2018.11.26
【鼎談】《渋谷の個性》とは何なのか〜この街に必要な《パブリックスペース》とは?
「都市のパブリックスペースデザインコンペ」アイデア募集にあたって
今年で3度目となる国際コンペティション「都市のパブリックスペースデザインコンペ」。2018年のテーマは<『Shibuya』的なパブリックスペース>。渋谷に必要なパブリックスペースとはどんなものなのか。それを考えるにはまず、渋谷とはどんな街であるのかを、あらためて捉え直す必要があるでしょう。本コンペの審査委員である4名の鼎談から、そのヒントを紐解いてみましょう。
《鼎談》
岸井隆幸さん(日本大学 理工学部特任教授/都市づくりパブリックデザインセンター(UDC) 前理事長/計量計画研究所代表理事)
西沢立衛さん(横浜国立大学大学院Y-GSA教授/ SANAA /西沢立衛建築設計事務所代表)
林 千晶さん(ロフトワーク代表取締役/ 渋谷未来デザイン FUTURE DESIGNER)
佐藤夏生さん(EVERY DAY IS THE DAY Creative Director, CEO / 渋谷未来デザイン FUTURE DESIGNER)

◯ 審査委員が思う「渋谷」像とは?
岸井:このコンペを始めたきっかけとして、これから建築を自分の生業にしていく若い人たちに、もっと都市を語ってもらいたいという思いがありました。 今回は応募者が、何を「渋谷的」だと考えているのか、非常に関心があります。

西沢:渋谷の魅力というと、ひとつは地形だと思います。渋谷という名前は谷という意味がありますが、豊かな地形と、それをよく感じられる界隈や裏通りがあって、そこで暮らしている人びとの姿があって、それらは渋谷らしい魅力のひとつになっていると思います。渋谷は、パリやローマのように観光名所の建築があるわけではないものの、いろいろな魅力的な界隈があるのが、好きなところです。
林:私は「人の動き」に着目してもらいたいと思っています。西沢さんがおっしゃるように、渋谷の景色を考えた時に、その象徴となるのはエッフェル塔のようなモノよりも、人の動きだというのは、スクランブル交差点で信号が青になった瞬間にカメラを構える人の多さからも窺えます。

また、表通りから裏通りに入った瞬間、雰囲気がガラッと変わり、急に違うエリアに来てしまったと感じる時に生まれる緊張感のようなものも特徴的だと思います。 私はそのような渋谷における表と裏の関係は、人間の体が交感神経と副交感神経を切り替えながらバランスを取り続けることと似ていると思っています。

佐藤:私は中学生の頃から現在まで渋谷で過ごしてきましたが、渋谷のおもしろいところは、経済や流行の影響がとても強い街でありながら、小さなものが存在できることだと思います。たとえばどこかの商店街だと潰れてしまうような、小さなパン屋や雑貨屋が生きていける環境が渋谷にはあります。もちろん強い個性があっての話ですが「スモールストロング」というものが成立するのは非常に興味深いですね。
◯ カオスと調和の矛盾が織りなす、渋谷の街の変化
岸井:私は、1964年の東京オリンピックも渋谷の個性的な発展に寄与していると思うんです。渋谷は国立競技場と駒沢総合運動場を結ぶためにつくられた国道246号線に接続していますし、そういう意味では当時の新宿や池袋に比べてフィーチャーされる場所だったと思います。

また、渋谷は戦災復興によってハチ公前という広場を手に入れた。ああいう空間はなかなかないですよね。その存在がその後の街の発展にも大きく効いている気がします。

西沢:ヨーロッパでは「東京は巨大すぎる村だ」とよく言われるのですが、東京の変なところ、というかおもしろいところのひとつは、東京には全体を統合するマスタープランというものがないということです。全部がつぎはぎで、戦後のカオス的混乱のままここまで巨大化してしまったのに、しかしその割にはどこも不思議と、非常によく機能している。

渋谷はそういう東京らしさを代表する場所でもあります。いろんな道と坂、いろんな界隈と街角があって、都市空間がモザイク的に繋がっていく。

林:カオスと調和が同時に存在する、つまり矛盾しているところが渋谷らしさなのかもしれませんね。

岸井:渋谷は、いろいろな人が勝手に集まれる空間で、特定の目的を有していない。多様な人が多様な目的で訪れるのですが、それをすべて受け入れてしまう。

西沢:そうして街が常に変わっていくということもまた、渋谷の強みですね。
◯ 渋谷=カオスと調和が並存する街に必要な《パブリックスペース》とは?
西沢:渋谷には老若男女、いろんな人が同居していることの豊かさがあると思います。渋谷的なパブリックスペースを考える際には、現代社会ならではの多文化的な、寛容で自由な場を考えてもらうことが重要かもしれません。

佐藤:日本のアイデアコンペでは、調和をもたらすものが評価されることが多いように感じます。しかし渋谷の良さは調和だけでは伸びていかないと思います。パブリックスペースのデザインだからといって、調和や平和を生むのではなく、そこから劇的に次のカオスが生まれるくらい個性の強いものを期待したいです。

他の場所にも展開可能な、再現性が高い仕組みよりは、究極に再現性が低いものがパブリックとして存在するのが、渋谷らしいと思います。 出典:『新建築』(一部抜粋、再構成し掲載)

有名なスクランブル交差点や、個性あふれるストリートなど、既にグローバルに発信されている『Shibuya』像。しかしそれだけでなく、渋谷には良好な住環境、緑豊かな公園・緑道・川などの自然等さまざまに個性的な街を内包しています。 本コンペでは『Shibuya』という言葉を、渋谷の街が生み出している多様な文化や流行、生活スタイルなど、魅力的な都市体験自体を意味する言葉として再定義します。

当コンペでは、上記の意味での『Shibuya』にふさわしいパブリックスペースの提案を募集。都市の魅力を高める空間のあり方やデザインはもちろん、そこで提供される都市活動や社会システム、サービスなど、多様な視点と発想が期待されています。

◯ 登録・作品提出締め切り
2018年12月10日(月)消印有効

◯ 応募資格
国内海外問わず広く募集(グループ・個人を問いません)
[規定]
A1サイズ(594×841mm)片面横使い1枚。
[内容]
図面、パース、ドローイング、CG、模型写真など表現は自由。立体(突起物や凹凸)は不可。

◯ 賞金
最優秀賞1点(賞金:100万円)
優秀賞3点(賞金:各50万円)
佳作6点(賞金:各10万円)

<詳細は特設サイトを参照>
http://www.japan-architect.co.jp/public/
『都市のパブリックスペースデザインコンペ2018』
共催:株式会社日建設計、一般社団法人渋谷未来デザイン
後援:株式会社新建築社
協賛:株式会社アカツキ