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2019.05.27
この街に新しいお土産を!実販売での社会実験権を勝ち取るのはどのアイデア?「渋谷×お土産!? アイデアピッチ」《レポート》

多様な人や文化・モノが集結する渋谷。この街にふさわしい、新しい《お土産》とは??

「世界にむけて渋谷の魅力を発信するお土産」をテーマにアイデアを公募。数多く寄せられたアイデアのなかから選出された4つのプランを発表するアイデアピッチが開催されました。

優秀なアイデアは渋谷区公認のお土産として、渋谷川リバーストリートで販売を通した社会実験へプロジェクトを進められるとあって、それぞれのユニークな構想に、メンターやパートナー企業からも様々な意見が投げかけられました。

『渋谷×お土産!?アイデアピッチ』
2019/5/10(金)19:00~22:00@Plug and Play Shibuya

<メンター>
本間洋行さん(渋谷区役所区民部 商工観光課長)
中馬和彦さん(KDDI株式会社ライフデザイン事業企画本部ビジネスインキュベーション推進部長 KDDI ∞ Labo長)
守屋実さん(株式会社守屋実事務所)
藤本あゆみさん(Plug and Play Japan株式会社 Director, Marketing/Communication、一般社団法人at Will Work 代表理事)
小泉秀樹(渋谷未来デザイン代表理事、東京大学教授)

<パートナー企業>
KDDI株式会社大日本印刷株式会社東急不動産株式会社株式会社パルコ

<共催>
一般社団法人渋谷未来デザイン、一般財団法人渋谷区観光協会、Project SCRAMBLE、eiicon

まずは、主催・渋谷未来デザインのプロジェクトデザイナーであり、渋谷区観光協会の代表理事も務める金山淳吾の挨拶から会はスタート。

「渋谷はもともと観光地として栄えた街ではなく、お土産もあまりない。<ご当地の味>や<工芸品>もなく、これが渋谷のお土産です、という定義がしにくい」と現状を指摘した上で、今回40件ものアイデアが寄せられたこと、そこから4つの優秀なアイデアが選出されたことの嬉しさを語りました。

今回は、各アイデアのピッチのあと、
<1> 新規性
<2> お土産らしさ
<3> 渋谷らしさ
<4> 実現可能性
の4つを軸に、アイデアディスカッションが行われるかたちで進められました。

ピッチ -1-
株式会社Enhanlabo 座安 剛史さん

座安さんが提案したお土産は、あたらしいウェアラブルデバイスを使った体験、そのもの。
渋谷で日々育まれているポップカルチャーを、後日別の場所で、ウェアラブルデバイスを用いて追体験する行為自体を「お土産」と捉えたアイデアです。

座安さんの所属する「Enhanlabo」で開発している、スマートグラスやヘッドマウントディスプレイに代わるあたらしいウェアラブルデバイス「b.g.」。これと“渋谷”を掛け合わせることでお土産を生み出せるとアピール。

「b.g.」はメガネのように顔に装着すると、視界の中に画面が浮かび上がって見えるというもの。現実世界の視界と情報画面を同時に見て、且つ、両手を自由に使って作業等を行うことができます。

様々な価値観や才能の集まる街:渋谷特有の体験、座安さんはその具体例として、グラフィティ・カルチャーを挙げます。グラフィティ・ライターが壁画を描く様子をデバイス内の画面に映し、それをなぞるように自身も絵を描くことで、ライターのクリエイションを追体験できる、と座安さんは語ります。「追体験によって“天才ってこんなにすごいの?”と驚く感動自体がお土産です」。

対してメンターらからは、そのソフト面での展開に意見が寄せられました。

小泉「自分ひとりでフォームを確認しながら動いてみる、といった、スポーツをコンテンツにすることに可能性を感じる」

藤本さん「オリンピック・パラリンピックと絡めるのが良いのでは。選手の視点で大会を楽しむ、など」

一方、パートナー企業として出席した、株式会社パルコ プロモーション部 小林啓太さんは、
「インバウンドのことも意識したほうがいい。例えば日本の伝統工芸や、茶道等は教えるのが難しい。このデバイスで作り方や細かな作法を教えられれば、体験として海外の方に持って帰ってもらうことには意味がある」と語り、

同じくパートナー企業の東急不動産株式会社 都市事業ユニット渋谷プロジェクト推進本部 小澤広倫さんからは、
「伝統工芸品等、作るのが大変なものを自分で作って、持って帰るというところまでパッケージにしたほうが、ストーリーが付加価値として付いた良いお土産になりおもしろいのでは」といった提案がありました。

ピッチ -2-
公益財団法人 日本財団 野本圭介さん

2番目のピッチとなった野本さんの提案するお土産は、渋谷における“おらがまちのビール”。
ビール好きのー会社員が個人的に考えたアイデア、と語りながらも、ビール愛のこもったプレゼンが進められます。

まず野本さんは、渋谷は夜の消費が活発なエリアであるにも関わらず、本格的なブルワリーがなかなか無いと指摘します。
「ニューヨークにはたくさんのブルワリーでたくさんのブランドの地元産ビールを楽しむことができる。ロンドンはパブ文化で、最近はクラフトビールの消費量が右肩上がり。なのに、渋谷では……」

そこで渋谷のビールをつくり、お土産にしたいと提案。実は東京にも、あまり知られてはいないがビールの醸造所があり、アイデア次第でユニークなビールを製品化することは可能と野本さんは説明します。

では“渋谷らしいビール”とはどんなものなのでしょうか。
「様々なフレーバーを作ることができるのがクラフトビールの魅力。いろんなバージョンを作ることで、多様性=“渋谷らしさ“を表現したい」と語ります。
「優れた街には優れたビールがある。ビールによってコミュニケーションが活性化され新たなカルチャーが生まれていくためにも、“渋谷のビール”を実現したい」と結びました。

金山「ビールはあらゆる素材を混ぜて作るもの。文化のスクランブル状態が渋谷の魅力だとするなら、スクランブルフレーバーのビールというストーリーはお土産として魅力的」

藤本さん「渋谷にある企業がそれぞれに“渋谷のビール”を作って販売しても面白い。観光だけではない街、というアピールが出来るし、渋谷らしさがあるのでは」

パートナー企業として出席した、大日本印刷株式会社 福山徳博さんからは
「ビンではなくペットボトルで大量生産するなら、我が社でも協力出来るかもしれない。ペットボトルなら持ち歩くことも出来るし」といったアイデアや、

株式会社パルコ 小林さんからは 「若者のお酒離れが囁かれているが、パッケージの部分でクリエイターと組んでみるといいかもしれない。以前にパルコミュージアムの企画でクリエイターに日本酒のパッケージデザインを手がけてもらいカップ酒を販売したところ、若い女性のお客さんに多く来場いただいた」といった経験談も。

ピッチ -3-
株式会社タリス 木村征子さん

お酒を飲みながら楽しく絵を描くという“ペイントパーティー”「Painty」を運営する株式会社タリスの木村さんが、3番手のピッチ。

“ペイントパーティー”は、絵画教室のような“勉強”ではなく、気楽に体験できるエンターテインメント。初心者でも2時間で書き上げられるようなプログラムが多いのだそう。
木村さんは、このペイントパーティーを渋谷のお土産に昇華できないかと提案します。

渋谷=遊べる街、クリエイティブな街と定義し、渋谷の名所をテーマにしたペイントパーティーを、渋谷各所の飲食店等で開催すれば、皆が自分なりの“渋谷”を持ち帰ることも出来るお土産になると木村さんは話します。
「他の人が描いた“渋谷”を見て語ることで、様々な渋谷像が浮かび上がってきます」

本間さん「旅行先でのワークショップ体験は個人的にも好き。ガイドツアーに体験プログラムとして組み込んだり、あるいはホテルでも開催すると、空き時間などに体験してみることが出来ていいかもしれない」

東急不動産 小澤さん「渋谷はこういう大人な文化もあるはずなのに、若者の街に見られがち。このお土産は比較的上の世代にも楽しんで書いてもらえるイベントになり、いいと思う。 東急としてはホテルやカフェの一角を体験スペースとして提供するなど、協力できることはありそう」

小泉「さっきのウェアラブルデバイスをかけて、渋谷のビールを飲みながら、このペイントパーティーをやったらいいのでは?」

中馬「イベントとしては魅力的。しかし《渋谷 × ○○○》という点が、これまでのピッチの3件ともにもうひとひねり欲しい」

最後に木村さんは、「同じモチーフで絵を描いても差が出てくるので、その後交流が生まれる。その交流をお土産として持って帰ってほしい」と語りました。

ピッチ -4-
プランティオ株式会社 芹澤 孝悦さん

今日最後のピッチは、AIとIoTを組み込んだ先進的なプランターを開発し、都市においての持続可能性のある新しい”食と農”のかたちを提案するプランティオ株式会社の芹澤さん。

ニューヨークやロンドンでは、建物の屋上が農園になっているのはもはや当たり前。新しい「アグリテインメント」として定着している、と芹澤さんは話します。
「従来の農業のみに頼るのではなく、野菜は自分たちでも作る時代。日本はその波から取り残されています」

生まれも育ちも渋谷・道玄坂だという芹澤さん。実はみなさんがよく知る「プランター」を世界で初めて作ったのは芹澤さんのお祖父さんなのだそう。芹澤さんは今、AIとIoTを組み込んだ「Smart Planter」を開発し、それを用いた「IoTファーム」と、その運用サービスを展開しています。
これは、アプリを入れておくと、自身が登録したIoTファームの様子を遠隔で確認出来、都度必要なリソース(水やりなど)が通知され、メンバーのなかでファームに行けるひとが行って作業を行う“コミュニティ栽培サービス”と呼ばれるもの。 芹澤さんはこれを、渋谷のお土産体験に出来ないかと提案しました。

大日本印刷 福山さんが「このアイデアで、どう“お土産らしさ”を演出するのか」と問うと、芹澤さんは

「例えば外国人観光客がIoTファームにタネを植えると、その後アプリを通して遠隔で観察出来る。やがて収穫の時期にもう一度日本にやって来れば、提携する飲食店で実際に食べることも出来る。この街と海外をずっと繋ぎ続けるツールになれば、それは“お土産”として機能すると思う」との答え。

また小泉が「渋谷なら実際にどこでやりたい?」と問うと、芹澤さんは
「渋谷じゅうのビルというビルの上。あるいは渋谷川リバーストリートでも、日本と世界のアグリカルチャーの歴史を展示しみなさんの共感を促したい」と熱く語りました。
「渋谷には、特産品が無いと言われるが、実は元々、青山〜松濤のエリアは茶畑だった。だから“渋谷の味”と呼べるものは実はある。そういった忘れられかけている“渋谷の植物”も混ぜて展開したいです」

4つのピッチが終了し、メンターとパートナー一同は一度別室へ移動、審査に入ります。

やがて審査発表、代表して小泉
「審査員みんなで意見が一致した。どのアイデアも、今お土産としての価値を明確に持っているかというとそうとも言い切れない。しかし、可能性を感じるので皆さんにチャンスを与えたい」とし、特定のひとつのアイデアを選ぶのではなく、今回の4つ全てのアイデアに対して、渋谷川リバーストリートでの社会実験の場を提供したい、という結論となりました。

以下、最終的な各メンター/パートナーのコメント。

渋谷区役所区民部 本間さん
「単体でやってもいいし、今回の4プロジェクトがコラボするなど、いろいろ方法はあると思う。社会実験と通してしっかりとお客さんの反応を見てほしい」

KDDI株式会社ライフデザイン事業企画本部 中馬さん
「お土産は渋谷の“売り”になるべきもの。渋谷に対してこう思ってほしいという“渋谷像“や、渋谷から“持って帰るべきもの”は何なのか、改めて考えて引き続き取り組んでほしい」

守屋実事務所 守屋さん
「わざわざ社会実験のステップを踏むのだから、何を実験するのか明確にして取り組んでほしい。“渋谷”を主語としなら、ビジネスの視点も決して忘れずに」

Plug and Play Japan株式会社 藤本さん
「“渋谷らしさ”を皆さんがどう捉えているかを聞かせてもらったが、どのピッチもその面ではあと一歩。社会実験を通してさらにもう一段上を目指してほしい」

大日本印刷株式会社 福山さん
「お土産として買いたくなる、ワクワクするような、わかりやすいものにしてほしい」

東急不動産株式会社 小澤さん
「どのアイデアもコンテンツとしては出来上がっているので、社会実験では、渋谷に合わせるトライアルをしてほしい。お客さんの評価にぜひ耳を傾けて」

株式会社パルコ 小林さん
「街のお土産ならば50年100年先にまで根付くといい。しかし“渋谷らしさ”とは日々う変わるもの、そこで普遍的なお土産を作るのは禅問答のようだが、ぜひその視点でもブラッシュアップにトライしてほしい」

そんなわけで、1ヶ月後となる6月下旬以降、今回の4プロジェクトによる社会実験が、渋谷リバーストリート「WORK PARK PACK」を舞台に展開されることとなりました。

多様な人や文化・モノが集結する渋谷から、世界へその魅力を発信する新しい《お土産》。その誕生までの一歩目が今夜なら、続く足取りもぜひ多くの皆さんに見守ってほしいものです。
4プロジェクトの今後の歩みに、どうぞご期待ください。