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2020.02.05
親の苦心もちょっとほぐれる、内村航平選手の母・周子さんの子育て論「渋谷区子育てネウボラ」イベントレポート

不安なく喜びの多い子育てができるよう、保健師を中心に渋谷区が様々なサポートを行う「渋谷区子育てネウボラ」。
その活動を体験し、また貴重な交流を持つことができるイベントの第3回が開催されました。


「きて みて しろう! 渋谷区子育てネウボラ -ママ、パパ、子どもたちの渋谷区子育てネウボラ体験 vol.3」
2020年1月26日(日)
@美竹の丘・しぶや2階


今回も会場では、「渋谷区子育てネウボラ」の取り組みを紹介する展示やガイダンスに加え、企業や団体が主催となるコーナーも充実。

江崎グリコ株式会社が『災害から赤ちゃんを守る~液体ミルクの正しい保存と使い方~』と題し展開したコーナーでは、災害への備えとして、またいざ災害が起こったときにも有用な液体ミルクの用い方をレクチャー。

また、渋谷区助産師会主催によるコーナーでは同じく、災害に備える子育ての観点から、「親子防災 〜大切なわが子とあなたを守るために〜」と題し、いざという時のための心構えに役立つレクチャーや、避難時のためのさらし(兵児帯)を使っただっこの講習などが。

キユーピー株式会社のコーナーでは「ベビーフードを上手に使って、楽しく育児を!」と題して、離乳食やベビーフードにまつわる不安を解消するレクチャーと、ベビーフードやそのアレンジメニューの試食体験などが行われました。

一般社団法人次世代SMILE協会主催による「アンガーマネジメント診断」では、無意識のうちにストレスを溜めてしまう子育てにおいて、不本意にこどもに怒りをぶつけてしまわないよう、自分の“怒りのタイプ”を知っておくことで自己管理をするための無料診断が開かれ、来場したおとうさんやおかあさんがあらためて自身を省みる好機となりました。

そして子ども発達相談センターの紹介ブースでは、簡単に作れて親子で遊べる手作りおもちゃの体験なども。

そんななか、ホールに詰めかけた親子の皆さんが熱心に耳を傾けたのは、「スポーツクラブ内村」や渋谷区の子育て支援施設「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ“すぽっと”」の体操教室の指導者であり、体操金メダリスト・内村航平選手の母である内村周子さんの講演。また講演後には、内村さんによる体操教室が開かれ、来場した親子はペアになって音楽に合わせて楽しく身体を動かしました。

<登壇>
スポーツクラブ内村、 渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ“すぽっと” 体操指導者
内村周子さん
渋谷区長
長谷部健さん
渋谷区中央保健相談所 保健師
鈴木綾子さん

講演に先立って、まずは長谷部健 渋谷区長からひとこと。
2021年にオープンを予定している、子育て支援を行う総合施設について期待を寄せながら、子育てネウボラの活動に込めた気持ちを語りました。

「ネウボラの事業はまだまだ始めたばかり。総合施設のオープンとともにさらに事業をカチッとしたものにしていきたい。それに向けてご意見を頂戴できればうれしいです」

続いて、現場で職務にあたる渋谷区中央保健相談所の保健師、鈴木綾子さんから、実際の子育てネウボラの活動を紹介。

「赤ちゃんとの生活において孤独を感じる、“孤”育てになってしまう方もいる。子育てに関わるすべての人々がずっと寄り添い、繋がれる場所、それが渋谷区子育てネウボラです。ぜひお気軽に保健師にご相談ください」

そして内村さんが登壇。
まず内村さんが語ったのは、自身が経験した子育ての大変さと奮闘ぶり。
手にした子育ての参考書の通りにはいかないことばかりで、つらいことが多かったと言います。

「50歳を過ぎると人生楽しいものです。でも一番戻りたくないのは、子育て真っ最中だった30代、40代(笑)」

子育てがつらいとき、内村さんは「どうにかなるさ」と思うようにしてきたのだそう。それは裏を返せば、「どうにかしよう」という心理を引き寄せるものだと語ります。
そんな心の持ちようを「心・技・体」になぞらえて紹介。

「心」が「どうにかなるさ」という気持ちなら、
「技」は「どうすればいいか」と考え工夫すること、
「体」は「どうにかしよう」と実践すること。

そんな「心・技・体」の考え方は、その後の子育てや人生にも、多くの面で活用できたと、内村さんは振り返りました。

そんな内村さんの子育てが特殊だったのは、やはり、日本を代表する体操選手を育て上げたということでしょう。兄の航平さんと、妹の春日さんも日本のトップレベルの体操選手。そしてふたりのお父さん・和久さんはインターハイで優勝経験を持つという体操一家。しかし内村さんには、英才教育はしたくない、という思いがありました。

「親を抜けないかもしれない、というプレッシャーを与えたくなかったんです」

「私が子育てにおいてもっとも重要視していることは…」内村さんはこう語ります。「こどもに期待しないこと。こどもにプレッシャーを与えないこと。こどもに不安を与えないこと。たいせつなのはゆっくりと待ってあげること」

それは、航平さんや春日さんをはじめ、体操の世界で日々チャレンジを続ける多くのこどもたちを見守り続けてきた内村さんだからこそたどり着いた境地なのかもしれません。

あるとき、体操教室の生徒で成績も優秀だった子が急に練習をしなくなってしまったのだそう。しかしそんなとき内村さんは「ちゃんと練習しなさい」などとは言わないように心がけています。

「声掛けひとつでこどもの態度は変わるもの。そんなときは『つらいねえ、少しずつでいいからね』と声を掛けます」

そんな心のこもった言葉を、内村さんは“魔法の言葉”と呼びます。最後に内村さんが航平さんにかけた“魔法の言葉”をひとつ、紹介しました。航平さんが19歳の頃、北京オリンピック出場をかけた大会を控え、心のバランスを崩して練習ができなくなってしまったとき、内村さんが伝えたメッセージです。

「オリンピックなんて出なくていいじゃん。次のロンドンも狙えるからそれでいい、無理しなくていいから」

それを聞いた航平さんは、心のバランスを取り戻し、また練習に明け暮れるようになったのだと言います。

「航平が生まれたのは、私のやるべき使命を果たすためだと思います。母の愛には誰もかないません。みなさん、どうぞお子さんを大事に育ててあげてください」と内村さんは結び、盛大な拍手をもって講演は幕を閉じました。

そんな貴重なお話のあいだにも、うずうずしていたのは来場していたこどもたち。内村さんの講演のあとは、音楽に合わせてめいっぱい身体を動かす親子体操教室体験の時間です。

エネルギッシュにリードする内村さんと、この日はパパの姿も多く見られた20組ほどの親子で、楽しくのびのびと運動をし、会場は笑顔でいっぱいになりました。

渋谷区子育てネウボラ
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kodomo/neuvola/