都市防災と公園づくりの未来――SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第4回クロストーク

レポート
SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA

SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第4回クロストーク〜都市防災と公園づくりの未来〜

2019/1/30(水)17:30〜20:30@EDGEof7階

<パネリスト>
市古太郎さん(首都大学東京 都市政策化学科 教授)
佐藤慶一さん(専修大学ネットワーク情報学部 准教授)
一言太郎さん(元スポーツ庁参事官(地域振興担当) 参事官補佐 (国土交通省都市局都市計画課 課長補佐)

<ファシリテーター>
金山淳吾(渋谷区観光協会 代表理事、渋谷未来デザイン プロジェクトデザイナー)

代々木公園B地区に、スポーツ・ エンターテインメントの聖地であり、また災害時には防災拠点としても機能する、3万人収容規模のスタジアムパークをつくるーー「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA」と名付けられたこの構想について、見識者や住民、公園利用者の方々と広く意見交換するクロストークを行なっています。

また、オフィシャルサイトでは1月よりWEB投票とコメント機能を解放し、様々な意見を募っています。
https://scramble-stadium.tokyo/

さて、4回目となるクロストークのテーマは「都市防災と公園づくり」について。

まずオープニングトークでは、年末にアンケートを行い「災害時に安全に避難できる空間があると思うか?」と問いに対して9割が「十分に足りていない」と回答したと報告。(※註)

さらに代々木公園を防災拠点とするアイデアに対しては、「原宿駅がパンクする」「渋谷・原宿にはすでに人がいるのに、これ以上集める必要があるのか」などの反対意見が多かったとした上で、「都市防災と公園づくり」をテーマにしたクロストークがスタート。

※註
本構想について、株式会社マクロミルにて全国の15歳以上の男女10,300人を対象にインターネット調査を実施。(調査期間:2018年12月22日(土)〜 2018年12月25日(火))
<アンケート結果はこちら

まず市古教授が、防災の面で都市公園の役割を考えるとき、災害直後だけを考えてしまいがちであることを指摘します。

「災害の直後期ばかり役割に注目が集まりますが、オープンスペースとしての都市公園の役割は、発災からの時間経過で変わっていきます。重要なのは平時においても防災を意識しておくこと。
熊本地震の益城町総合運動公園を例にあげると、直後期よりも震災から1ヶ月経過した頃の方が避難者は多かったのです。つまり町における中心的な避難生活所としての役割を担いました。その一方、言い換えれば、運動公園としては5ヶ月間利用することができませんでした。この点は、公園をマネジメントする視点ではマイナスと言えます」

「代々木公園は災害時活用という視点でみると2つの葛藤を抱えていると思います。第1に地震火災からの避難者と帰宅困難者の一時滞在の両方の受け入れるニーズが交差しているという点、第2に避難所および仮設住宅用地という被災者を受け入れるニーズと平時の公園機能を速やかに回復し、多くの在宅避難世帯の「元の生活に戻りたい」というニーズを実現していく点です」

さらにその上で、代々木公園の現状について

「代々木公園は地震火災時の広域避難場所に指定されていますが、渋谷駅都市再生安全確保計画において、帰宅困難者の一時滞在場所には位置づけられていません」

と説明。代々木公園を避難場所として活用する場合の意外な現状について投げかけ、佐藤准教授にバトンを渡します。

佐藤さんは、東日本大震災の経験や数々の防災ワークショップを通じて、原宿・表参道・竹下エリアの避難先をわかりやすく記載した「BOSAI MANGA MAP」を監修しました。

「原宿、表参道、竹下通りは、震災が起きると多くの滞留者・帰宅困難者が生まれると予測されます。震度5以上の地震が起きると、必ず電車が止まります。膨大な帰宅困難者が、近くの建物に入ることも想像されます。地域には、古い建物も多く、その安全性が懸念されるところです。

震災の問題は、帰宅困難の話だけではありません。住宅が被災すれば、避難所や仮設住宅も必要になります。避難所に対する固定観念も変えていかなくてはいけないでしょう。避難所と聞くと、学校の体育館にブルーシートや毛布で雑魚寝という状況をイメージしますが、非常に劣悪な環境で耐えられない人も多いでしょう。仮設住宅は大幅に不足する事態も想定されます。まち独自の取り組みが必要になると考えています。渋谷区でもそういった問題に直面することになる可能性があります。」

と帰宅困難から避難、仮設住宅の課題をあげて、地域の防災の在り方について問題提起。 つづいて、元スポーツ庁参事官である一言太郎さんがマイクを握ると、なんと来場者に向けてクイズを出題しました。

SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第4回クロストーク〜都市防災と公園づくりの未来〜

「日本国民全員が都市公園(日本全体にある)で持てるもの、とは一体なんでしょう?」という四択クイズ。日本にある都市公園の面積は、12万5千ヘクタールあるということで、それを総人口で割ると、一人あたり10.4㎡となります。つまりおおよそ「6畳の面積」を持てるのだといいます。

その上で一言さんは、都市公園の定義や歴史を振り返っていきます。

「都市公園の役割や目的は、関東大震災や阪神大震災といった災害を機会に認識されることが多いのです。延焼や避難の経験によって、オープンな都市公園の必要性が高まります。

1932年に策定された東京緑地計画で計画された都市公園は、戦時における防空緑地としてその多くが整備されました。」

興味深い事実の連続に来場者も一言さんのトークに釘付け。三者三様の視点から「都市公園と防災」の考えが語られたあとは、ディスカッションに移ります。

その中でも盛り上がったテーマは、「スタジアムの防災力」。

「防災拠点としてシビックプライドも養えるんじゃないかと考えています。文化振興の拠点であると、もちろん消費する人がいる。つまり平時は、多くのお客さんがいて、そこで地域への愛着が生まれたり、結束力が高まったりと、ハードウェアだけではなく“こころの防災力”を高められるようになるのではないでしょうか」

と金山が発言。すると一言さんはスタジアムの構造に目を向けてこう続けます。

「VIPルームや選手の控室などをどう活用するのか? スタジアムはコンコースが広く取られているし、数千㎡の空間も出てくるので、防災倉庫などとして使うことも考えられる。 課題の1つは誰が運営するか。学校の先生は、震災時に防災要員でもないのに対応をしなくてはいけなくなることがある。」

SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第4回クロストーク〜都市防災と公園づくりの未来〜

すると、佐藤さんは

「スタジアムは商業施設。震災時に被災者を受け入れるとなると、運営側はその間、売上が入らなくなる。防災拠点として帰宅困難者を受け入れる場合は、費用などのルールを事前に決めておく必要があるのではないでしょうか」

また市古さんからは、

「東日本のときの”自粛”ムードは考えるものがあった。防災だけでなく、こころの復帰のための機能を、代々木公園なら担えるのでは」

など議論には多くの視点が生まれました。

SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第4回クロストーク〜都市防災と公園づくりの未来〜

冒頭でもあったように多様な意見が飛び交った今回のクロストーク。賛否両論の闊達なアイデアがあるからこそ、多くの人が納得できる答えに一歩近づくことができます。
今後も多くの意見を取り入れながら、構想をアップデートをしていくため、イベントを定期的に行っていきます。

SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA 第4回クロストーク〜都市防災と公園づくりの未来〜

また、オフィシャルサイトにてより多くのみなさまのご意見、コメントを募集しています。本構想に賛同いただける方は、ぜひ応援の声や投票もお願いします!

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