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2019.12.05
ビヨンセがリカルド・ヴィラロボスを聴く感覚? 5Gで変わるエンタメの未来「WHITE NIGHT WEEK SHIBUYA」【レポート⑨】

WHITE NIGHT WEEK SHIBUYA
DAY 3 – SESSION 3
「渋谷5Gエンタメテック会議 Vol.2」
日時:11月7日(木)21:00 〜 21:45
登壇:
宇川 直宏(DOMMUNE)
繁田 光平(KDDI株式会社)
Naohiro Yako(flapper3)
井口皓太(CEKAI)


5Gによってエンターテインメントは、渋谷はどう変わるのか?

9月12日にくっきー!氏(野性爆弾)、小橋賢児氏(クリエイティブ・ディレクター)、金山淳吾氏(一般財団法人渋谷区観光協会代表理事)、中馬和彦氏(KDDI株式会社)によって行われたトークセッション「渋谷5Gエンタメテック会議」の第2弾が開催されました。

冒頭に宇川さんが「渋谷が輝ける未来に向かっていけるのか? これを議論する前にまずはそれぞれの渋谷の思い出を語りたい」と切り出します。

埼玉出身の繁田さんは「憧れの街でした。思春期は渋谷系が全盛で、デトロイト・テクノやアシッドジャズが流行り始めていました。インターネットも黎明期で情報が多くない時代。でも、頑張って頑張って検索をつづけると自分が知っている情報に行き当たる。一歩踏み込むのはすごく怖いんだけど、扉を開くと“なにか”に出逢える、そんな街でした」と発言。

つづいて、CEKAIの井口皓太氏は「僕は1984年生まれ。裏原ブームでストリートファッションがすごく流行っていたので、その印象が強いですね」と音楽やファッションの発信地として、ワクワクが存在する街であったことを思い出として語ります。

一方、実家が新宿だと言うYAKO氏は「隣町の印象(笑)。住むところが新宿だったので、渋谷は遊び場でした。特に円山町界隈が盛り上がっていたので、よく遊んでました」と常にそこにある身近な場所が渋谷であったと話します。

ここからはしばらくのあいだ、宇川さんによる独壇場。3名の登壇者に発言するすきを与えず、渋谷の過去、現在を溢れ出る熱量で語り倒し、会場を圧倒します。

「渋谷にはそれぞれのノスタルジアがある。でも、加速度的に進化もしている。5G(第5世代)を語る前に、第1世代から第4世代を振り返らなければいけない」(宇川さん)

と切り出し、60年代の高度経済成長の3C(カラーテレビ、クーラー、自動車)の時代からバブル期、また堤清二氏やセゾンカルチャーについても触れながら、独特の視点と語り口で渋谷の変化を熱弁します。

物質的な豊かさを求めることから精神的な豊かさを求めることへと価値認識が変遷してきたという指摘に対し、繁田さんがテクノロジーの変遷について付け加えます。

「1Gは1999年。携帯電話でダウンロードできるようになってきた。そして、着うたや待受が流行った。これが2Gです。3Gでは高速大容量通信が可能になり、携帯電話での動画視聴が始まってきました。でも、まだまだ写メとか掲示板の利用がメインでした。4Gは2000年代初頭のスマートフォンの登場。携帯電話がインターネットデバイスそのものになった。リアルをネットに持ち込む人が増えた。Instagramが好例ですね」(繁田さん)

その後は再び宇川さんの独壇場。

「ニコ生がオワコンになってしまったのは、スマートフォンに対応できなかったから。それまでは自宅警備員は、一方でリア充を呪い、一方で憧れていた。それが4Gになって、誰もがスマートフォンを持って街に出るようになった。じゃあ、渋谷は? レコードはファイルになり、クラブは風営法で取り締まられた。物質の消費、情報の消費からコンテンツ消費になり、リアルの時間軸をどのように過ごすか、というコミュニケーション消費の時代がきた」(宇川さん)

と語り、「さあ、これでようやく本題に入れます(笑)。どうしても5Gを語るうえでここだけは話しておきたかった」と宇川さんが言ったときには、すでにプログラムの予定時間の半分が過ぎており、会場から笑いが漏れます。「では、5G時代はなにができるのか?」。本題に突入します。

「5Gになったら、何が変わるのか? 大きく3つの特徴があります。1つは大容量高速通信。4K、8Kが高速でストリーミングできます。2つ目が、同時接続数が飛躍的に伸びる。最後が、レイテンシー(遅延)がなくなります。つまりタイムラグがなくなる」(繁田さん)

と、繁田さんが5Gの特徴をわかりやすく解説。すると各々が5G時代における可能性に言及します。

「5Gになると空間の情報をリアルタイムに体感することができるようになる。映像は作れるけど、視聴だけで終わらない“体験”。これが5Gの鍵になると思っています。例えば、皮膚感覚をセンシングデバイスで共有することで、遠隔手術ができるし、極論を言えば東京にいながら、沖縄のウミガメを触るという“体験”ができるようになる。五感を拡張するというか」(井口さん)

「僕はVJなんで会場でしか味わえなかった高揚感を、その場にいずとも体験できるのか、という点に関心があります。音楽に没入していったときに、シンクロする映像やレーザーの光で倍増する快感とか」(YAKOさん)

「つまり生物学的な意味での、クラブ体験だよね。ビヨンセがリカルド・ヴィラロボスを聴いて、どのような体験をして、どういうダンスをしたのかをリアルタイムに世界中に配信できる。5Gを究極的に言えば、これだよ」(宇川さん)

一同「?」

「だから、ビヨンセがリカルド・ヴィラロボスとリッチー・ホウティンを聴いて、何が違ったのか、どういう興奮をしたのかって他人にはわからない。でも、その感情とか興奮とかも共有できるようになるのが5Gなわけでしょ?」(宇川さん)

「確かにセンシング技術とボディスーツで、脳で感じていること、体で感じていることを伝える技術が確立すれば、そのようなことも可能になりますね(笑)」(繁田さん)

「そこに同時接続数も考慮して、AR、VRを応用すれば、渋谷のハロウィンのスクランブル交差点の状況を世界中で体験することができる」(YAKOさん)

「そうなんです。さらに我々が考えているのは、渋谷を感じることができるが、じゃあ渋谷にいる人がどう感じるか? 世界中で渋谷を体験している人の様子を、渋谷の人に向けて可視化できるのか? 双方向に、インタラクティブな体験ができるようにしたい」(繁田さん)

クリエイティブとテクノロジーの第一線で活躍している4者の闊達な意見はワクワクするものばかり。アイデアは尽きないですが、最後は宇川さんがこうまとめます。

「Google Earth以降、世界に秘境はなくなった。ナショナルジオグラフィックが発表している『世界でいくべき目的地』というのがあるが、2位は南極。南極は大自然を保っている。では、1位はどこか? 瀬戸内なんです。なぜか? 瀬戸内には大自然のなかに、究極の不自然(人工物)がある。そこが価値だと思っている。瀬戸内の海に草間彌生のかぼちゃがある。あれには“永遠にそこにいる”という意思を感じる。だからこそアートになりうる。ARやVRはテクノロジーによって塗り替えられる。これはデザイン。5G時代に不変の価値とはなにか? これを考えなくてはいけない。つまり、リカルド・ヴィラロボスのミニマル・テクノをビヨンセとミッシー・エリオットが聴いたとき、2人はどう感じ、なにが違うのか? これを第三者が理解できる。そういうことを考えないといけない」(宇川さん)

ぼんやりとかもしれませんが、ワクワクする未来が来そうな予感は、来場したみなさんに伝わったのではないでしょうか。