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2018.12.24
渋谷再開発で取り壊されるビル一棟が《アート》と《音楽》で 彩られる2週間「ARIGATO SAKURAGAOKA」【イベントレポート】

渋谷区桜丘町。渋谷駅前にあって、しかし、いわゆる喧騒的な“シブヤ”像とは一線を画す、やや落ち着いたエリア。メインストリームでは飽き足らない、通(つう)な個性が集まる界隈、言うなれば、“シブヤ上級者“のための渋谷、とでも言えるのかもしれません。

いま、劇的に変わりゆく渋谷駅前。渋谷駅西口を出て、国道246号線を渡った、このいわゆる「渋谷駅桜丘口地区」(桜丘町1〜3番地、8番地と、4番地の一部)もまた大きな変化の時期を迎え、店舗や住宅など約60棟が、再開発に向けて既に立ち退きを済ませています。

それに伴い、2018年末をもって取り壊されるビルが桜丘にあります。旧・ヤマハエレクトーンシティー渋谷。このビル一棟まるごとを使って、《アート》と《音楽》で溢れた刺激的な試みが行われ、古き良き桜丘から新しい桜丘へと、再開発によって生まれ変わるその始まりを予感させる象徴的なイベントとなりました。

「ARIGATO SAKURAGAOKA Produced by ART PHOTO TOKYO」
開催期間:2018年11月16日(金)〜2018年12月2日(日)
※木・金・土・日のみ開催
会場:ヤマハエレクトーンシティー渋谷 跡地(東京都渋谷区桜丘町8-27)

取り壊し予定のビルに50名のアーティストが集結

この「ARIGATO SAKURAGAOKA」プロジェクトは、写真と映像をテーマにしたアートフェア「ART PHOTO TOKYO」のプロデュースにより開催、写真家を中心に50名を超えるアーティストが展示に参加しました。

キュレーターである吉井仁実さんが「ポップカルチャーを意識し、さらにアート&サイエンスやテクノロジーなどの新しいアート、音楽や建築、デザインなども加え、芸術の秋に相応しいアートフェア」を目指したと語る通り、会場の“場”が持つ雰囲気とあいまって多様な個性とパワーがうずまく空間が立ち現れていました。

レスリー・キーさんは渋谷で撮影したポートレート群や、先日惜しまれながらこの世を去った樹木希林さんを撮影した作品群を展示。

元々あった部屋の区画をそのままに残した状態で展示は行われた。

実姉である、シンガーのAIさんを撮影した217 NINAさんの展示。

ライアン・チャンさんの展示風景。部屋からは「取り壊しを待つ建物」の雰囲気が漂い、作品に対してこの場だけのフィーリングを与えている。

茂木モニカさんの作品は、ポジフィルムを使用したまさに一点物。取り壊されるビルの運命とリンクし、失われ得る“モノ”の儚さまでもが感じられた。

「TOKYO PHOTOGRAPHER’S NIGHT」の面々による展示部屋。手前が笠井爾示さん、奥が米原康正さんの展示。

(写真上)田所淳 /(中)山辺真幸 /(下)元木大輔
写真だけでなく、映像やドローイングの展示も。

屋上はルーフトップ・バーになっており、向かいのビル壁面にはプロジェクションマッピング映像が投影されていた。

通路となる展示スペースでひときわ目を引いたのがTOYO TIRESによるコラボレーション展示。タイヤをキャンバスにして、野口琢朗さん、中島麦さん、佐々木香菜子さんが自由で独創的な作品世界を展開。

会期中の夜には、ハイクオリティーなDJ / LIVEが目白押し

また会期中、夜になると会場がクラブスペースへと変わり、多数の上質なイベントが。音楽に造詣の深いトップフォトグラファーたちが自らDJブースに立つ伝説のパーティ「TOKYO PHOTOGRAPHER’S NIGHT」や、DJ Nobuを筆頭に世界的に評価の高い5人のDJが集う「TOKYO TECHNO SOCIETY」が会場内のアート作品と共に楽しめるなど、一回性の高い貴重な体験となるイベントが会期中8夜に渡って展開されました。

写真:「TOKYO TECHNO SOCIETY」

ここでしか聞けない貴重なトークショーも

会期中には、貴重なトークショーも催されました。11月30日には、当イベントに作品を展示しているフォトグラファーの217..NINAさんと、ミュージシャンの青山テルマさんが登壇。青山さんが編集長を務めるフリーペーパー “dreampaper”でクリエイションを共にして来たふたりの、独特な価値観に則った楽しいトークとなりました。

またイベント最終日となる12月2日には、アートとサイエンスを横断するアーティスト:脇田玲さんが、テーマと対談相手の異なる3つのトークセッションを展開。<TALK 1>ではメディアアーティスト/妄想インベンターの市原えつこさん、<TALK 2>では慶應義塾大学名誉教授の小檜山賢二さん、そして<TALK 3>では写真家・東松友一さんらを迎え、ジャンルを超えてボーダレスに活動する脇田さんならではの刺激的なトークが繰り広げられました。

約2週間に渡り開催された「ARIGATO SAKURAGAOKA」。桜丘という個性的な街の節目において、様々な個性に彩られた、まさに桜丘らしいモニュメンタルなイベントとなりました。変わりゆく桜丘の街の姿が、このユニークな体験と共に皆さんの記憶に残ったことでしょう。