この度、「渋谷区スポーツ推進計画」に基づいて、全ての人がスポーツに関わることができる社会を実現することを目的とした相互協力・連携を図る協定を、渋谷区と締結した日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)。
同リーグのチェアを務める髙田さんにあらためてお話をうかがいました——
女子サッカー界の発展を女性活躍社会のロールモデルに
——今回渋谷区と締結された協定は、渋谷区内でのスポーツ振興や女子サッカーの普及といったことだけに留まらず、それを通じて多様性のある社会の実現を目指すというところまでスコープに入ったものになっていますね。
髙田 いわゆる競技団体ができることとしては、渋谷区に関わる皆さんの健康維持だったり、スポーツを通じて生活を豊かにすることなどがあると思いますが、WEリーグが特徴的だと思うのは、ジェンダーの問題に取り組んだり、多様性のある社会・女性活躍社会の実現を推進しているところです。それについては渋谷区さんもすごく進んでいる部分ですよね。そういったことに関する取り組みを、スポーツ団体でありながら積極的に区と一緒に進めていけたらと思っています。
——たとえばWEリーグの設立意義には、「女子サッカーの発展」といった項目よりも上段に「日本の女性活躍社会を牽引する」ということが掲げられています。
髙田 日本の女子サッカーの競技人口は、男子の20分の1程度です。そんなサッカー界において女性がもっと活躍することは、女性が社会のなかで活躍することのロールモデルにもなるのではないかと思っています。
そのためにも、女子サッカーの社会的な位置付けを高めていきたいと考えています。
——今回の協定を通じて、これから起こしていきたい具体的なアクションはありますか?
髙田 たとえば渋谷区内でサッカー教室や、健康に関するイベントを行うといったところからのスタートだと思います。
あとは、7月から女子ワールドカップや、その後オリンピックもありますし、そういった機会の盛り上げを渋谷区と一緒に行なっていくことで、渋谷区の皆さんにとっては楽しくなる、元気になるイベントになると思いますし、私たちにとってはたくさんの応援をしていただける取り組みになるのではと期待しています。
また、私たちは毎年、多様性社会の実現に向けて、WEリーグに関わる人たちみんなでジェンダー課題などの社会課題について考え行動する「WE ACTION」という取り組みを行なっています。この「WE ACTION」を渋谷区の皆さんと一緒に行うということは、ぜひいち早く実現したいです。
「WE ACTION」の取り組みのかたちはいくつかありますが、代表的なものは「WE ACTION DAY」というものです。今シーズンまでは奇数の11クラブだったので、各クラブ試合がない日を「WE ACTION DAY」として、選手たちを中心に個々のクラブの色を出しながら、社会課題の解決に向かう企画を考えて実行しています。
来シーズンからは、全クラブの選手が集まって行う「ALL WE ACTION DAY」というものを計画していて、渋谷を舞台に、いろいろなステークホルダーの皆さんも集まりながら実施できたらと考えています。
渋谷の街から女子サッカーを盛り上げる意義
——そんななか、オフィスも渋谷にお引越しされたんですよね?
髙田 はい。これを機にさらに渋谷区さんや渋谷未来デザインさんと連携していけたらと思っています。
——渋谷未来デザインにはパブリックパートナーとして参画いただいていますが、渋谷未来デザインに対して期待していることはどんなことですか?
髙田 昨年SOCIAL INNOVATION WEEKに参加させていただいて、いろんな仲間と一緒に社会課題について考えていくということができる方たちなのだなと感動しました。それは、私たちがやりたいことでもあるので。
WEリーグは発足してからまだ、これから3シーズン目に入るところで、輪を広げていくフェーズでもありますので、共感できる仲間を増やしていくところを渋谷未来デザインさんとご一緒できたらいいなと思っています。
——渋谷という街自体に対してはどんな思いがありますか?
髙田 渋谷はすごく開かれた場所というか、自由な空間だと思っています。
以前、渋谷未来デザインさんの活動報告会に参加したときに、登壇者の方が「渋谷という街は、男性同士で手をつないでいても違和感がない街だ」というお話をされていて、すごいなと思いました。それって、私たちが目指している空間のあり方にもすごく近いなと。
サッカーをもっと気軽に、いろんな人たちで楽しんでいこうと感じてもらえることを目指していくなかで、「私たちは私たちのままであってもいいんだよ」というポジティブな空気をもっと渋谷からもらっていきたいし、それを渋谷の街からみんなで一緒に広げていけたらうれしいです。
——先ほども話題に挙がったとおり、7月20日からは女子ワールドカップが始まりますが…
髙田 渋谷でもたくさん応援してほしいですね。メディアではまだまだ女子サッカーを取り上げてもらえることが少ないのが私たちの悩みですが、サッカーの国際大会の日には渋谷の街がすごく盛り上がりますよね。今年は女子サッカーのワールドカップもあるということを、もっとたくさんの人に知ってほしいです。
——もちろんマナーも守りながらですが、渋谷の街が女子サッカーで盛り上がっているところを見たいですね。
髙田 そしてそのときに、やっぱり多様性や女性の地位向上について考えるひとつのきっかけにもしてもらえるとうれしいです。
——そうですよね。ただワイワイ楽しむだけではもったいないです。
髙田 日本の女子がワールドカップで優勝したのが2011年なので、そこからもう12年経っていますが、世界では今でもとてもリスペクトされているし、強いんです。でもヨーロッパでは今とても女子サッカーが盛り上がっていて、選手たちの社会的な地位も上がってきて、それでさらに強い選手たちが育ってきているという面もあります。逆に言うと、社会の変化によって彼女たちを強くすることができるということだと思います。だからぜひ、なでしこジャパンのみんなを応援してほしいと思っていますし、それこそまさに渋谷の街に対して期待していることでもありますね。