんから岡本さんへは、「社内の納得度を高め、全社で環境対応の力を伸ばすために、どんな手段を取っていますか?」という質問が投げかけられ、岡本さんは、環境ビジョンが全社に浸透しており、会社の方針は各事業部にも共有されていると回答。全社的な方針共有の重要性を示しました。
一方で岡本さんから井波さんへは、「店舗の従業員が、仕事を通じてサステナビリティに貢献している実感は、モチベーションにつながりますか?」と質問。これに対して井波さんは、現場では目の前の業務が優先されやすく、意識には個人差もあるとしたうえで、意識向上と日常業務の両立は今後の課題だとコメント。だからこそ、実感を持てる“体験の機会”が必要だという考えを示しました。

第3部は、参加者のみなさんからの問いをきっかけに、登壇者がそれぞれの経験や実感を持ち寄る話の時間。ここではやりとりの一部を、言葉を中心に紹介します。
<問> サプライチェーン化されている場合、自社だけでなく周りの企業をどう巻き込む?供給側メーカーとして何を期待する?
岡本さん「サプライチェーンの上流側の原材料メーカーが環境に優しい原材料を使用したとしても、その原材料の価格高騰から、お客様の手元へ届く際の価格も比例して高騰してしまいます。今はそのことに対する理解が社会的にありませんが、近い未来、そのフェーズが来ると考えます。いつでもそのニーズに応えられるよう準備を行っています。」
井波さん「中国・ASEANでCSR調達をした際、現地ではルール未遵守も多いと感じました。だからこそ法令順守を促すには、対話を重ねた交渉で信頼を築くことが重要です。一次データ提示が取引の鍵になると思います。」

対話の最後には、「将来世代が過ごしやすい社会を、連携してつくっていきたい」といった呼びかけもありました。異なる立場の参加者が、同じ悩みやヒントを持ち寄りながら言葉を交わす時間そのものが、次の一歩につながるきっかけになっていたように感じられます。
セッション終了後は登壇者も交えた交流会が行われ、立場や業種を越えたつながりが生まれる場となりました。


