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2019.12.22
渋谷未来デザインの成すべき役割とは?「FUTURE DESIGNERS SUMMIT」【レポート】

2019年もあっという間に12月、年の瀬の雰囲気も次第に色濃くなる17日火曜日、渋谷未来デザインのアドバイザリーを務めるFUTURE DESIGNERが一同に集まり、パートナー/会員企業のみなさんとの交流の場をもつ「FUTURE DESIGNERS SUMMIT」が開催されました。

今年一年の渋谷未来デザインの活動報告からはじまり、パネルディスカッションからグループワーク、そしてネットワーキングと、短いなかにたくさん詰め込まれた(駆け足でしたが)濃密な時間となりました。


「FUTURE DESIGNERS SUMMIT」
2019年12月17日(火)16:00-19:00
@EDGEof


師走のお忙しいなか、会員企業、および、パートナー企業のみなさんにお集まりいただいた当日。まずは小泉代表理事からのご挨拶ののち、長谷部健 渋谷区長が登壇。

「渋谷未来デザインの働きは、ときに目立たないところもあるかもしれませんが、裏方に回ってがんばっている運動体です。渋谷未来デザインを立ち上げた狙いは、ここがハブとなり行政と企業それぞれの“できること”が混じり合いながらあたらしい取り組みを創り出していくこと。また、ぜひ企業同士でも繋がっていただき、そのなかで生まれた『規制をこういうふうに緩和してほしい』といった声を、渋谷未来デザインを通して挙げていただきたい。
 あたらしいチャレンジを渋谷で行なっていくための芽が生まれる場に、渋谷未来デザインがなればうれしいです」(長谷部健 渋谷区長)

続けて、今年8月にあらたにFUTURE DESIGNERに就任した若槻千夏さんからご挨拶。

「独身時代から渋谷に住んでいますが、いまは親として感じることがたくさんあります。区民として、そしてママとしての視点をもって渋谷未来デザインに参加できればと思っています。そしてタレントとしての発信力もぜひ活用していただければうれしいです。私は渋谷が大好きです、引き続きよろしくお願いします」(若槻千夏さん)

その後、事業の進捗報告を、渋谷未来デザイン 常務理事/事務局長の須藤から行ないました。

渋谷未来デザインは設立から2年が経過。今年になって法人会員数は、特別正会員9社、正会員 21社、賛助会員4社に、また、10の事業と30のプロジェクトが進行し、いずれも増加。年を追ってその規模は拡大しています。

多くのプロジェクトが進められるなか、時間の都合上そのすべてをご紹介することは叶いませんでしたが、
“渋谷らしさを強化するためには?”という命題に対し様々に挑んでいる「想像文化都市渋谷の実現に向けた計画策定」、
エンタメに特化したテクノロジーを駆使し、より面白い渋谷の街の姿を模索する「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」、
産官学民のデータを掛け合わせることで、社会課題のための新たな知見やソリューションを創出する「データ都市プラットフォーム構想」など、
どうしてもお伝えしたいこととしていくつかの事業について抜粋して詳細のご報告をいたしました。

そして会は、FUTURE DESIGNERたちによるトークセッションへと進みます。

第一部 トークセッション—未来の渋谷にできることは何か?


トークセッション①「渋谷のエンタメテックって?」
<登壇>
佐藤夏生、夏野剛、若槻千夏(FUTURE DESIGNER)
金山淳吾(渋谷未来デザイン 理事)
ファシリテート:長田新子(渋谷未来デザイン 理事)


テーマは「渋谷のエンタメテックって?」。テクノロジーを用いて、渋谷の街においてどれだけ楽しいエンタメコンテンツを創り出すことができるのか、またそこにはどんなビジネス視点でのチャンスがあるのか、その可能性について語り合いました。

夏野さんは、渋谷で進行中の大規模な再開発が結果的に街の景観に統一感をもたらすことになれば、との期待を寄せた上で、「それぞれの建物が足並みを揃えてLED照明などを導入し、テクノロジーを用いて街区全体を統一感をもって装飾すべき」と提案。

「ビルのひとつひとつの装飾はそれぞれ素晴らしいが、それを繋げられればいい。いろんな利権者の壁を超えて、たとえば街の導線やインフォメーションを単一色のLEDで描き出しませんか?」

若槻さんは、今年開放され渋谷未来デザインでも様々な取り組みを行なった渋谷川沿いの公共空間・渋谷リバーストリートに触れ、「子を持つ親にとってはとてもいい散歩コースとして、賑やかな街とはまた違った渋谷の一面を感じた。実は古くからある場所の魅力を、テクノロジーを使って伝えられたら素敵だと思う」と、母親の視点で語ります。

「例えばテクノロジーを使って川辺に蛍を再現したり。大人や企業に向けたプロジェクトは多いですが、いつか“あの街で育った”と胸を張れるような、こどもたちのためにもテクノロジーを活用する街であってほしいです」

対して佐藤さんは、自身も渋谷で子育てをする親であるとした上で、「街として経済を加速させようとするとどうしても大人中心の考え方になる。渋谷は地価が高いため、おのずと商業優先になり、消費をしない子供を中心とした発想にはなりづらい」と指摘。
また、「渋谷といえばこうだよね」という安易な発想ではなく、自分ごととして慎重に考える必要があると語ります。

「“新しいもの”というのはある意味で危険。10年後に振り返ったとき『 “新しい”テクノロジーではあったけど、実はどうでもいいものだったね』と思われるのでは意味がない。10年後に『有効だった』と思えるよう、先進的なプロジェクトでは慎重な吟味と研磨が必要」

金山は、渋谷区観光協会理事長の肩書きも持つ視点から
「いわゆる観光資源の無い渋谷という街に、なぜ人が集まるのかと考えると、実はそこかしこにコンテンツがあふれていて街全体がテーマパーク化していることに気付く。しかしテーマパークに来ているという意識が生まれないのは、それぞれのコンテンツが統一感を持たずに点在しているから。渋谷の街には来街者を迎えるホスピタリティとしての“統一感”が必要」
と、夏野さんの意見に同調しながら、ではどんなコンセプトがそこで求められるのかという点については、
「郊外や田舎にはそれぞれの生活様式があり、それがそこで育つ人の原風景になる。渋谷の街はどんなものを原風景として残したいのか、それを皆で考えるべき。例えば自然や憩いは大事だが、実は電車に乗れば自然の中に憩いに行くことは簡単にできる。渋谷に暮らしていて良かったなと思えるものを、どうやってテクノロジーを使ってつくりあげていくかを考えたい」と語りました。

例えばいま進行しているプロジェクトのなかには、渋谷の街に対して複層的にバーチャルな空間をつくりあげ、その中にどんなエンタメコンテンツを醸成していくのか、といった視点を持つものもあるように、テクノロジーのなかでもバーチャル関連の技術を用いたものに多くの期待が寄せられています。

金山が「今後未来に向けてバーチャル空間内での規制なども増えてくると思う。開拓期の今だからこそチャンスと捉えて、ぜひ積極的にプロジェクトに参画してほしい」と、会場の会員企業の皆さんへ声をかけたとおり、今年その一歩を踏み出したプロジェクトがやがて未来へ向けて大きな価値を生む可能性に寄り添い、渋谷未来デザインは2020年以降も引き続き邁進していきます。


トークセッション②「渋谷のデータは未来を救う?」
<登壇>
齋藤精一、左京泰明、林千晶(FUTURE DESIGNER)
小泉秀樹(渋谷未来デザイン 代表理事)
ファシリテート:久保田夏彦(渋谷未来デザイン)


産官学民がそれぞれに保有するデータを掛け合わせ、一歩進んだ行政サービスや社会サービスの実現を目指す「データ都市プラットフォーム構想」。市民生活をより豊かにするサービスを提供するとともに、そこで得た知見を都市間連携により渋谷以外の都市へも横展開させることで社会全体の発展へ寄与することを見据え、渋谷未来デザインが注力して進めているプロジェクトのひとつです。
今回ふたつめのトークセッションでは、FUTURE DESIGNERの3人とともに、データ活用の視点から見えてくる都市や行政のあり方の未来像についての意見交換が行われました。

まず齋藤さんが、渋谷未来デザインの成すべき役割についてこう語ります。

「データ活用といった施策は、とかく議論ばかりが重ねられて堂々巡りになりがちなもので、実装に向けドライブさせていく力が必要。できることからまずやっていくというのが渋谷未来デザインの使命だと思う。それも小難しいことから始めるのではなく、エンタメなど楽しいことから実装して市民を巻き込んでいくことが重要です」

林さんも同調し、「“0”から“1”を生むのは渋谷未来デザインがやらなくてもいい。情熱のある人がたくさんいるから、彼らの夢を集めて、それをどう叶えたらいいかという実装の部分をサポートできる存在に渋谷未来デザインがなるべき。データに関しても活用したい人たちがいるなかで具体的にどう実装していけばいいかを考えたいです」と語りました。

そんななか小泉がひとつの論点を投げかけます。

「渋谷を走るコミュニティバス『ハチ公バス』に何らかのセンサーをつけてデータを収集したいと思っています。渋谷には悪臭の問題がある区域もあるので、匂いのセンサーをつかったデータ組成なども行なってみたいが……」

すると左京さんが、自身が渋谷未来デザインで手がけたプロジェクトを引き合いに出しながらこう応じます。

「笹塚の敬老館という施設を閉鎖後に利活用する試みを行なって気付いたのは、普段居場所がないと感じている高齢者が多いこと。ハチ公バスが地域を見守るような機能を持って、データからリスクを察知できるような取り組みができたらいいですね」

また、プロジェクトに携わるなかで、同時に複数の解決すべき課題を抱えて込んでしまっている世帯が多くあることに気付いたと言います。「行政機関が持っているデータをもっと複合的な視点で扱えるようになると、ひとつの機会で多面的なサービスを提供できるはず。既存の制度によって今よりたくさんの課題を解決できるはずです」

福祉という視点に沿って齋藤さんがこう続けます。

「オリンピック・パラリンピックに先駆け、1964年に撮られた街の写真を広く公募してそこから当時の街を三次元的に描き出す『1964 TOKYO VR』というプロジェクトを今年手掛けたのですが、この施策の先に見据えていたのはセーフティーネットの創出。こども達がおじいちゃんおばあちゃんから写真を集めるときに会話が生まれ、安心・安全や気付きが生まれる。たとえばそんな風に、福祉といってもすこしカーブのかかった取り組みができるといいですね」

「データを集めてテッキーに課題解決するというよりは、もう少し人間的なソリューションが導き出せるといいのかもしれませんね」(久保田)

「テクノロジーが人々を幸せにするという点が大事なところ。関わる人たちにとって共通の目標をどう描けるかが重要なポイントです」(小泉)

続けて小泉は最後に、来場した会員企業の皆さんへ向けこう語り締めくくりました。

「渋谷で成功すればいろんな自治体に横展開できるが、そこにこそ企業が関われる余地がある。たとえば福祉を福祉だけで終わらせず、企業の知恵やテクノロジーを組み合わせることでこんなことにまで展開させられるんだというところを見せていきたいと思っています。
皆さんのアイデアで活性化させていきたいです。是非ご協力をお願いします」

第二部 可能性を拡げるグループワーク

トークセッションのあとは、来場された皆さんがテーブルごとにグループに分かれ、それぞれに与えられたテーマに沿って意見交換をするグループワークが行なわれました。
今回は短い時間だけに限られてしまいましたが、企業間交流の機会創出だけでなく、ともにアイデアをひねることで親睦が深まる有意義な場となりました。

設けられたテーマは下記の3つ。ランダムに割り振られたこれらの議題について、付箋紙を手に皆さんで議論をし、課題や必要なアクションを書いて貼り出していただきました。

テーマ①「渋谷のエンタメテックって?」
テーマ②「渋谷のデータは未来を救う?」
テーマ③「渋谷の文化どうする?」

各テーブルにはFUTURE DESIGNERがつき、皆さんと意見を交わしました。

どのテーブルも議論が盛り上がり、あっという間に終了。時間が全然足りない!との声も挙がるなかでしたが、続きはこのあとネットワーキングの時間へ持ち越し、グループワークは終了となりました。

いよいよオリンピックとパラリンピックを迎え、東京にとってはきっと激動の一年となる2020年。そこからさらに先に未来を見据え、いま渋谷未来デザインがとるべきアクションは何なのか。それを推進するために関係各所とのどんな連携や協力が必要なのか。
トークセッションの中で発せられた、FUTURE DESIGNER佐藤夏生さんの「吟味と研磨」という言葉に込められたような慎重さと真摯さを持ちながらも、同じく齋藤精一さんや林千晶さんが語った「とにかく実装していく力」を生み出していくことが、なにより渋谷未来デザインに求められていることなのでしょう。

来年も、会員企業、パートナー企業の皆様のお力添えをいただきながら、渋谷未来デザインはより良い渋谷の未来の実現を目指していきます。