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2020.02.13
都市公園とパブリックスペースの未来――SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第10回クロストーク【レポート】

日時:2020年1月28日(火)
会場:EDGEof
登壇:
笹原優子さん(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 グロース・デザイン担当 担当部長)
水口哲也さん(エンハンス代表/シナスタジアラボ主宰/エッジ・オブ共同創業者兼取締役CCO)
吉村有司さん(建築家/東京大学先端科学技術研究センター特任准教授)
<ファシリテーター>
金山淳吾(一般社団法人 渋谷未来デザイン 理事/一般財団法人 渋谷区観光協会 代表理事)


代々木公園エリアに3万人収容規模のスタジアムパークをつくる「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA」構想。これまで9回に渡り、さまざまな有識者を招いてのクロストークや、一般参加者のみなさんと共に公園のあるべき姿を考えるワークショップと、構想をより深く意義のあるものにするためのイベントが行われてきました。
今回はその第10回目。スタジアム・公園空間やその周辺のパブリックスペースが、10年後20年後にはどのような姿であるべきか思い描き、学ぶ機会として、市民がワクワクする未来都市について、専門家の皆さんのお話を伺う場となりました。

まずはファシリテーターを務める金山からあらためてスタジアム構想の概要が説明されたあと、渋谷未来デザインのプロジェクトデザイナー 金行美佳から、昨年行われたヨーロッパ各都市のスタジアム視察の報告が行われました。

ヨーロッパの個性的な6つのスタジアムと、それぞれの街との関わりを視察した一行。
スペイン・バルセロナの「カンプ・ノウ」、ベルギー・シント=トロイデンの「スタイエン」、オランダ・アイントホーフェンの「フィリップス・スタディオン」、アムステルダムの「ヨハン・クライフ・アレナ」、イギリスの「ロンドン・スタジアム」、そして同じくロンドンの「トッテナム・ホットスパースタジアム」。いずれも街とともにあるスタジアムでそれぞれにシビックプライドを醸成する役割を担っていることは共通項であるようでした。
地域のコミュニティとなる場であり、またサッカーの試合のない日にはビジネス利用や宿泊施設として使用されるなど、市民のために有効に活用されるための事例が紹介されました。

もし渋谷という都市にスタジアムパークがあったなら。我々市民にとってどんなパークであることが大切なのでしょう。今回は特に「都市の公園」「都市のパブリックスペース」という観点でのパネルトークが、続いて始まります。

金山は現在の代々木公園の課題として、場所や時間帯によって「賑わいと閑散の差が激しいこと」を挙げながら、ひとつめのトークテーマとして“公園空間が市民に提供する価値とは?”という議題を提示。

吉村さんは、バルセロナの街で20年間生活した経験から、その答えは「楽しさ」だと語ります。
「カンプ・ノウは、スタジアムにいる9万人に加えて、周囲のたくさんのバルでたくさんのお客さんがTV観戦していて、ゴールが決まると街全体がどよめく。それが生活の質を上げる“楽しさ”なんです」

水口さんは「例えばアムステルダムの真ん中に緑あふれる公園があるが、市民はバーベキューをやったりして使い倒してます。でも日本の公園には規制が多い。なにかをしてはいけないということが常につきまとう」と指摘。
対して吉村さんも「ヨーロッパでは、パブリックスペースは市民が育て上げるものと認識されている。公園は住民の居間の延長という感覚があります」と同調。公園空間から市民が価値を得るには、市民がイニシアチブを持って空間をより良くしていこうとするスタンスが必要なのではという解が浮かび上がってきます。

続けて金山が提示した “公園空間の文化的ポテンシャル”というトークテーマにおいても、笹原さんがこう話します。
「オランダでは街づくりのイニシアチブが市民に明確にあり、市のウェブサイトに市民がそれぞれに提案をできるようになっている。つまり市民は税金を使い街を改善すること参画できるという仕組みが整っています。それが成功体験になって、市民による街づくり、公園空間づくりは連鎖していきます」
それこそが、公園から出発する街づくりという文化創造のポテンシャルと言えるのかもしれません。

そんな文化的な側面がある一方、経済的な側面で考えてみるとどうでしょう。続いてのテーマは“公園空間の経済的ポテンシャル”。
「シンガポールではF1をやったあとにその場で音楽イベントが行われていた」と笹原さんが例を挙げます。「そうやって興奮が重なり、ばか騒ぎができるようにイベントを重ね合わせると、経済的な効率化もできます」
しかしここ日本、特に渋谷においては、広い空間というのは限られているというのも現実。金山は「バーチャルな空間だったらどうでしょう?」と水を向けると、水口さんはバーチャルには可能性があるが、実際にその場所を訪れるということが大事、と指摘。

「10年後にはきっとARグラスのようなものを身につけるのが普通になっています。渋谷を訪れれば最先端の超現実技術が楽しめるような、いわば“世界の渋谷”になっていないとだめ」(水口)
「XRで“よりリアルに”というよりも、“よりおもしろく”なっていくのが、渋谷っぽいのでは?」(笹原)

経済的な側面を考えるとやはり念頭に浮かぶのはインバウンドに対する施策という視点。この街を訪れる外国からの観光客に、どんな“渋谷”を感じてもらうべきか。そのヒントとなりそうな水口さんの一言でパネルトークは締めくくられました。
「カルチャーとアート、ファッションが詰まってエリアでありながら、明治神宮のようなスピリチュアルな側面もある。そんなブランディングって実はすごいと思うけどね」

その後、来場した皆さんには紙とペンが配られ、簡単なワークショップの時間に。
「未来の公園を考える」をお題に、こんな公園があったらいいなというアイデアを募りました。

自由に書いていただいた回答はすべて貴重なご意見としてプロジェクトの今後の参考のために保管されます。会場では代表して数名の方に発表していただきました。
たとえば、お子さんを育てるお母さんの目線からこんなアイデアが。

「小学4年生と保育園児のこども2人と、毎週末どこへ行くか話しています。
“未来”というと“テクノロジー”と考えがちですが、母としては親子で1日中いられるということがまず大事。たとえば科学をテーマにした美術館で知的に遊んだあとは原っぱでごはんを食べて、遊具で遊んで…。近未来的なものばかりでなく、原っぱが必要です。知的な遊びと、体を動かす昔ながらの遊びが両立できる公園があったらうれしいです」

登壇者の3名ももちろん回答。
笹原さんが書いたのは「Organized Chaos」。
「外国から来た友人が渋谷を見て言った言葉です。いろんなものが詰まってて雑多だけど、整っている街、それが渋谷の魅力。代々木公園もそんな公園であってほしい」

水口さんは「進化し続ける公園」。
「変わらないものの魅力も大切だけど、公園は変わらないのが普通。渋谷の公園ならば、変わらない部分もありながら、変化することも良しとする公園であってほしいです」

吉村さんは「いるだけで健康になれる公園」と回答。
「楽して健康になれる公園。公園の中に放たれたバクテリアの力で、そこにいるだけで健康になれるというような、そんなテクノロジーの使い方があってもいいのでは」

吉村さんのユニークな提案をもって、当イベントはにこやかに終了。
金山は「2020年4月頃には、東京都に対して良いかたちで提案ができればと思っています。これからも闊達なご意見を頂戴できればうれしい」と呼びかけました。


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